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夢のような奇跡の恋  作者: 詩花
3/54

第3話「嬉しい気遣い」

「あ…あの……」


「ごめん。少し意地悪し過ぎた。」


「い…いえ…」


桜羽(おとは)は、トラブルから助けてくれた彼と一緒に保健室にいた。

気が付けば時間は、12時を回っていた。

すると、ドアをノックする音が聞こえた。

扉を開けて来たのは、彼と一緒にいた神崎だった。


「神崎、どうした?」


「少し気になったもので、様子を見に参りました。迷惑だったでしょうか?」


「いや、そんな事ない。」


「えっと……そちらの方は…?」


桜羽(おとは)の言葉を聞いた神崎は、胸に手を添えて軽く頭を下げて口を開く。


「ご挨拶が遅れてしまい申し訳ございません。私は、執事の神崎と申します。」


「執事…?」


「はい、左様でございます。そして、こちらの方が私の主…嗎都 奏海(まみや かなた)様でございます。」


彼の名前は嗎都 奏海(まみや かなた)嗎都(まみや)財閥グループの御曹司。クールで大人しい性格であまり表情を顔には出さない。執事の神崎や仲のいい友達にはたまに笑顔を見せたりする。桜羽(おとは)の前だけでは、特別なようで…?


「執事に…主…御曹司さんなんですね…」


「左様でございます。驚かれるのも無理はありません。」


「びっくりはしましたけど、なんて言ったらいいか…」


「御曹司といっても、俺は普通の高校生だから普通に話していいよ。」


「えっ…でも……普通に話すなんて…」


奏海(かなた)様が、承諾されてるので話されて大丈夫でございます。」


桜羽(おとは)は、神崎と奏海(かなた)の話を聞いて混乱していた。暫く考えて口を開く。


「えっと…嗎都(まみや)くん…神崎さん…改めてよろしくお願いします…」


「よろしくお願い致します。」


「うん。よろしく。そういえば、名前まだ聞いてなかった。」


「あ…瞹瀬 桜羽(あいせ おとは)っていいます…」


桜羽(おとは)って呼んでもいい?」


「あ、はい…」


ずっと敬語で話す桜羽(おとは)奏海(かなた)は、落ち着かせたのと同じように手を握った。その行動に桜羽(おとは)は驚きで体が跳ねる。そして、桜羽(おとは)の方を見て…。


「緊張しなくて大丈夫。慣れるまで時間かかると思うからゆっくりね。」


「い…うん。ありがとう。嗎都(まみや)くん。」


「うん。」


色々と混乱していたのが嘘のように消えた。それはもしかしたら、奏海(かなた)の優しさのおかげなのかもしれない。そう桜羽(おとは)は心の中で思っていた。


奏海(かなた)様、この後どうなさいますか?」


「この後か……桜羽(おとは)はどうする?」


「うーん…あの後でもあるから…ちょっと自信が…」


桜羽(おとは)様は、怖い思いをなされた後ですから無理もございません…」


「無理するといけないから、今日は帰ってゆっくり休んだ方がいい。」


「では、早退するとそのように伝えて参ります。」


「ああ、頼む。」


神崎が伝言を伝えに行った。その後、桜羽(おとは)奏海(かなた)の制服の裾をそっと掴んだ。

顔を少し赤くして、奏海(かなた)の方を向いて…


「も…もし…嗎都(まみや)くんが嫌じゃなかったら…今日…今日だけでいいから…放課後まで…一緒にいてほしい…」


「…っ。」


桜羽(おとは)の口から突然の言葉を聞いた奏海(かなた)は、驚いて黙ってしまう。

何も言わない奏海(かなた)の様子がおかしいと思った桜羽(おとは)は掴んでいた裾を強く握りしめる。


「ごめんね…一緒にいてなんて急に言われたら嫌だよね…」


「…っ…突然だったから、驚いただけで…それに……嫌じゃないから…」


嗎都(まみや)くん……ありがとう…」


奏海(かなた)は、動揺していて少し顔を赤らめていた。照れている事が分からないように表には出さず隠していた。

桜羽(おとは)奏海(かなた)の言葉を聞いて、喜んでいた。

裾をずっと握りしめていた手は、離さなかった。


「伝えに行ってくれた神崎さんには、なんて言ったら…」


「俺から伝えておくから、大丈夫だよ。」


「うん。」


桜羽(おとは)、あれから落ち着いた?それともまだ、怖い?」


「…少しだけ…まだ怖いかな…」


怖いという言葉を聞いた奏海(かなた)は、裾を掴んでいた桜羽(おとは)の手をそっと握る。

そして、桜羽(おとは)の方を見て…


桜羽(おとは)が怖くならないように、ずっと握ってるから。」


嗎都(まみや)くん……ありがとう……。」


奏海(かなた)は、安心させるように手を握りしめて桜羽(おとは)と空いていた距離を縮めた。

桜羽(おとは)奏海(かなた)のその優しい気遣いに気付いていたが何も言わず、静かに喜んでいた。

さっきまであった心の中の不安は、奏海(かなた)の優しさのおかげで掻き消されなくなっていた。

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