(5)冗談(じょうだん)
冗談だと分かっていれば驚くことはない。ただ、冗談だと思っていたことが真実だと知ったとき、人は喜怒哀楽を露わにする訳だ。
とある合格の受験番号が張られた大学の掲示板前である。二人の受験生が合格、不合格を確認しようとやって来た。
「ははは…俺はダメ元で受けたんだから、たぶんダメだろ…」
「そうか、お前にゃ本命があったからな。俺はココしか受けてないからダメなら撃沈だ…」
「ははは…冗談だろ。お前は大丈夫さ」
二人の受験生はそんな話をしながら、トボトボと受験番号が張られた掲示板までやって来た。
掲示板前は、多くの受験生でガヤガヤと賑やかだった。二人の受験生はそんな他の受験生を尻目に、自分の受験番号と掲示された合格番号を見比べた。
「おおっ! あったあった。よかった…」
「…」
ダメ元の学生は、やはりダメで、この大学しか受けていなかった受験生は見事に合格していた。
「よかったなっ! お前はっ!?」
「やはりダメ元だった…」
「ダメか…。まあ、お前にゃ本命があるから、驚くことはないよな…」
「ああ…。頼まれたアイツの番号は、と…。おおっ! 奇跡だっ!」
「アイツ、受かったのかっ!? こりゃ驚いたなっ、奇跡だ…」
冗談で受験した学生の合格番号があったのである。
数か月後、本命の大学を受験した学生は、浪人して予備校へ通っていた。驚くことに本命で不合格になったのである。
冗談が冗談でなかったとき、驚くのはいい場合の方がいいに決まっています。^^
完