出会い①(キース視点)
前回:今を生きてるのはセレスティア・フリューゲル
―5年前。
30年の長きに渡り、騎士団長を務めていたゲイル様が引退された。
今まで騎士団の誰にも負ける事無く、第一線で国を守っていた方の突然の知らせ。
聞いた話によると、1ヶ月前にゲイル様に膝を折らせた騎士が現れたらしい。
確か、ゲイル様が拾ってきた平民出の騎士。
周囲からの反発を黙らせる努力と才能で、次代の騎士団長候補と言われていた男だ。
2年前、魔法師団長を拝命した私もまだ一度も会った事はない。
そもそも騎士団と魔法師団が顔を合わせる機会等、滅多にない。
それぞれ譲れない領分があり、それを誇りに国を守っている為、衝突は避けられず、仲は昔から良くない。
ただ私としては、有事に今の双方の関係性では国を守る事に
支障が出ると思っている。
2年で少しは魔法師団長としての実績も上げられたから、
今後の双方の関係性について
ゲイル様に相談を持ち掛けようとした矢先の出来事だった。
「師団長様。ご報告したい事が御座います」
「入ってくれ」
「失礼致します」
師団長室の扉がノックされ、書簡を持った事務官が入ってくる。
私に差し出された書簡には、例の騎士団長からの会談要請が記されていた。
こちらとしても希望していたものだったので、
二つ返事で快諾する。
……さて。今回の騎士団長はどういう男だろうか。
少しは話が出来る男だといいのだが。
◇◇◇◇◇◇
あれから数日が経ち、今日は会談日だ。
会談が長引く事を想定し、仕事は午前中に終わらせてある。
「師団長様。王国騎士団長様がご到着されました」
「通してくれ」
「失礼する」
……来た。
入ってきた男の第一印象は、年不相応な迫力だった。
闇を思わせる黒髪。
鋭い目付き。
私が見上げないと顔が見れない長身。
私の知っている騎士団員と比べるのが可哀想になる程の
鍛え上げられた肉体。
彼の全てが年不相応な迫力を生み出している事は確かだった。
外見だけで言えば、騎士団長として文句の付け所がない。
だが、今重要なのは内面だ。
「お初にお目にかかります。この度、王国騎士団長を拝命したサリオン・ボードナーと申します。
団長就任からご挨拶に伺うのが遅れました事、お許し下さい」
「いえ。お忙しい中、ご足労ありがとうございます。
私は魔法師団長のキース・フリューゲルと申します。
つかぬ事を伺いますが、ボードナーという家名、前騎士団長のゲイル様と同じでいらっしゃいますか?」
「はい。騎士団長であるのに家名がないのは支障をきたすからと、養子として迎えて頂きました」
確かに、多くの者を統率するのに家名は重要だ。
ゲイル様の判断は正しい。
「ボードナー家は既に兄が後継者に決まっておりますので、名だけ頂戴した形です」
「それでも一族から2人も騎士団長を拝命するなんて、きっとお兄様も鼻が高いと思いますよ」
「いえ。まだ私は未熟なのでまだまだです」
軽い挨拶をした感じは、特に問題なさそうだ。
サリオンに抱いた次の印象は、人畜無害だった。
いつもご覧頂き、ありがとうございます!
この2人の馴れ初めはもう少し続きます。
今のティアを支える大切な両親の話なので、しっかりと書きたいと思います。
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