②罠・独りでの戦い(上)
プロローグを含む第1章(全6話)を投稿します。
もしも、面白いという評価があれば第2章に進みます。
どうか、好評化をお願いします。
スラッグ地方でのグレートイーグルとの初戦の後、完全に傷をいやして次の地方へと進んだ。
スラッグ地方からロイド山脈を越えて次の目的地アインダンス地方へである。
アインダンス地方は豊富な果物が食べられると旅をするロードワイバーン達はよく知られている場所だ。
もちろんスラッグ地方では何度もグレートイーグルとの対戦があった。
単体で活動する奴らとはスピードで勝る我々の敵ではなかった。
しかし、群れで生活をする以上、倍する相手との闘いもあった。
その時は、父と2手に分かれて誘導して、分散した敵を各個撃破で倒した。
くやしかったのは、群れに遭遇してしまい、集団で攻撃された時だ。
ロードワイバーンのスピードなら容易に逃げ切ることは出来たものの、
父と悔し涙を流すこともあった。
旅に出て、スラッグ地方では幾度も戦いを重ね自身の力も上がってきた。
そう言えば、父はなぜ旅に出ることを急いだのだろうか!?
異種族との戦闘をすることで、身体能力や戦術を高速で取得することが出来た。
もしかすると、急いで旅に出るといった父の目的はこの事なのかな。
ガジェットは自身の中に多少は自信がついてきた。
それもあり、出発の時に何故父が急いで出発したのかを何度か尋ねてみた。
「なぜ群れを出たのですか?」
しかし、父は「ああ」「うん」というだけで、きちんと答えてはくれなかった。
父の行動には謎が多すぎる!?
こう思うことはしばしばあったが、それでも、強くなっていることだけは間違いなかった。
そうこうしながらも、俺はほぼ一人前のワイバーン戦士として成長していった。
「そろそろスラッグ地方を抜けるな。グレートイーグル達との戦闘もここまでだ。ここからはロイド山脈があり、そこを抜けるとアインダンス地方にでる。しかし、ロイド山脈は小癪なブルーレッサーワイバーンの群れが複数あるから気をつけなければいけない。いいかここでは絶対に無理をしてはいけない。覚えておけよ!・・・これで2段階だ」
「覚えておきます。ブルーレッサーワイバーンですね」
父は久しぶりに段階の話をした。
「ようやく2段階ですか?ところで、それは全部で何段階あるのですか?」
「・・・・ああ、気にするな・・・・」
気になったので確認するように質問してみたが、父は急に不機嫌になり、黙ったまま進行方向を変えて進んだ。
なぜこの話題になると、父は不機嫌になるのだろうか?
教えてもらうのに、理由がわかった方が自分も理解しやすいのだが・・・。
その後は何事もなく、いつもの感じで進んだ。
そして、スラッグ地方とロイド山脈の間を阻む、広大なスタンの森を抜けロイド山脈のふもとへとやってきた。
「そろそろブルーレッサーワイバーンの生息域に入るから用心するんだ。しかし、ロイド山脈を越える前に1度休息を入れておいた方がいいな。いいか?」
「そうですね。父上、あそこに見える水場はどうでしょうか?」
「この場所の水場は少し危険だが・・・。やむをえないか・・・」
スタンの森から2匹のワイバーンを見つめる生き物がいたことに、この時点で2竜は気づいていなかった。
ロイド山脈の入り口に通じる場所には開けた草原地帯と広大な森林地帯であるスタンの森があった。
そして、このスタンの森に沿って流れるフェイアル運河があり、周辺の生き物達の水飲み場としては絶好の場所であった。
しかし、絶好の場所である以上、その地域を縄張りとしている種族もいた。
この場所を縄張りとしているのがブルーレッサーワイバーンだった。
「父上、あそこはふるさとに似ていて、とても過ごしやすそうな場所ですがどうでしょうか?」
「そうだな・・・。しかし、スタンの森の側というのが少し気がかりだ。少し先に行った方がいいだろう」
「先ほどから、父上は心配しすぎではありませんか?父上と私であれば多少の難敵であろうと大丈夫ではありませんか!」
「しかし・・・いや、わかった。そうだな。心配しすぎてはこの先へ進む事もできまい。あそこはふるさとに似ていて癒されるしな」
「はい、癒されます」
周辺で狩りをして、2竜はしばしの休養を取ることにした。
。
◆◇
休養して2日目の夜、ジェロイドが運河で水を飲んでいた時であった。
「ワイバーンボイスっ!」
「誰だ!我にその技は効かぬ。ショートブレスっ!!」
ジェロイドは突然のワイバーンボイスに多少驚きはあったが、自身の技の為耐性を持っていた。
そこですかさずジェロイドはショートブレスをワイバーンボイスで反撃した。
すると、その場から飛び立ったのは2体のブルーレッサーワイバーンだった。
「ガジェットっ!敵だっ!」
「ブルーレッサーワイバーンですね。2体ですか?」
「そうだ。追うぞ!しかし罠があるかもしれんから気をつけろよ」
「罠ですか・・・」
ガジェットはこれまで罠のある戦闘をしたことがなかった。
その為、罠といわれてもはっきりとその意味を理解出来てはいなかった。
「しかし、ガジェット。多少の罠なんぞ、蹴散らしてやろうぞっ」
「そうですね。父上。やりましょう」
飛びたったブルーレッサーワイバーンを2竜は追うことにした。
高速で飛び続けるブルーレッサーワイバーンはなかなか追いつけなかったが、所詮、レッサーである。
しだいに、距離を詰めることが出来ていた。
逃げるブルーレッサーワイバーンを追う形であれば、ワイバーン戦法としては恰好の餌食であった。
そのため、2竜はワイバーンボイスがもう少しで届く場所まで徐々に近づいていた。
「ガジェットよ。わしがワイバーンボイスを放った後、1体にワイバーンキックを食らわせるんだ。残りは逃がして構わんぞ」
「わかりました。父上。お任せをっ!」
ワイバーンボイスが届くか届かないかの距離で、ブルーレッサーワイバーンが、いきなり2手に分かれた。
「父上。2手に分かれました。どうしますか?」
「1対1なら問題なかろう。周りに仲間の気配もないしな。こちらも2手に分かれよう」
「それでは後程、あの運河の前で会いましょう。父上」
「そうだな。だが、罠の危険もあるから、決して無理するなよ」
「はい、父上」
ジェロイドは2手に分かれる事が少し心配だった。
それはブルーレッサーワイバーンはワイバーンの冠を持つが、大型のフクロウだ。
なぜワイバーンの冠を持つかは謎である。
しかし、知能が高く、集団で行動し、形状以上のスピードで高速で飛行する。
速度はワイバーンに劣らない。
しかも、決して単独で行動することはない。
集団で攻撃をすることを好む種族だからだった。
おそらく、2手に分かれて私を狙って罠を仕掛けてくるかもしれない。
やつらは私を倒した後に息子を罠にかける作戦だろう。
最初に独りで水を飲んでいた私に攻撃を仕掛けたことからおそらく間違いないだろう。
もしかすると、ガジェットの存在には気づいていない可能性もある。
それに、ガジェットの向かった方角はブルーレッサーワイバーンの生息域からは少しそれる。
奴らがそんな無理をして息子を襲うとは思えない。
ジェロイドはある程度、ブルーレッサーワイバーン達の戦略を想像した後に、悔しさがこみあげて来た。
くそぉっ、それにしても、こんな急に来るとは・・・。
ガジェットには、すこし、早すぎるかもしれない。
もう1日あれば・・・。
ジェロイドは自分の知っているブルーレッサーワイバーンの戦法を、このスタンの森で休憩中にガジェットに伝えるつもりだった。
姑息な手段を使うブルーレッサーワイバーンは単独で攻撃してくることは基本ありえない。
それに、今のガジェットなら1~2匹増えたところで何とかするだろう。
この戦闘が終わった後でも、間に合うか。
少し心配はあるが、正面のブルーレッサーワイバーンを殺してから息子を助けに行けばいいだろう。
この判断はこの後後悔することになることを2竜は知りえなかった。
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