夜は暗い~朝~
待ちに待ったライラ目線です。
ライラは7歳。ロドルフは狼人として11歳。人間として22歳です。
ちなみに外見に反映されるのは狼人としての年齢です。
フォスター家は狼人の家として有名ですから街に出ても問題はないですね。
「ロルフ、起きて。ロルフ!! 朝だよ、起きて」
目の前にいる保護者のロドルフが寝ぼけて私を抱き枕にした。どうにか離れようとしてもがくが、締め付けが強くなるばかり。
こんなところフェルに見られたら笑いものにされちゃう。
「ライラ~?ルディは起きた?」
フェルが来ちゃう。
焦った私はロドルフの腕に噛みついた。
「っ!?」
腕が離され、私はベッドから飛び降りた。それと同時にロドルフが飛び上がる。
「起きた?もう朝だよ。起きれないんだったら次から夜更かししないで」
何もなかったかのように私はそう言った。
「い、今、ライラ、噛んだ?」
「えぇ。急いでたから」
呆然と自分の腕を見ているロドルフを置いて私は平然と階段を下りてフェリシアの元へ行った。
今日は獣人たちのパーティーがある。私はその手伝いをする。獣人じゃないから。でも、私の保護者であるロルフは狼人だから獣人たちとかかわりがある。私は獣人が大好きだ。優しくて、芯があって、素敵な人ばかり。かっこいいし、声もきれいだしね。
「おはよう、ルディ」
朝からせわしなく人の姿で本を読んでいたフェルが階段のほうに向けて言った。
それに気づいて私も料理の手を止めてそちらに目を向ける。
そこにはいまだ呆然とした状態のロルフがいる。
真っ黒で綺麗な髪はぼさぼさで、着ている寝間着はよれよれで左腕の噛み傷が見えている。断じて私が噛んだ傷じゃない。それは白銀色に輝いていて、昔ロルフが狼人に噛まれた跡だ。
「……まだ着替えていないの、ロルフ!?」
「口を開いて先に出てきたのがその言葉か。挨拶はどうした」
「さっき2階で言ったわ。それで、どうしてまだ服を着ていないの?」
「服は着ているだろ。俺も聞きたいことがある。どうしてお前は毎朝毎朝俺を起こしに来る」
「寝間着から他の服に着替えてと私は言っているの。私は人間は朝に起きて夜に寝るものだと教わったわ。それは間違っていたの?」
「どうして着替えなければいけない。俺がお前に教えたことに一つだって間違っていることはないはずだ。だがな、俺は人間じゃない」
「どこからどう見ても人間にしか見えないが」
「どこからどう見ても人間にしか見えないわ。着替えることは当たり前のことでしょう。早く着替えてきて」
「おい、フェリシア。お前は俺のパートナーだと思っていたんだが?」
「ええ、ルディのパートナーだけど、あたいはあたいが思っていないことを口にスつほど落ちぶれてないよ。それと、着替えることは当たり前のことだと思うよ」
ため息をついてロルフはついさっき下りてきた階段を上って行った。それを見送り、私は料理に戻った。