表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
えっ、何で死んでへんねん?  作者: ひめさん
4/13

四、敬美とさおり、そして突然の・・・

 敬司が、姉妹の姉だと思っていた相良さおりは、敬美の祖母、幸村ゆきむら 美子よしこの訪問看護を担っていたナースだった。美子は、長い間、癌を煩っており、つい先日、敬美の二二歳の誕生日を見届けるかのように、この世を去ったのだった。自分が死ねば身寄りが誰もいなくなると常々心配していた美子は、ずっと世話をしてくれていたさおりに、敬美のことを頼んだ。敬美が心優しいさおりのことが大好きで、歳の離れた姉のように慕っていたからだ。孤児として、施設で育ったさおりには、誰一人身寄りがなく、初めてできた家族、つまり結婚した夫も、六年前に他界していた。それだけに、いつもかわいがってくれる美子のことを祖母のように慕っていたし、九歳下の敬美のことも本当の妹のように思っていた。そんな二人にとって、心の支えとなっていた美子が死んだ。さおりは、これで敬美も自分と同じように、天涯孤独になったのだと案じた。いや、自分には、まだ亡くなった夫の両親が、自分のことを気にしてくれている。だが、敬美は、本当にたった一人で、自分以上に寂しい身の上となったのだ。そんな時、死んだ母親から手紙が届いたと言う。そして、それについて相談をしたいとのこと。どうやらその手紙には、敬美の父親が生きており、とても立派な方だから会うようにと書かれているらしい。ところが、敬美は会いたくないと言う。我が子がいること、そして、母が病気で苦しんでいたことも知らず、立派になっている父親など、とても父とは思えないと・・・。(身内がいてよかった!)と一瞬、喜んださおりは、それを聞いて困惑した。そして、相談はされたものの、敬美にどう答えてあげればいいのか、分からなかった。ただ、血の繋がった親族のいない自分とは違い、血の繋がった父親がいることを否定してはいけないと強く思ったが、タイミング的に、それを今、口に出していいのかどうかも分からなかった。そこで敬美には、『その父親のことをもっと調べてみては・・・?』 そして『その上で、もう少し時間をかけて、名乗った方がいいのかどうかをじっくり考えていきましょう』と答えた。さらに『敬美ちゃんは一人じゃないよ。私がいるからね。これからも私を本当の姉だと思って、何でも相談してね。いつでも力になるから・・・』と励ました。祖母の葬儀の時も気丈に泣かなかった敬美は、この言葉を聞いて、さおりの胸に顔を埋めて泣いた。そして本日、『気分転換に買い物にでも行こうよ』と、二人で出かけたところで、あの事故に遭ったのだった。二人は、たまたま隣を歩いていた男性に助けられ、身代わりとなったその男性は、今にも死にそうになっている。肝臓と脾臓、腎、腸の破裂、腹腔内出血、そして、あちこちの骨折と、何とか手術は成功したようだが、とても助かるとは思えないらしい。そんな男性の顔を改めてよく見て、さおりは驚いた。亡くなった夫にあまりに似ていたからだ。いや、歳ははるかにこの男性の方が上なのだろう。だが、きっと歳を重ねれば、夫もこんな顔つきになっただろうと思えるほどの容姿だったのだ。さおりは、久し振りに胸がドキドキしたが、でも、また逝ってしまうのか・・・と悲しくなっていた。泣きたかったが、両隣で浩一と敬美が大泣きしているこの状況で、それもできなかった。

そんなことを知る由もない敬司は、二人の様子を見て、少し引いていた。そこに唐突に、声がした。それは、確かに聞き覚えのある声だった。

「まあまあ、動揺しちゃって・・・。そんなに泣かなくても・・・ねえ、敬司さん!」

「へっ・・・」

横を見た敬司は、またまたぶったまげた。いるはずのない顔がそこにあったからだ。

「ほぇー!」

「久し振りね・・・って、私は、時々、あなたのことを見てたけどね・・・」

「ゆ、由美やないか? どないして、ここに・・・って、お前、昔のまんまやんか! もしかして、お前・・・ゆ、幽霊なんか?」

「ふふふ・・・そうね、私、今まであの子の、敬美の守護霊をやってたのよ。私自身は、一六年前に死んだんだけどね・・・。とにかく私、敬美のために生きなくちゃって・・・、ALS患者としては、かなり頑張ったでしょ?」

「そ、そりゃあ、頑張ったねって・・・。えー、ちょっと待てや! 二〇年以上も俺の前から姿を消しといたくせに突然、現れて・・・それもこないに大変な時にか? まあ、そうか、俺が死にそうやからって、迎えに来てくれたんやな・・・。それは、まあ、うれしいけどな、お前、ちょっと現れ方が、サプライズ過ぎやしないか? ホンマびっくりしたで! まあ、昔から、お前は、サプライズ好きやったけどな・・・」

「うふふ・・・、ところで、久し振りなのに抱きしめてキスをしてくれないの?」

若い奇麗な由美は、そう言って、上目遣いに敬司を見つめ、唇を突き出す。付き合っていた頃より明らかに色っぽくなっている由美に、敬司は、ドキマギしながらも、ゆっくりと抱きしめ、軽く唇を重ねた。霊体同士?なので、本当に抱きしめられているのかどうかは、よく分からないのだが、敬司にとっては、その実感が確かにあった・・・ように感じた。それは、やわらかく、そしてやさしい、昔と変わらぬものだった。

「由美・・・、ずっーと会いたかったんやで・・・」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ