リベリオd
「どっちかって質問してんだから、どっちだって答えるのが、道理ってもんだよな?」
リーズンは退屈そうに言った。
ーー間違えたのか?
リベリオは自分の発言を後悔した。
自分の考えを言うとよくない方向に進むのでは、とすら思ってしまう。
「今まで俺は、色んなやつに質問してきた。たいていは適当に、ハンバーガーだとか、チョコレートだとか、媚びたように答えてくる。何もわかってないクセに、だ。ハンバーガー? チョコレート? 違うだろ? 俺はな、クリミナルハンバーガーか、ピーナッツチョコレートか、って聞いてんだ。お前の答えは、その類か?」
生気のない青色の目を向けられる。
「道理に合うように、説明してみろよ」
リーズンは、たいして美味しくもなさそうに、ハンバーガーを齧った。
何が正解なんだ。リベリオは必死に頭を悩ませる。
ーーハンバーガー、いやクリミナルハンバーガーかピーナッツチョコレートって答えればいいのか? ハンバーガーにチーズをかけるという行為は至って普通のことで、それが道理に合う? ピーナッツチョコレートにチーズはかけない、だから道理に合わない?
リベリオはリーズンの顔を見た。相変わらず、生気のない、退屈そうな目でリベリオのことを見つめている。
ーー道理に合うって一体なんなんだ。
答えの出ない問いにリベリオは苛立ちさえ覚えた。
リベリオが頭を悩ませていると、「でもお兄ちゃん」とピュアダが口にする。
「私はこいつ好きだな」
「なんでだよ」
「考えてるから」
あっけらかんとした表情でピュアダは言った。
「考えてる?」
「そう、考えてる」
「そりゃお前」とリーズンがリベリオを見た。
「道理に合うか合わないか、考えることが、道理に合うってことか?」
リベリオは首を傾げた。
意味が分からなかった。
だがリーズンの、その生気のない青色の瞳に、光が灯った。暗い暗い深海に陽の光が届いた。
「そりゃお前、面白いじゃねえか。名前は?」
「え?」
「お前の名前は何だ、って聞いてんだ」
「リ、リベリオ、です」
リベリオの言葉に、二人は目を見合わせた。
こいつが、とリーズンが言った。
こいつだ、とピュアダは頷いた。
「これを渡すように、って言われてる」
リーズンが、擦り傷の残っている手で、折りたたまれた白色の紙を渡してきた。
「なんですかこれ?」
「さあな。俺たちはただそれを渡すように、って言われただけだ」
紙なんて今時珍しいなと思いつつ、リベリオはその紙を開いた。
一言だけ書かれていたその紙を見たリベリオは、安堵した。
ーーシックスは生きている。
「それじゃ俺たちは確かに渡したからな」
颯爽と二人が歩き始めようとしたところで、
「待て」
止められた。
クマミチだ。
「これは思わぬ収穫だ」
クマミチが年季の入った皺を深くした。
「久しぶりに会えてうれしいよ。リーズン、ピュアダ」
まさに感動の再会とでもいうように、クマミチは両手を広げた。
「……クマミチ」
リーズンは顔を顰めた。
「私は会いたくなんかなかったけど!」
ピュアダは舌を出した。
「そんな悲しいこと言ってくれるなよ」
クマミチは左目の傷をさすった。
そしてついで、とばかりにクマミチはリベリオを鋭く睨みながら、
「お前、どうして二人と一緒にいる」
と問いかけてきた。
先ほど会ったときは丁寧な口調だったクマミチに、お前、と呼ばれたリベリオは肝を冷やす。
ーーシックスが生きているとわかったのに。
リベリオは苦悶の表情を浮かべた。
ーーこんなところで捕まっている暇はない。
リベリオはもう一度クマミチの身体を見た。
スーツがはち切れそうなほどの肉体。
到底敵いそうにない。
ーーどうすればいい。考えろ。考えろ。考えろ。
「ここで見捨てるのは、道理に合わねえよな」
「やっぱり私、こいつのこと好きだな」
リベリオを庇うように、リーズンとピュアダがリベリオの前に立った。
その姿は、リベリオには、輝いて見えた。
「早く行って!」
ピュアダが叫んだ。
「追い待て!」
クマミチが怒鳴り声をあげた。
リベリオはクマミチの声に反応したように振り返った。本当にリベリオが止まるとは思っていなかったのか、クマミチは目を丸くしていた。
「あの!」
突然のリベリオ大声に、リーズンも、ピュアダも、クマミチも、全員がリベリオのことを見た。
「ありがとうございます!」
リベリオはリーズンとピュアダの二人の目を見て言った。
ピュアダは嬉しそうに、リーズンはやはり何を考えているかわからない表情で、頷いた。
リベリオはもう一度紙を見やる。
『本物の映画』
本物の映画がある場所。抜け出したら行こうと約束した場所。
シックスはそこにいるはずだ。




