第1話「彼との出会い」
ある日、ある夢を見た…。
「…め、姫…起きてください。朝ですよ。」
「ん…朝…?もうそんな時間…」
「姫様、起きないのであればお仕置きですよ…」
「お仕置き…?」
「お目覚めのキスです…姫様…」
ガタンッ…!!
夢で寝ぼけてたせいか、過って床に落ちてしまったのだ。
落ちて痛いはずなのに、声も上げずにゆっくりと体を起こす。
そして数分後…
「桜羽ー!早く起きないと遅刻するよー!」
「はーい、今行くー」
彼女の名前は、瞹瀬 桜羽。高校1年。人見知りで恥ずかしがり屋な性格。初対面の人と話そうとすると緊張して声が小さくなってしまうのだ。家族の前では、緊張もせず普通に話せる。
下から呼びかける声が聞こえた。眠そうな声で、返事を返した。
ゆっくりと立ち上がって、部屋を出て下へ降りていく。
「おはよう。お母さん。紅華。」
「やっとお姉ちゃん起きてきた。遅いよ。」
「遅刻するといけないから、早く食べなさい。」
「はーい。」
桜羽の母、琴花は言い方は厳しいがたまに優しいところもある家族思いの人だ。
桜羽の妹、紅華はわがままでちょっと面倒な所があるが姉の桜羽の事が大好きなのだ。
「ごちそうさま。…行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
食事を済ませて、紅華と一緒に家を出る。
途中までは一緒だが、2人は学校の場所が別々のためそこで別れるのだ。
紅華は、右の道の中学校へ行き桜羽はその反対側の左の道の高校へと行くのだ。
「おはよ、桜羽!」
「お、おはよう。虹菜。」
彼女は、蓮美 虹菜。桜羽の初めての友達になってくれた人で唯一桜羽が話せる親友である。桜羽の悩みや話を聞いてくれたり何かあったら助けてくれたりしてくれる頼りになる人だ。
「ねぇ、桜羽。」
「ん?」
「これ、どうかな?似合ってるかな?」
虹菜が指さしているのは、髪に付けている星のピン留め。
「うん。すごく可愛い。似合ってる。」
「良かった〜!桜羽が可愛いって言ってくれたから素敵な人見つかるかも!」
「素敵な人?」
「占いの本に載っててね。これ付けたら、素敵な恋ができる予感って事も書いてあって。」
「そうなんだ。素敵な人に巡り会えるといいね。」
「うん。ありがとう。」
2人で楽しそうに話していると、学校の方から鐘の音が聞こえてきた。
キーンコーンカーンコーン…
「急がないと遅刻する!桜羽、走るよ!」
「あ、待って!虹菜!」
鐘の音を聞いて慌てて走って学校へと向かう桜羽と虹菜。
すると…
「きゃっ…!」
急いでいて前を見てなかったため、誰かにぶつかって倒れ込んでしまった。
「あ?いってぇな…誰だよ、ぶつかってきたやつはよ。」
恐る恐る声が聞こえた方を見てみると、そこには怒らせるとヤバそうな怖い男の人が立っていたのだ。桜羽は、いけないと思い謝ろうとしたがあまりの怖さに声が出なかったのだ。
その姿を目にした男が口を開く。
「なぁ、お嬢ちゃん。普通ぶつかってきたら謝るのが常識じゃねえか?」
「…っ!…ご…ご…」
「あぁ"?聞こえねえなー!もっと大きな声で喋れよ!」
「……っ!」
震えと怖さで声も出せず、顔も上げられなくなってしまった桜羽は何も出来ず動けずにいた。
男の手が桜羽にかかろうとしたその時、一台の車が来た。そして、扉が開いて眼鏡をかけた男の子が出てきた。ゆっくりと近くに寄ってきて言葉を発した。
「女の子一人相手に、手を出すやつは俺は嫌いなんだけど。」
「急に出てきて、なんなんだ。てめぇは。」
突如現れた彼は一体…?