あふれる思い
前回︰レイグル突撃訪問
「友達じゃ嫌。妹みたいじゃ嫌。他の女の子を見ちゃ嫌。歳は離れてるけど女の子として見てほしい。貴方の恋愛対象になりたい。貴方の特別でいたい。ずっと一緒にいたい。もっと近付きたい。
……貴方が好き」
1つ言えば、また1つ。
その言葉はダムが決壊したように、次から次へと溢れてくる。
「でも私は我儘だから、貴方がどんなに素敵な人で努力家でって色々な人に知ってもらいたい。でも貴方の瞳に映るのは私だけがいい……なんて思ってるの」
扉が隔てて、レイグルがどんな反応をしているのかが分からない。
怖い。
呆れられた?
「この壁がもどかしい」
「……え?」
「開けていい?ティア」
「だ、だめ!」
「お願い、開けて?これはちゃんと君の目を見て話したい」
「何を……」
「セレスティア、僕を本当に好きだと言ってくれるなら開けて……」
切なそうな声に胸がギュッと締め付けられる。
この声色は、もしかしてを期待してしまってもいいの?
「開けていいよ」と思わず伝えようとした瞬間、今の目の状態を思い出す。
「今の私、凄い泣き腫らした顔をしているの!」
「それでもいい」
「私がダメ!」
「どんなセレスティアも可愛いよ。笑った顔も怒った顔も、もちろん泣き腫らした顔も」
「うそだ……」
「開けるね?」
え!意外と強引!?
そんな一面知らなかった!!好き!!!
……じゃなくて!
「だ……っ!」
「セレスティア……ティア」
問答無用で開けられた部屋の扉の奥から見えた金色は、すぐに残像に変わり、私をその大きな腕で包み込んだ。
獣人は人間より体格が良く、体格だけなら大人と同じくらいに成長したレイグルの体温を全身で受け止める。
「やっと会えた……」
優しく背中や頭を撫でられながら、いつもよりも濃く感じるレイグルの匂い。
名残惜しくも解放された腕。
視線が交わる。
「やっぱり……泣き腫らした顔も可愛い」
そう言って、腫れた瞼に優しくキスを落とした。
「あの日、僕を守ってくれた日から、ずっとティアは特別な女の子だよ。でも僕は卑しい身分で釣り合わない。今回の話を聞いてティアから離れられて、諦められるって思ったんだ」
私の両手を包み込む手が震えていた。
「でも、出来なかった。どうしても離れる事なんて、諦めるなんて出来なかった。だから今日、サリオン様にお願いして連れてきてもらったんだ。これでダメだったら諦めようって」
姿勢を正し、手を包んだまま、もう一度視線が交わる。
「セレスティア・フリューゲル嬢。ずっと前から貴女をお慕いしていました。まだ私は貴女のご両親と比べれば弱い男です。でも、この思いは誰にも負けない。それに卑しい身分だから、きっと苦労をかけてしまうとは思うけれど、貴女が私を求めてくれるなら一生傍にいたい。……私の番になってくれませんか?」
「番……?」
「獣人の愛は重い。生涯この人だと決めた番から受ける愛情を失うと死んでしまう。でも獣人は番と決めた人を一生愛し続ける。私はもし番を選ぶなら、セレスティア。貴女がいい」
目眩がする。
これは夢じゃないんだよね?
「とは言ってもティアはまだ5歳で、この意味を理解できないと思うから。とにかく今は一緒にいたい。君が好きだとその事だけ覚えておいて」
「嬉しい……凄く嬉しい……私でよければレイグル様……貴方の番にしてください」
「え!嬉しいし、提案した僕が言うのも何だけど番の事はもっとよく考えて……」
「私には前世の記憶と人格がいます」
「……え?」
だから、ちゃんと言わなきゃ。
私の秘密も、今の私の状態も。
いつも読んでくださり、ありがとうございます!
お気付きだと思いますが、告白する時に一人称が変わったり、敬語になるキャラが凄い好きです。
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