出会い②(キース視点)
前回︰2人の出会い
サリオンとの会談は、滞りなく進んだ。
連絡手段の確認、双方の部隊数の確認、王国近辺の情勢確認。
だが、肝心の今後の関係性については、まだ触れていない。
言おうと決めていたはずなのに、いざその場面を迎えると長年の関係性を変える事ができるのかという不安がよぎる。
「ところで、キース師団長」
「はい」
「有事の行動確認ですが……現在のままでは国を守れないと判断します。騎士団長になりたての私が進言するのはどうかとも思ったのですが、今後の事を考えてお話しました」
「……。あ!私もそう思っています!」
「良かった。私はご存知だと思いますが、元平民です。
騎士団と魔法師団のこれまでの関係性も先日知りました。ですが、このままでは国を守るのに支障をきたすと思い、今回の会談を要請させていただきました」
私に頭を下げたサリオンを見て、己が情けなくなった。
私は言おうか迷っていたのに、サリオンは自分の立場を分かっていながら、それでも未来の為に進言してくれた。
この心の強さも、きっとゲイル様は評価されているのだろう。
「頭を上げてください。お恥ずかしいですが、私もサリオン団長と同じ事を思っていたのに、長年の関係性を変える事ができるのか不安で言い出せなかったのです」
「何かを変える事は非常に勇気がいります。キース師団長の仰る事は至極当然だと思います」
そう言って少し口角を上げたサリオンを見て、関係性を今代で変える事は可能だという確信を得た。
それからは、双方の関係改善の為に1週間に1回は会談をして、課題解決に向けて話し合い始めて2ヶ月。
「どうされました?」
「あ、いえ……」
いつものように会談をしていると、サリオンがソワソワしている事に気が付く。
何となく口調もおかしい気がする。
「具合がよろしくないのですか?」
「いえ……」
「何か気になる事でも?」
「いえ……」
「もしかして、私の事が嫌いだとかですか?」
「それは絶対ねぇ!……あ」
初めて聞いたサリオンの砕けた、少し乱暴な言葉。
そうか、そういう事か。
中々可愛い所もあるじゃないか。
「敬語、苦手なんですね?」
「……」
「サリオン」
「……っ」
「私の事もキースと。敬語もお互いやめましょう。
まずは私達が手本となるような仲でなくてはね?」
「…………キース」
「はい」
「……ありがとな」
「どういたしまして」
その日を境に、私達は友として接するようになった。
敬語をやめたサリオンの口調は褒められたものではないが、
何故か私にとっては居心地が良かった。
仕事が終われば、下町に呑みに行く事もあった。
サリオンの過去、騎士団での努力、今後の展望。
歩んできた道は違うのに、考えが同じであったり、
新しい発見をもたらしてくれるサリオンの存在は、私にとって特別なものになるのは時間がかからなかった。
友以上の気持ちを抱いている事も自覚していた。
けれど、この感情は今の関係を壊してしまう。
私の気持ちを伝えて、今まで話し合ってきた関係の改善に
支障をきたすのは明白だった。
これ以上は近付いてはいけない。
私が出した選択は、離れる事だった。
あと1話です。




