■■とソラ
『兄さんのバカ』
これは夢か......
『雛子、もうよしなさい。蒼空だってわざとじゃないんだから』
俺の家庭は少しだけ複雑な家族関係ある。まず父の神崎誠、母の陽子と俺は血縁関係つまり親子だが妹の雛子は俺とは血のつながっていない。
なんでも父さんとその幼馴染の晴馬さんが同じ女性を狙っていたらしい。
そんなこんなで、母さんのこと選んだ父さんがステラさん(二人が狙っていた人、外国人だと知った時は驚いた)を諦めて結婚。
その数年後に晴馬さんとステラさんに康介さんが生まれ、後に続くように俺が生まれた。
そして四~五年後くらいに雛子がうまれた。
幼馴染夫婦を見て嫉妬したうちの親たちが休みの日は昼も夜も区別なく盛っていたある日。
事件は起きた
いわゆる交通事故、しかも高速道路で逆走していた車との正面衝突だった晴馬さんと康介さんが即死
ステラさんは辛うじて一命をとりとめた。雛子はその日うちに預けられており無事だった。
まぁここから先はある程度推測できるだろうが、ステラさんはどうにか生きていたがもともと体も強くなく術後の経過があまりよくなく、その三か月後に旦那と息子を追うようにいってしまった。
そして雛子がうちの妹として引き取られた。
『だって、兄さんがまた私の着替え覗いてきた』
確かこの時は俺とあいつが脱衣所で鉢合わせしたときだった。
『どうせ見るならもっと胸が大きくなったらやるよ』
うん、俺若いな(当時十五歳、現在十八歳)
『こら。蒼空、この世では巨乳よりもロリロリなほうが需要があるわよ』
あ、うん。母さんも現役だったね。
母は黒い髪に左目の下に泣き黒子がありなんだかいろいろやばかった(三十九歳。人妻)
『ちょ、お母さんやめてよ。私は将来ないすばでぇーな大人になるんだから(十二歳)』
がんばれ妹。
雛子は母譲りの見事な金髪碧眼で顔立ちは父親に似ているらしいのでだいぶ快活な印象がある。
今、思えば当時の俺はこの関係のありがたみに何一つ気が付いていなかった。
『どれ、風呂に入るからさっさと出ろ』
そこで夢は終わった。
「家族の夢か」
グランゼロにある町のひとつ、サイファーの宿屋でのベッドで目をさました。そしてアイテムボックスから小さなナイフを取り出しその刃を左手で覆うように握りしめて、右手で手前に引く。
ナイフの切れ味はなかなかのものでスッと熱くなるような感覚の後に痛みと大量の血が流れ出てきた。
「思ったより痛いな」
痛み。セイヴァー・オンラインでは少しだけならいら痛みを感じることがあった。どんなにひどくてもシャーペンをうっかり逆に持って指に芯のが刺さるような痛みだったり、タンスの角に小指をぶつけるような痛みだったが、これはそれとは違う現実の痛みだった
これまでとは違う痛みを感じてから数分、アイテムボックスを開きポーションを取り出しぶっかける。
すると血が止まり痛みも消えていた
次にアイテムボックスからふつうの鏡を出して自分の顔を見る。この世界に来てからあまり自分の姿を意識したことはなかったなので再確認である
「うわ、銀髪黒目かよ」
セイヴァー・オンラインのソラは銀髪碧眼で現実の俺に近い顔パーツでアバターを作っていたが、今の俺は現実の姿で髪の色が銀色になっただけだった。
「しかもひげ生えてるし」
さらに顎と口の周りには少しだけだが銀色の無精ひげが生えていた。多少風呂に入っていたので下が黒なのはわかっていたが、なんだか気持ち悪かった。
「はぁ、本当に現実なんだな」
確かにゲームの世界に転生した、でも心のどこかではこれがすべて夢であってほしいという思いがあった。
「神様に死因聞いておくんだった」
俺は誰だ?
「帰りたいとは思わないけど。やっぱり心配だ」
まだ幼くつらいことがあったを妹
「いじめられてなきゃいいけどな」
シスコンの気があるのは自覚しているが昔よりも心配になってしまう。
「あ、あとあいつも」
そしてもう一人俺の唯一の知り合いにして理解者の顔を思い浮かべる
「あいつは、心配ないな」
金の亡者と諸葛孔明とギャンブラーを足して三乗したようなやつだったので大して気に留める必要はないと判断した。
「俺は、ソラと蒼空どっちなんだろうな」
自己の証明、唐突に思い立ったことだが重要だ。俺が神崎蒼空なのかそれとも天使殺しのソラなのか。
もしかしたら両方の記憶を持つ全く別の何かか、
「とりあえず、アインちゃんに会いに行きますか!」
傷のないはずの左手がまだ少し痛い気がした




