①初めての戦い
プロローグを含む第1章(全6話)を投稿します。
もしも、面白いという評価があれば第2章に進みます。
どうか、好評化をお願いします。
父ジェロイドと一緒に俺ガジェットはロードワイバーンの群れから離れて旅を続けて5日が過ぎた。
その間2竜はずっと飛び続けた。
中2日は豪雨と雷による嵐に見舞われたが、何とか乗り切ることが出来た。
そして、ようやく到着したのはアリゴ大陸の東側にあるスラッグ地方だった。
只今の時間は朝日がのぼるやや肌寒い早朝。
この5日間で感じたのは、力強い父の後ろを飛んでいるとなんとも言えない安心感に包まれていた。
少し遠くを見ると、朝日を横切るように飛んでいる魔物たちがいた。
はっきりとは見えないが群れを作って生息している場所のようだ。
このスラッグ地方は牧草と巨大な運河に恵まれた豊かな地方だった。
嵐を含む5日間飛び続けお腹はペコペコだった。
途中で食事をとることもせずに飛び続けた俺たちの目の前には、上手そうな食事がいた。
群れからはぐれたホワイトビーチカウ(ウシ型のモンスター)が1匹見えた。
俺は久々の食事にありつけると喜んだ。
このホワイトビーチカウを狙っていたのは俺たちだけではなかった。
黒い生き物が高速で入り込んできた。
しかも、単独でだ。
このロードワイバーンで最強の父とその息子の前に。
あろうことか横取りしようとしたのだ。
「父上、我々が見つけたホワイトビーチカウを横取りしようとする魔物がいます。蹴散らしてやりましょう」
「そうだな。あれはグレートイーグルか!この辺で本当の戦いの経験を味わっておくのもいいだろう」
グレートイーグルは巨大な鷹系統の鳥類だ。
群れを作って生活をするが狩りは基本単独で行う。
攻撃は急降下で獲物に向かい、巨大で鋭いかぎ爪を使って首筋を狙い一撃で獲物を仕留める。
鳥類の中では高速で移動するが、ワイバーンと較べるとそのスピードは圧倒的に劣る。
「いいかガジェット、ワイバーンにはワイバーンの戦い方がある。まずは空対空の戦いだ」
父は横取りしようとしたグレートイーグルに攻撃を仕掛けると言った。
父には強がっていたが、
俺は初めての異種族との戦闘に心音がバクバクと鼓動を撃ち始めた。
しかし、グレートイーグルは単独だったのでおそらく余裕だろう。
こうして2対1ではあるが、初めての異種族との戦いが始まった。
「攻撃の基本ワイバーンボイス!」
父はグレートイーグルの後方に回り込み、ワイバーンボイスを唱えた。
ワイバーンボイスは衝撃波を持つ音声攻撃だ。
高速で飛行するワイバーンにとってグレートイーグルの後方に回り込むのは水を飲むように簡単だった。
初め父はグレートイーグルに追われていたのだが、急上昇後は気がついたらグレートイーグルにの後方にいたのだ。
何が起きているのか瞬時に理解できなかったが、父が有利な立場にあるのは間違いなかった。
そして、後方につくとすぐにワイバーンボイスを唱えた。
グレートイーグルは飛行が乱れて混乱していた。
「乱れた相手の体力を奪うワイバーンキックっ!」
飛行の乱れたグレートイーグルの頭部めがけて父は片足を構えると、
一直線に乱れる事なく頭部をつかみグレートイーグルを地面に押さえつけた。
この時点ですでにグレートイーグルは瀕死の状態に見えた。
しかし、父の攻撃はここで終わりではなかった。
「とどめはワイバーンブレスだが、格下の相手にはこれも有効だっ!」
瀕死のグレートイーグルに向かって、ワイバーンの強力な顎と牙でグレートイーグルの首を引きちぎりとどめを刺した。
「よいかガジェット。これが基本の戦い方だ。覚えておけよ」
「わかりました。父上」
俺は今日の晩飯がホワイトビーチカウからグレートイーグルに変わったが、食えるのであればどっちでもいいと喜んでいた。
しかし、戦いはそれで終わらなかった。
援軍が来たようだ。
先ほど倒したグレートイーグルの仲間らしき2体がやってきた。
「しかたないな。ガジェット。俺は前方のやつを殺る。お前は後方のやつを殺れ」
「は・・はい」
心づもりが出来ていたはずだが、実際に戦闘になるといつの間にか弱い心が顔を出していたようだった。
「怯えるな。お前は誇り高きロードワイバーンの長の子だろうが」
そんな怯えを見抜いていたのか、父は私に厳しい言葉を放った。
「はい、父上。初の獲物として倒してきます」
しかし、そんな父の言葉で震えていた足元が安定した。
「その意気やよし。いけっ!」
気持ちが落ち着くと、父は私をほめてくれた。
すぐに父は先頭のグレートイーグルに向かって行った。
父の後を追うように飛行速度を上げると、
俺は先ほどの父の戦法通りにグレートイーグルに仕掛けることにした。
まずは後方を取らないと・・・。
しかし、グレートイーグルからの殺意のこもった視線を受けて俺は不覚にも怯んでしまった。
うわぁぁぁぁぁぁぁ。
強力な爪での攻撃を背中に受けてダメージを受けた。
ダメージを受けたことで強烈な痛みが走った。
それは逆に強力な殺意と変わった。
「ワイバーンのスピードはこんなものじゃないんだっ!」
自分を鼓舞するように叫んだ。
父のように急上昇からの位置変換は出来なかったが、高速で回転しあっという間にグレートイーグルの後方につけた。
「食らえ。ワイバーンボイスっ!」
音による衝撃派が正面のグレートイーグルに直撃した。
直後、グレートイーグルはバランスを崩した。
「続いてワイバーンキックっ」
父のように頭を抑えることはできなかったが、両足でグレートイーグルの胴体をつかみ地面に押し付けた。
「ワイバーンブレスっ!!」
初撃でグレートイーグルから強いダメージを受けていたことで、ワイバーンブレスでのとどめに切り替えた。
ダメージを負っていたので、相手の息の根を止めることを優先させた。
ただし、ワイバーンブレスは使用直後に硬直が入るから賭け的な意味があったが、それでも使用した。
俺ののどからチリチリと焼ける炎が渦巻いた。
それをワイバーンボイスで炎の渦の咆哮に乗せて敵にぶつける。
ワイバーン最大の大技たった。
父は敵を無傷で倒した後、ゆうゆうと俺の方にやってきた。
「初戦にしてはよくやった方だろう。第1段階としてはこんなもんか。傷をいやすために少し休養が必要だな」
「父上、第1段階とは何ですか?全部で何段階あるのですか?」
「お前は、今の段階でそんなことを気にする必要はない。とにかく休養をとれ。次の出発は早いぞ」
最後のワイバーンブレスはオーバーキル気味だったが、初戦を勝利で飾ることが出来た。
父は何かを隠しているような気がする。
その事に触れると、父は少し表情が険しくなるが、俺自身が強くなることに異存はないので、素直に従うことにした。
母がいれば、祝福で傷をいやすことが出来たが、母はいないので3匹のグレートイーグルを食事にして休養を取った。
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