(92)予想
予想していたことがスムーズに運ぶ場合、首尾よくいかない場合は当然、出てくるだろう。自分では何もしていないのにトントン拍子に進行したり、逆に何をしても全然、進まない場合は、妙だな…と思うに違いない。そして、その訳が、ほんの小さな内容だったりした場合は驚くことになる。
とある家の前の舗装路で必死に独楽を回しているこの家の主人がいる。幸い、その家の前は車が通れない程度の細道で、歩くか自転車でしか通行が出来ない。その細道を偶然、対向から二軒先のご主人が買い物帰りに自転車で通りかかり、ギギィ~! っとブレーキをかけた。
「ははは…独楽ですか。懐かしいですなぁ~。子供の頃はコレでよく遊んだもんです…」
「さようで…。いやね、天気がいいもんで虫干ししようと部屋の押入れを開けてみましたら、コレが出てきましてな。、し回してみようかと思いまして回してみますと、いやぁ~予想外に手古摺りましてな。ははは…お恥ずかしいところをお見せしました」
「いやいや、私もそうです。昔、出来ていたことが今は出来なくなっております。驚くというかガックリするというか…」
「独楽なんてもんは今の時代、誰もしやしない化石ですが…」
「当時はゲームとか遊び道具がなかった時代でしたからなぁ~」
「ええ、よく作ったもんです」
「…でしたな。で、どうです?」
「それがなかなか掌の上に乗りません…」
「どれ、一つ私も…」
「どうぞ、どうぞ…」
自転車を止めたご主人は独楽を受け取ると独楽紐を独楽に括り、勢いよく回した。独楽は掌の上に吸い寄せられるかのように乗った。乗せたご主人も見事な出来栄えに驚くことになったが、見ていたご主人のテンションはガタ落ちとなった。出来ると予想して回した自分の出来なかった技を呆気なく他人がして、余計に情けなく思えたのである。
思わず驚くような昔の物を発見したときは、懐かしさに溺れないように注意した方がいいようです。^^
完




