龍神の目覚め~王宮~
「龍神が目覚めた」
「龍神様がお目覚めに」
「龍神様だ」
「龍神様の元へ」
今はハンフリー王子の生誕祭だ。何を騒いでいるのだろう。私の傍にいるクィントンも何やら落ち着かない様子だ。
「何があったの?今は王子生誕祭よ」
「妃殿下、我々の主は龍神様唯一人。龍神のパートナーでない人間の王に従う義理は我々にない。龍神様が目覚めたので、我々龍は龍神様の元へ参ります。失礼します」
一人の龍が前に出てきてそう言った。次々に龍から賛同の声が聞こえてくる。
「待て。龍神が目覚めただと?まさか。まだ龍母から何の連絡も」
「我々の元には来たのです。すぐに龍母が来るでしょう。それを待つ暇はありません。直ちに向かわせていただきます」
反論をしようとしたハンフリーにその龍は言葉を返した。
「待ちなさい。龍神様は今パートナーの傍へ向かわれました。もう夜です。今向かっても迷惑なだけでしょう」
その龍が飛び立つ前に龍母がやってきた。
「一つ、聞いてもよいか。龍神のパートナーは誰だ……?」
ルーファスに問われた龍母はしばらく目を瞑り、言った。
「パートナーの準備が整い次第、王宮に来るそうです。パートナーの名前を言うことを禁じられているのでこれしか答えることができません」
そう答えられ、サッと脳裏をかすめたのは10年前に森に捨てた我が子。ダイアナだった。いや、生きているわけがない。あの日は満月だった。森には狼人がいる。きっと食い殺されただろう。
龍母から目をそらした時、ハンフリーとそのパートナーのマゴメダリが目に入った。
「……龍神……この……だろう。……王……い……か。……だ?」
「……ば前の……る。……した……ら……される……。……か……か。まぁ、……楽だ。……使える……からな」
「……か。……来た……そう。……毒……せるだろう。……ぞ」
この距離では何を話しているかよく聞こえない。きっと龍神のことだろう。しばらく見ているとマゴメダリがこちらを向いて何かをハンフリーに耳打ちした。ハンフリーはこちらを向いて頭を下げて二人でどこかに行った。
「ねぇ、ルーファス。何か嫌な予感がするわ」
王宮騒がしいですね。大変大変。