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(7)恐怖
夏の暑い季節がやって来た。夏といえば怪談である。怪談の恐怖は、驚くことで生じる。そんなことはない…とは分かっていても、お化け屋敷に入場して、急にお化けが出てくれば、ギャ~~!! と驚いてゾクッ! とする。するとその恐怖を体感したことで暑さを忘れる・・とまあ、身体のシステムはなっている訳である。^^
昭和三十年代の夏の暑い盛りの午後である。今年もお化け屋敷の一座が恒例のように町にやって来た。
「怖いよっ怖いよっ! 今年は去年にも増して怖いよっ。怖くなかったらお代はいらないっ!」
入り口の一段高い台にに立ち、一座の呼び込みが名調子で町民を誘う。
「どれ…入ってみるか」
「だな…」
「毎度っ!」
入場料を支払い、アイスキャンデー片手の二人の客が恐怖を求めてお化け屋敷に入った。二人の客のあとに続き、釣られるように客が続々と入っていく。
人は予想外に驚くことで、恐怖を忘れようとする性質がある。恐怖、驚くこと、体感の三者には、一定の方程式が成立しているようです。^^
完