ドレス
靴も買ってあとはドレスが届くのを待つだけになった。
今のところ何も起きていない。
いや、起きていないという表現はおかしいか。
起きてるっちゃ起きてるけど、死者は出ていない。
例えば行き苦しくて起きたら部屋が水びだしになってておぼれかけていたり、お祝いの品と言って渡されたのが毒入りワインだったり。
どうにかこうにか死なずに生きています。
後はドレスに毒が盛られていないか、呪いが掛けられていないか。
ドレスが安全なら後は王宮に行くだけ。
昨日あのお店から連絡が来て、今日お店のほうに取りに来てほしいと言われた。
「何か仕掛けてたらぶん殴ってやる。いや、噛みついてやる」
「やめときな。龍からしたら獣人も人間と同じさ。かわりにあたいがぶっ飛ばしてやるよ」
ここ数日の災難のせいでイライラしているロルフとフェル。この人たちが短気なのをすっかり忘れていた。
「何もないのが一番なんだけれど……」
「いらっしゃいませ、龍神様、女王様。こちらのドレスでよろしいでしょうか?」
店に入るとすぐさまドレスを出してきた。
「きれ~。ねぇ、ローラ。すごくきれいだね」
「え、えぇ。すごくきれい。絶対ライラに似合うわ」
素直に喜んでいると店員さんが近づいてきた。
「ドレスの内側には毒が塗ってあります。掛けられていた呪いは解きました。それから、気づいておられると思いますが、女王様を狙っておいでなのはあなた様のお兄様です。どうか、王宮に行ってもお気を付けください」
小声でそう言うと、すぐに私たちから離れていった。
「ど、どういうこと?」
「お気に召されたのならどうぞお持ち帰りください。お代はいりません。龍神様、女王様の最初の王宮入りのドレスを作らせていただいたのですから」
質問に答えずにそう言った。
「そうだな。ローラ、ライラ宿に戻って出発の準備をするぞ」
口を開いたローラに言わせまいとするようにロルフがそう言って私たちを宿に連れ帰った。
店員さんは実は味方なのでしょうか……?