(86)どうでもいい
そんなことを…と他人が驚くことを、どうでもいいとスルーする人がいる。他人は驚いているがその人は少しも驚くことがないのである。
とある深夜である。飲んで電車で帰ってきた一人の男が、駅前で自分の家の方向が異常に明るいことに気づいた。どうも火事らしい…と、その男が気づいたのは駅前の自転車屋から自転車で帰宅する途中だった。自宅に近づくにつれ、次第に明るくなっていく。それに、焼ける臭気も臭いだした。それでも男は驚くことなく自転車を漕ぎ続けた。そして家まで数分の所へ来た時である。
「稲崎さん、あなたの家、火事ですよっ!!」
数軒先の麦田が驚く声で叫んで知らせた。
「ははは…そうですか。家が火事で燃えてるんだ…」
稲崎は少しも驚く気配を見せなかった。さて、ここで皆さんに質問です。稲崎はなぜ驚く気配を見せなかったのでしょうか?^^
答えを言ってしまえば馬鹿げていると思われる方が多いと思いますが、稲崎は、そろそろ建て替えを…と思っていた矢先だったのです。しかし、現状では多額のローンを組まなければ建て替えられなかった・・という事情があったのです。稲崎は家に多額の保険金をかけていました。通常の額の倍の額で、稲崎はその保険金を月々、支払うのに食べることも我慢して支払っていたのです。ですから、後々、発覚した犯人によるその放火事件は、稲崎にとっては返って好都合だった・・ということになります。ですから稲崎はどうでもいい…と思えたのです。
身に影響が及ぶ驚くような出来事を、どうでもいい…と思える背景には、それ相応の深慮があるという訳です。皆さん、万一に備えて対応を心がけましょう。と言ってますが、私は保険会社の者ではありません。^^
完




