運命を変える力
前回︰大盤振る舞い
「聞いてもいいかな?」
あまりのチートっぷりに場が静まり返っていたのを
最初に砕いたのはパパだ。
「ええ、強き魔法使い」
「ティアは様々な神から加護を貰ったというけど、転生神以外には何を貰ったの?」
「ティア様に贈られた加護は転生神の加護を入れ、4つです。魔法神からは魔力。魔法を行使する上で必要な魔力を大幅に増幅させるというより、無尽蔵に生産されますので魔力切れを起こしません」
ちょいちょい。
「知恵神からはあらゆる知識。ティア様には【叡智の書】が与えられました。その名を呼べば知恵神が知りうるあらゆる知識を得ることが出来ますわ」
ちょいちょいちょい。
「最後は運命神から運命を変える力。例えば戦争の兆候があったとしましょう。それをティア様が願えば止める事も起こす事もできるのです」
……もう考えるの放棄してもいいですか。
「皆様もお気付きだと思いますが、運命を変えるというのは本来であれば禁忌です。ティア様が願った世界が出来るのですから。ですのでこの力の行使には代償が発生します」
「代償?」
「変える運命の規模によって、それと同等の身体的苦痛を受けます」
例えば、
明日の天気を変えた場合は、切り傷程度で済むけど、
仮に戦争を起こした場合は臓器が潰れるらしい。
「ですので、使う時はここぞという時のみでお願いします。またかならず発動させる際はフィルを傍において何かあっても回復できるようにしてくださいませ」
どうか……どうか……この力を使う時が来ませんように。
フラグか?
フラグじゃないよ!!!!!!
「勿論、神からの加護の話はご内密にお願いしますわ。今ここにいらっしゃる方々はティア様から信頼できる人物だと伝わってきた為、ご説明をしたまで。無許可でお話をすれば首と体は繋がっていないとご承知おきくださいませ」
シュピケーはふふ、と素敵な笑みを浮かべているけれど
言っている事はとても物騒だ。超怖い。目が笑ってない。
「フィルは何か私に伝えたい事ある?」
「そうですね……。今シュピケーはあのように言いましたが、今後もしティア様がこの秘密を明かさないと命が危ない状況になりましたら、迷わず明かしてくださいね」
「いいの?」
「いいも何も守護者全員で相手を潰しますのでご心配には及びません」
うん、危険人物②。
シュピケーに負けず劣らず物騒なフィルさん。
他の8人が常識人であることを祈る。南無。
「幸い、僕達は王国最強の看板があるからティアが常識外れな技を使っててもどうにかなるからいいとして」
「ティア。運命を変える力はどうしようもない時にだけ使ってくれ。いいな?その力までは俺達でも盾になりきれないかもしれねぇ」
「うん、分かった」
今持ってる加護を使っても対抗できない運命ってどういう時なんだろう。でも結局そんな運命を変えたとしても私の四肢は爆散する気がする。痛いのは嫌だ。
「ティア」
「レイグル?どうしたの?」
「僕もっと強くなるから。今そんなに凄い力を持ってるなら僕の今の力では足でまといにしかならないから」
「そんな事ないよ!レイグルは今でも私の力になってくれてるよ!」
「……」
私の言葉に力なく笑ったレイグルにこれ以上どんな言葉をかけていいのか分からなかった。
こういう時にゲームのヒロインなら気の利いた事を言って、レイグルを救ってくれるんだけど、私はヒロインじゃない。
王城にスタンピードの報告をする為、当初の予定より早く王都に戻る事になったけど、帰りの馬車でもレイグルの表情は曇ったままだった。
◇◇◇◇◇◇
フリューゲル家に戻ってきてから数日。
レイグルが騎士団に長期休暇を申請し、それが受理される前に騎士団から姿を消したという報せが届いた。
いつも読んで頂きありがとうございます!!
次回から新章突入です!




