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シガレッツブルーム  作者: 相木秋人
愛とバッジ
20/34

リベリオd

「どっちかって質問してんだから、どっちだって答えるのが、道理ってもんだよな?」


 リーズンは退屈そうに言った。


 ーー間違えたのか?


 リベリオは自分の発言を後悔した。

 自分の考えを言うとよくない方向に進むのでは、とすら思ってしまう。


「今まで俺は、色んなやつに質問してきた。たいていは適当に、ハンバーガーだとか、チョコレートだとか、媚びたように答えてくる。何もわかってないクセに、だ。ハンバーガー? チョコレート? 違うだろ? 俺はな、クリミナルハンバーガーか、ピーナッツチョコレートか、って聞いてんだ。お前の答えは、その類か?」


 生気のない青色の目を向けられる。


「道理に合うように、説明してみろよ」


 リーズンは、たいして美味しくもなさそうに、ハンバーガーを齧った。


 何が正解なんだ。リベリオは必死に頭を悩ませる。


 ーーハンバーガー、いやクリミナルハンバーガーかピーナッツチョコレートって答えればいいのか? ハンバーガーにチーズをかけるという行為は至って普通のことで、それが道理に合う? ピーナッツチョコレートにチーズはかけない、だから道理に合わない?


 リベリオはリーズンの顔を見た。相変わらず、生気のない、退屈そうな目でリベリオのことを見つめている。


 ーー道理に合うって一体なんなんだ。


 答えの出ない問いにリベリオは苛立ちさえ覚えた。


 リベリオが頭を悩ませていると、「でもお兄ちゃん」とピュアダが口にする。


「私はこいつ好きだな」

「なんでだよ」

「考えてるから」


 あっけらかんとした表情でピュアダは言った。


「考えてる?」

「そう、考えてる」


「そりゃお前」とリーズンがリベリオを見た。


「道理に合うか合わないか、考えることが、道理に合うってことか?」


 リベリオは首を傾げた。

 意味が分からなかった。


 だがリーズンの、その生気のない青色の瞳に、光が灯った。暗い暗い深海に陽の光が届いた。


「そりゃお前、面白いじゃねえか。名前は?」

「え?」

「お前の名前は何だ、って聞いてんだ」

「リ、リベリオ、です」


 リベリオの言葉に、二人は目を見合わせた。


 こいつが、とリーズンが言った。

 こいつだ、とピュアダは頷いた。


「これを渡すように、って言われてる」


 リーズンが、擦り傷の残っている手で、折りたたまれた白色の紙を渡してきた。


「なんですかこれ?」

「さあな。俺たちはただそれを渡すように、って言われただけだ」


 紙なんて今時珍しいなと思いつつ、リベリオはその紙を開いた。


 一言だけ書かれていたその紙を見たリベリオは、安堵した。


 ーーシックスは生きている。


「それじゃ俺たちは確かに渡したからな」


 颯爽と二人が歩き始めようとしたところで、

「待て」

 止められた。

 クマミチだ。


「これは思わぬ収穫だ」

 クマミチが年季の入った皺を深くした。


「久しぶりに会えてうれしいよ。リーズン、ピュアダ」

 まさに感動の再会とでもいうように、クマミチは両手を広げた。


「……クマミチ」

 リーズンは顔を顰めた。


「私は会いたくなんかなかったけど!」

 ピュアダは舌を出した。

 

「そんな悲しいこと言ってくれるなよ」

 クマミチは左目の傷をさすった。


 そしてついで、とばかりにクマミチはリベリオを鋭く睨みながら、

「お前、どうして二人と一緒にいる」

 と問いかけてきた。


 先ほど会ったときは丁寧な口調だったクマミチに、お前、と呼ばれたリベリオは肝を冷やす。


 ーーシックスが生きているとわかったのに。


 リベリオは苦悶の表情を浮かべた。


 ーーこんなところで捕まっている暇はない。


 リベリオはもう一度クマミチの身体を見た。

 スーツがはち切れそうなほどの肉体。

 到底敵いそうにない。


 ーーどうすればいい。考えろ。考えろ。考えろ。


「ここで見捨てるのは、道理に合わねえよな」

「やっぱり私、こいつのこと好きだな」


 リベリオを庇うように、リーズンとピュアダがリベリオの前に立った。


 その姿は、リベリオには、輝いて見えた。


「早く行って!」


 ピュアダが叫んだ。


「追い待て!」

 

 クマミチが怒鳴り声をあげた。


 リベリオはクマミチの声に反応したように振り返った。本当にリベリオが止まるとは思っていなかったのか、クマミチは目を丸くしていた。


「あの!」


 突然のリベリオ大声に、リーズンも、ピュアダも、クマミチも、全員がリベリオのことを見た。


「ありがとうございます!」


 リベリオはリーズンとピュアダの二人の目を見て言った。


 ピュアダは嬉しそうに、リーズンはやはり何を考えているかわからない表情で、頷いた。


 リベリオはもう一度紙を見やる。


『本物の映画』


 本物の映画がある場所。抜け出したら行こうと約束した場所。

 シックスはそこにいるはずだ。


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