セレスティア
前回:うちの娘にならないか?
「ちびすけの気持ち、ちゃんと伝わったぞ」
「赤ちゃんってこんなに意思表示できるものなのかな?」
「そもそも関わった事がないから基準が分からねぇ。でもこれは確実だろ」
……伝わった。
私の気持ち、ちゃんと伝わった。
「きっと君に出会ったのも何かの縁だ。僕達はその縁を大切にしたい。君がどんな子でどんな成長をするのか、僕達が見守るから安心してね」
「俺達は一度守ると決めたものは絶対に離さない。もしこれから誰かがちびすけを迎えに来ても門前払いだな」
「あれま、大変だ」
優しく私を見つめる眼差し。
優しく私を撫でる二人の大きな手。
「そうと決まれば早速名前をつけなきゃね」
「もう名前は決めてある」
「何だ、最初から乗り気だったんだね?」
「うるせぇ。偶然だ」
「安心していいよ。こんな感じだけどセンスはある方だから」
「こんなは余計だろ」
推しが私に名前をくれる。
私に居場所を作ってくれようとしている。
何も分からず、目覚めたら推しが目の前にいた異常で。
そんな状況でも推しがいたから不安はなかった。
でも本当は不安でたまらなかった。
これからどうなるのか。
私は生きていけるのか。
でも彼等は家族に迎えてくれると言ってくれた。
見守ると言ってくれた。
絶対に離さないと言ってくれた。
安心していいと言ってくれた。
全てが柔らかな温かさを放ち、私の不安を溶かしていく。
……本当はずっとこうしたかったんだ。
「ふぇぇぇぇぇぇん!!!!」
自覚したら止めることはできなかった。
推しに会えた喜びと同じくらい、いやそれ以上にこの1週間は状況を理解するにつれ、現実を受け止めきれない自分がいた。
「ど、どうしたのかな?ミルクかな?おむつ?」
「こんなに泣いたの初めてだな。むしろ泣いたの初じゃないか?」
「ほーら、なかないでー」
でもそんな謎の存在な私を彼等は受け入れてくれた。
ならもうウジウジするのはやめよう。
私は何かしらの理由で死んで転生した。
彼等は私を家族として迎えてくれる。
今だってこうして慣れないながらも私を泣き止まそうとしてくれている。
今私にできることは……。
「あ、笑った!」
「これも初めて見たな」
「ふふ、可愛いねぇ。こっちまでつられちゃう」
二人にとびっきりの笑顔を見せてあげることだ。
「よし、お前の名前はセレスティア。この国に伝わる幸福の女神の名前だ。名の通り、ティアに多くの幸福が降り注ぐように願っている」
「いい名前だね。ティア、君の人生に幸多からん事を」
「幸多からん事を」
私はこの世界で生きる。
二人がくれたセレスティアとして。
この名に恥じぬ人生を送ってみせる。
「ようこそ、我が家へ」
「これから俺達と楽しい毎日を過ごそうな」
優しく私を抱きしめてくれる二人を絶対に悲しませない。
推し達の娘になったので、世界で一番幸せになります!
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