表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/38

出会い③(キース視点)

前回︰離れる事を決意



連絡は最小限。

会談もなるべく早く切り上げるようにした。

呑みの誘いも予定があると言って断り続けた。



私達のお互いの呼称や、敬語がないのは既に知れ渡っていたから、それだけはそのまま、距離が戻っただけ。



「キース様。お食事のお時間です」

「いらない」



自分で決めたはずなのに、日を重ねる毎に心に暗い影を落とし続けた私は、遂に何も食べる気にもなれず、ベッドにうずくまっていた。



こんなに女々しかったとは。

というか、今までこんな感情を誰かに抱いた事がなかった。

俗に言う、これが初恋。

こんな気持ちになるなら、もう一生しない。



「……サリオン」

「呼んだか?」

「……っ!」



誰の気配もしなかったはずなのに。

独り言は拾われること無く、霧散するはずだったのに。

何故そんなに優しい声で受け止めるんだ。



「何で……気配しなかった……」

「俺を誰だと思ってる。こんなの朝飯前だ」

「どうやってここに?」

「普通に?火急の用があるからって通してもらった」

「……火急?何かあった?」

「あぁ、緊急事態だ」

「え!ごめん!連絡見逃していたかも!」



急いでベッドから飛び起きて、身支度する私の腕を掴んだサリオンは私をベッドに座らせた。

私を見つめる瞳は、今まで見た事がないもので思わず息が詰まる。



「緊急事態……」

「そうだ」

「……行かなきゃ」

「好きだ」



突然の脈略のない発言に固まる。

今、サリオンは何を言った……?



「お前が好きだ、キース」

「え……」

「何だ?お前は違うのか?俺と同じだと思ったんだけどなぁ」

「……」

「もう1回言うか?」

「ま、まって!!!!」



手首を掴んで、ぐいぐい距離を詰めてくるし、その見た事ない瞳で見つめてくるし、もう許容量を超えてしまう。



「なぁ、キース。お前はどうしたい?」

「なにが」

「魔法師団長としてのお前じゃなく、1人のキース・フリューゲルとしてお前はどうしたいんだ?」

「私は……」

「あ、それはなしな。私って言い方。それわざと言ってるだろ?」

「なんでそれを……」

「無意識だろうが、呑みの席で僕って言ってたからな」



無意識だった。

魔法師団長としての威厳を保つ為に、僕では弱そうに見えるだろうから、私と言う事にしていた。

それをサリオンの目の前では戻っていたなんて。



「何がお前をそんなに悩ませる?」

「……怖い」

「怖い?」

「この関係が変わるのも、君の気持ちが変わるのも、全部。こんな気持ちになるのは初めてなんだ。君と離れるって決めたのも僕なのに、このザマ……」

「じゃあ、結婚するか」

「は?」

「何驚いてんだよ。別に同性婚も認められてるだろ」

「いや、知ってるけど……え?」



さっきまで凄くしんみりしてたはずなのに、雰囲気が一気に壊れる。もし仮に僕がお茶飲んでたら吹き出してた。



「俺はお前と公私共に一緒にいたい。お前が好きだって気持ちは一生変わらない。俺だってこんな気持ちになるのは初めてだ。信じて欲しい。……それでもお前が不安なら結婚しよう。ただし、結婚したら後戻りできないからな?返品不可だ」

「サリオン……君って人は……」



月明かりに照らされたサリオンは、これまた見た事ない程に赤面していた。耳まで真っ赤だ。



出会った日もそうだった。

僕が躊躇した事を、サリオンは飛び越えてきてくれた。

君はそうやって、今回も飛び越えてきてくれるんだね。



「ずっと一緒にいたい……僕もサリオンが好きだ」

「おう」

「サリオンこそ返品不可だからね」

「任せとけ」



指先を優しく絡め、近づく視線。

目を閉じた後に感じた感触は、新しい関係の始まりを告げた。






◇◇◇◇◇◇



「で、今はこうして2人で一緒にいるんだ……って、ティア!?」

「よかったねぇ……パパ……ほんとによかったねぇ……ずびっ……」



そんな話を聞き終えた愛しい愛娘は、

顔をぐしゃぐしゃにしながら大号泣していた。



「父様もかっこよすぎるよ……父様ぐっじょぶ!!!!」

「だろ?」

「……っ!」



デジャブ。



「……どこから聞いてた?」

「さぁな」



これはきっと最初からだ。

……ダメだ。さっさと切り上げよう。



「ティア。そういうわけだから、ゆっくり考えてね」

「リィナ、後頼んだぞ」

「かしこまりました」

「サリオンはまだここにいてもいいんだよ?」

「ティアは寝る時間だ」

「はぁ……」



泣き止まないティアを残し、2人で廊下を歩く。

どちらも何も発する事なく、靴音だけが聞こえる。

突然するりと絡められた指先に思わずビクッとすると、

サリオンは立ち止まり、耳元に唇を寄せた。



「        」

「……っ!!!!!」



満足気にククッと笑ったサリオンは、指を解く事なく

また歩き始める。





――出会った時からオトすって決めてた。

いつもご覧頂き、ありがとうございます!


いかがだったでしょうか?

ティアにどうしたい?と聞いたキースも、

サリオンにどうしたい?と聞かれていました。


あんなに自信満々そうに言ってたサリオンも、内心はバクバクでした。



次話からは、またティアのターンです!



ブクマ、評価、ランキングクリック、よろしくお願いします!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ