サッカーで殺ろうぜ
ソンナコンナデ、コノセカイニキテカライッシュウカンガケイカシタ......
そう、一週間だ。俺がこの世界に来て一週間様々なことがあった。
まずこの世界に来て真っ先に確認したのは所持品だ。神しゃまには適当にオーダしたのでダメ元だったが運良くアイテムから装備品など、すべてそのままだった。
次にギルドへの登録である。
セイヴァー・オンラインでは九つの大陸がある。それぞれに一体ずつ世界悪ボスとそれに繋がるためのストーリークエストが用意されていた。
しかし俺がこの世界に来る前の時点では四つ目の島以降から世界悪ボスが発見されてはいなかったのでここでは事前知識に限界がある訳ではない。
マルチプレイだけなら採取や中ボスやイベントで他の島に行くこともあったのでどのような環境や背景があるのかはだいたい覚えていた。
話を戻すがなぜギルドに登録するのかだがシンプルに金目当てである。
ギルドは登録したものにあった依頼を斡旋してくれるいわばハロワに近いものなので積極的に利用するメリットの方が多い何より採取や討伐したモンスターの素材を適正に買い取ってくれるので下手な商人に直接売り込むよりもいいというのがプレイヤー達の共通認識だった。
まぁギルドに登録した俺は採取系のクエスト(ギルドに斡旋してもらった仕事)を今日もまたこなしていた。
始まりの島グランゼロは小さく周りを海に囲まれている。気候が安定して四季がありまた資源が豊富でありプレイヤー達から親しみを込めて『素材の島』
『資源の塊』『狩るより掘る島』『炭鉱夫天国』と言われていた......
「鉄鉱石が十個、白金石が二個、蛍石十六個、炭石に二十三個、あと......おぉ!ヘドロライトか珍しい。これが二十個!?」
ヘドロライトはグランゼロ湾岸部にある活火山スカイマウンテンに生息するヘビィメタルスライムのドロップアイテムだ。ヘビィメタルは重金属系のドロップが多くその八割がヘドロライトという合金である。精錬することで様々な金属を一度に手に入れることが出来る上に精錬法は簡単なので、対アインちゃん戦の資金稼ぎにはよく使っていた。
今回はアイテムボックスに残っていた在庫の一部をついでに渡したが数が多すぎたのか驚かれてしまった。
この後、宿屋に帰ってから落ち着いて考えてみるとヘビィメタルスライムは硬い上に猛毒攻撃をしてくる、さらに逃げ足が早いので滅多に倒せないことで有名だったことを思い出し後悔した。
次の日
「あ、どうもソラさん。昨日はすごかったらしいですね。依頼人さんも喜んでいましたよ」
ソラとは俺がゲーム時代に使っていた名前のことだ。
決して某王様ゲーマー兄妹にあやかった訳では無い。そしてサブ垢の名前がシロだが特に意味は無い。
「わかりました。それより今日は少し聞きたいことがあるんですけど」
「ハイ、なんでしょうか?」
ここからが本題だ
「南の森......天海の杜に騎士団が派遣される聞いたのですが」
天海の杜では俺に予想が当たっていればあるストーリーイベントが発生する。それをうまくこなすことでアインちゃんとの初戦闘が発生するのだ。
「えっと、その話どこから?」
「いや、この前の依頼のあと報酬で渡された鬼鉄を紹介してもらった鍛冶屋さんに言った時に『今は依頼を受けてるからそれが終わるまで無理だ』と言われたので詳しく聞いてみたら鎧と剣の発注を受けているらしかったんですよ」
「なるほど。そういう事でしたか、それで一体何が目的なんですか?」
「実は天海の杜にあるソルトイータと霊薬草が何本か欲しくて、それで行っても大丈夫かどうかを確認したかったんですよ」
全て大嘘だが
「了解しました。では、騎士団の方の邪魔をしないのと、その騎士団の道案内をしてもらえるなら上に話を通しておきます」
実際は、こんなに上手くいくわけないが、実はゲームをしたものにしかわからない設定がある。
まず、今俺が話している受付嬢さんだがそれはいわゆる仮の姿で王宮やギルドに顔が効くお偉いさんでもある。
また、俺が登録する時に見た目よりも実力があることをしてあるのであちらもそれなりに信用してくれているようだ。
「では今回の『第七騎士団の道案内』の依頼書です。ご確認を」
こうして俺とアインちゃんの初戦闘となる通称
『サッカー騎士団黒塗り高級車にぶつかる』
が始まった。