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(9)通知

 結果の通知があれば、少なからず心が騒ぐ。その結果の良し悪しに関わらず、知ったときの心は驚いている。驚くのは結果が分かっていないからで、事前に知らされていれば、すでに喜びや悲しみを味わったあとだから、さほど驚くこともないだろう。

 とある一般家庭である。合格発表の通知を今か今かと家族の者達が待っている。

 両親が居間で話し合っている。

「どうだ、電話はあったか?」

「それが、まだなの…」

「昼までには電話すると言ってたんだろ?」

「ええ、そうなんだけど…」

(じら)らせるヤツだな…」

「ダメだったんじゃない?」

「ああ、おそらくな…」

 両親の心配を他所(よそ)に、当の本人は病院で治療を受けていた。合格発表の掲示板前で、合格を知った喜びで飛び上がった瞬間、ごった返す受験生の中で後ろから押され、胸を打ったのである。痛みが走り、病院で診察してもらった結果、肋骨に皹が入っていて全治二週間と診断されたのである。そんなハプニングで家への通知を忘れていたのだった。

「少し肋骨に(ひび)が入ってるね…。痛み止めとシップ薬、出しとくから、一週間後にまた来なさい…」

 医師は事務的な口調で、これといって驚く様子もなく冷静に告げた。

「あっ!!」

 そのとき、受験生は電話を忘れていることに気づいた。

「先生、電話ありますかっ!?」

「電話? そりゃ、あるよ…」

 医師は、この患者、何を言い出すんだ…という目つきで受験生をチラ見した。

「かけても、いいですかっ!?」

「ああ、窓口にそう言ってね…。はい、次の方!」

 医師は看護師にそう指示し、適当に、急かすように受験生をあしらった。受験生は受付へ回り、急いで家へ電話をかけた。

『ええっ!!? それで、大丈夫なのっ!?』

「ははは…全治、二週間だって」

『笑いごとじゃないでしょ!!』

『どうしたんだっ?』

『あの子、怪我したって病院から…』

『なにっ!!』

『大したことは、なさそうなんだけど…』

 両親も受験生も、試験結果の通知を完全に忘れてしまっていた。

 通知は、驚くようなハプニングで忘れる程度のもののようです。^^


                  完

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