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えっ、何で死んでへんねん?  作者: ひめさん
7/13

七、覚醒

 浩一は、思わぬ展開に、頭の中がぐるぐる回っていた。

「そう言えば、以前、敬伯父ちゃんには絶対に結婚するだろうなって思った人がいたって、お母ちゃんから聞いたことはあるけど・・・。まさか、その人がALSになって、その人との間に子供ができていたってこと・・・?」

浩一が考えていると、そこに、二人の男女が慌てて駆け寄ってきた。

「あっ、お母ちゃん、幸司・・・」

「浩一、お兄ちゃんは大丈夫なの? ねえ、どうなの?」

「・・お母ちゃん、静かに、ちょっと落ち着いて! ここはICUだからね・・・、そんでな、敬伯父ちゃんやけど・・・、破裂した肝臓の半分と脾臓、右腎臓、そして損傷した小腸の一部を摘出したんよ。そんで今は何とか腹腔内の出血も止まってる。他にも前腕とか肋骨とか、まだ骨折があちこちにあったりするけど・・・、それ以前にこんな状態で踏ん張れるんかどうか・・・、たぶん、この二、三日が山やと思う。かなり・・・、相当厳しいと思うから、お母ちゃんも幸司も覚悟だけはしといてや・・・」

「そんなあ・・・、兄ちゃん、何とかしてよ! お父ちゃんだけじゃなく、敬伯父ちゃんまでおらんようになるなんて、そんなのあらへんわ!」

そう言った幸司は、伯父の手を握り、涙ぐんでいる。そんな重い雰囲気を変えようかとするように浩一が口を開いた。

「お母ちゃん、幸村さんって知ってる?」

「幸村さん? もしかして、由美さん? もちろん知ってるわ。お兄ちゃんが一番愛した人だから・・・」

「あのね、こちら、幸村敬美さん・・・、敬伯父ちゃんの子供だって・・・。ということは、僕等の従妹ってことだよね?」

「えっ!」「えっ」「えっー!」

突然の話に、寿子と幸司は驚いて、まじまじと敬美を見た。

敬美も驚いていた。そうなのだ。ここにいる三人は、父だという人の妹と甥なのだから、自分にとっては、叔母と従兄になるのだ。敬美は、こんなことが起こるなんて、これまで考えたこともなかった。自分には親戚もおらず、天涯孤独になったのだと思い込んでいたからだ。それが、今、ここに親族がいる!

「確かに由美さんに似てるわ・・・でも、まさかお兄ちゃんと由美さんの間に子供がいたなんて・・・? えっ、でも、じゃあ、どうして由美さんは姿を消しちゃったの?」

泣き顔の敬美に変わって、さおりが聞いていた由美の話を繰り返した。

「そうだったの・・・? 意識ははっきりしているのに身体が動かなくなって死んでいく病気にかかっていたなんて、由美さん、かわいそう・・・。こんな可愛い子を残して、さぞ、悔しかったでしょうね・・・。それに、お兄ちゃんだったら、打ち明けた途端に婚姻届を出して、全てを投げ打ってでも由美さんの介護と敬美さんの育児をしようと頑張ったはずよ。そして、いつも一生懸命なお兄ちゃんだから、、もしかしたら追い込みすぎて身体を壊しちゃったかもしれない・・・。うん、さすが、由美さん、お兄ちゃんのことをよく分かってるわ。たぶん、私でもそういう選択をすると思う・・・。でも、敬美さんには、父親がいなくて寂しい思いをさせたわね。ごめんなさいね」

寿子は、敬美に頭を下げた。それを見た敬美は、また鳴き声で話し始めた。

「私・・・、失恋の痛手で行きずりの関係で生まれた子だって聞いてたし・・・、自分が病気で育てられないのに私を産んで、お婆ちゃんに押しつけてって・・・、実は母のことを少し軽蔑してたの。でも手紙をもらって・・・、母が最も愛した人の子供を産みたくて・・・、私に会いたくて、産んでくれたんだって・・・。そして、母の愛した相川敬司という人が私の父親だって。でも、父には、私のことを伝えていないって。それに母が既に死んでいることも知らないかもしれないって。何だか、母が可哀想になって・・・。だから、もし父だけが幸せになっていたら、絶対に許さないって思てった・・・。たとえ私が、一人ぼっちでさみしくても、会いになんか行くもんかって・・・。でも、お父さん、そんな私のことを助けてくれて・・・。嫌だよ・・・。自分だけ、いいかっこして逝っちゃうなんて・・・、駄目だよ! 絶対に許さないんだから・・・。一度くらい、私のこと、抱きしめてよ・・・。大きくなったなって頭を撫でてよ・・・えーん」

声を上げて泣き出した敬美を寿子は優しく抱きしめた。

「うん、ごめんね。本当にアホなお兄ちゃんで・・・。でも、これだけは分かって! お兄ちゃんは、本当に由美さんを、あなたのお母さんを愛していたわ。私も、そんな二人を見ていてすごくうれしかったもの。私に子供ができたときもね、由美さんもお兄ちゃんもすごく喜んでくれて・・・、だから、もし、由美さんが病気にさえならなかったら、二人は幸せな結婚をしていて、お兄ちゃんは、きっとあなたを溺愛していたと思うわ・・・、うん、絶対に溺愛してた!」

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