来訪者
前回︰2人の馴れ初め
パパから素敵な馴れ初めを聞いた翌朝。
私の目はとんでもなく腫れていた。
あれだけ泣いたら、そうなるよね。
今の私の瞼は腫れすぎて、きっと目が1cmくらいしか開いていない。
「キース様からは、今日は家で1日ゆっくり休むように言伝を預かっております」
「後でパパにありがとうって言わなきゃ」
昨日言われた通り、セレスティア・フリューゲルとして
どうしたいのか考えないといけない。
レイグルとのこれからを。
推しとしての好き。
恋愛としての好き。
この2つは共存できるのかな?
推しとしてはもっとレイグルの素晴らしさを布教したい。
でも、恋愛としては私のものだけでいて欲しい。
相反する感情で苦しむ事は明白。
かといって、じゃあどちらかを捨てるかって聞かれると、
それはできない欲深さ。
離れてみて冷静に考えると、こんなに好きだったんだな。
仮に!
……仮に!
こ、告白したとして……良い返事が貰えなかったら?
私は友達として笑っていられる?
残った推しとしての感情で、レイグルの幸せを喜べる?
答えは否。
「セレスティア様」
「なぁに?」
「この国以外にも多くの国があります。もし仮に何かあったとしても、他国へ逃げればいいだけです。殿方もレイグル様だけではないですよ」
「……声に出てた?」
「全て」
……恥ずかしい!
思わず口元を抑える私に、リィナは優しく微笑む。
でも、そっか。
父様達がいるこの国以外にも世界が広がってるんだ。
もしダメなら俗世と関係切って修道女かなとか思ってたけど、生涯独身で冒険者として頑張るのもアリかもしれない。
そんな人生設計を新たに思い描いていた時、
部屋の扉の軽いノック音と父様の声が聞こえた。
「ティア」
「父様?」
「客だ」
「お客様?」
「……ティア」
扉の奥から聞こえた声に、思わず喉がひゅっとなる。
「レイグル……」
「ティア。この扉越しでいいから聞いて欲しいんだ」
「じゃあ、俺は戻るな」
「はい、サリオン様。ここまでありがとうございました」
父様の足音が部屋から遠ざかっていく。
部屋の中には私、リィナ、扉の外にはレイグル。
「セレスティア様。お2人でお話されるのが良いと思いますので、私は隣室から部屋を出ますね。……私の可愛いお嬢様。貴方ならきっと大丈夫です」
「うん、ありがとう」
私の部屋と繋がる隣室の扉の奥へ消えたリィナ。
これで周りには私達しかいなくなった。
私たちを隔てるのは、分厚い扉だけ。
「ティア。君が訓練にはもう来ないと聞いて……」
「いきなり、ごめんなさい」
「僕が何かしちゃったよね?心当たりはないけど、きっと僕は君を傷つけていたんだよね……」
「……違うの、そうじゃないの」
「じゃ、じゃあ!やっぱり平民出の卑しい身分の僕が嫌になった……?」
「それは絶対にない!」
思わず叫んでしまって、ハッとする。
この世界に来てから、こんなに大声を張り上げたのは初めてだ。
「大声を出してごめんなさい……。レイグルは何も悪くないの。悪いのは私……」
胸がドキドキする。
いつのまにか握りしめていた手の中の汗が凄い。
唇が震えて言葉が上手く出てこない。
――セレスティアはどうしたい?
私は……
「貴方の特別になりたい」
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