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アカシックシード  作者: 若庭葉
Season1「Butterfly」
19/47

第十六話「大菊」

 白人男性が自らの首を掻き切るという衝撃的な出来事に続き、今度はコラプサーが俺たちに襲いかかる。

 結局その場から離れられぬまま、俺たち三人は周囲一帯を包み込む暗闇を見回した。

 ショックで歩道に座り込んでしまっている女子高生二人は元より、たまたま信号待ちをしていた人たちや辺りの店の中にいた人たちも同様である。ある者は車から外に降りて空を見上げ、またある者は店の窓ガラスに手をついて外界の異常な景色を見つめていた。

 運命からは逃れられないとは言ったものの、今回はまた唐突すぎやしないか?

 そう考えた時、首を切る直前にあの白人が言っていたセリフが脳裏をよぎる。

 ──致命者ゲオルギイ、参リマース。

 まるで、自分からコラプサーを起こす為に命を絶ったかのようだ。

 実際のところその言葉の真意はわからないが、しかし、何か確信めいた嫌な予感という奴を俺は覚えた。数日前に芦屋に「Butterfly」というタイトルのアプリケーションを見せられた時と、似たようは感覚だ。

 ──やはり、もうすでに動き出しているのか?

 俺の知らない、巨大な何か(・・・・・)が。


「春川くん!」

「……え」


 大声で名前を呼ばれ、俺は我に返る。

 隣にいる椚原さんが、いつの間にか不安げな表情でこちらを見上げていた。

 そうだ、今はそれどころじゃない。この間のように、早く彼女の安全を確保しなければ。

 そうして頭の中をシフトさせた矢先、例のコスモスによる侵蝕が開始される。

 路面や通り沿いの建物の壁、はてはどうするとこともできずに停車中の車のボディまで、ありとあらゆる場所から芽を出した花は、瞬く間に背を伸ばして行った。

 前回や前々回と違い、今日のコラプサーは人通りの多い市街地で発生した物である。もしこんな場所で花の匂いまで認識してしまう人が続出したら、これまで以上の大混乱へと陥ってしまうだろう。

 十年前に俺が東京で体験した、「アバドン」と同じように。

 無力な人間たちを嘲笑うかのように銀色の花弁を一斉に開くコスモス。薄っすらと光輝く花で覆われた街の中、すでにパニックは始まっていた。

 車を捨てて我先にと逃げ出す人で車道はごった返し、通りに面した建物に助けを求める者のいれば、黒い壁によって塞がれた場所へ走って行く者もいる。

 しかし、前者は店の扉を開けてもらえず力任せに窓ガラスやドアを叩き、後者は無情な現実を再確認しその場に跪くのだった。


「し、シオン、俺たちも早くどっかに逃げねえと」

「ああ」


 友人の声に応えたのはいいが、どこに彼らを連れて行けば安全なのかわからない。

 その為すぐに走り出せずにいるうちに、尻餅をついたままの女子高生の一人が大声を上げる。


「い、嫌だぁぁぁ! 花の匂いがする!」


 不穏な言葉を聞いた俺たちは思わずそちらに目を向けた。

 すると案の定、彼女の体の内側から制服を突き破り無数の木の根が飛び出す。

 うねうねと生き物のように気味悪く蠢いた根っこは、あっと言う間に少女の上体を包み込み、やがて彼女の両手は力なくだらりと垂れ下がった。みるみるうちにその手足は痩せ細り、茶色く干からびた皮を骨に貼りつかせる。


「ひ、ひぃぃ!」


 友人がプラントと化す瞬間を目の当たりにして、彼女は泣きながら短く悲鳴を上げる。

 しかし、腰を抜かしてしまっているのか、慄くばかりでその場から逃げ出す気配がない。

 かと思うと、今度はプラントの根っこの中の一本が長く伸びて行き、鎌首をもたげる大蛇のように空中から怯えた様子の獲物を睨めつけた。

 ──ああ、あの()はもう、手遅れか。

 俺はどこか他人事のように、心の中で呟く。

 そして実際、次の瞬間には木の根の鞭は容赦なく少女に遅いかかっていた。


「きゃあぁぁぁぁ!」


 耳をつんざくような断末魔に、思わず顔を逸らす。

 残念だが、仕方ない。

 そう思いながら再び目線を上げた時、予想外の光景が目に飛び込んで来た。

 プラントの放った鞭はアスファルトを抉り路面に突き刺さっている。

 しかし、それでいて先ほどの女子高生を仕留めるには至っていないのだ。

 何が起こったのか、驚いて目を見張る俺はすぐに気付いた。

 逃げ出すことすらできなかったはずの彼女の体に覆い被さるように、杏藤が倒れていたのである。


「いてて……」


 プラントから数メートル離れた場所に倒れ込んでいた彼は、呻き声を上げながらも体を起こした。


「あ、杏藤⁉︎ 大丈夫か!」


 俺が大声で呼びかけると、友人はこちらを振り向いて笑顔を見せる。


「肘、擦りむいちまった」


 と、確かに血の滲んでいる右腕の肘の辺りを抑えながら、杏藤はいつもどおりの口調で答えた。大事には至っていないようであり、俺はほっと胸を撫で下ろす。

 プラントが攻撃する瞬間に生身の体で飛び込んで行くだなんて、無茶しすぎだ。

 彼は自分も立ち上がりながら、一緒に倒れていた他校の女子に手を差し伸べて起き上がらせた。彼女も奇跡的に無事なようで、自分が生きていることが信じられないといった表情でその手を掴んだ。

 だが、当然まだ危機が去ったわけではない。

 プラントは歩道に突き刺さっていた鞭を持ち上げ、次の標的を決めかねるように宙に浮かべている。

 ──やはり確実にコラプサーを終わらせる為にも、「神の指」を使ってネフィリムを呼び出したい。だが、なるべく椚原さんたちにはあの力は隠しておきたいし……どうした物か。

 この状況を打破する為必死に思考を巡らせる中、事態はさらに悪化することとなる。

 今、女子高生と杏藤がいる場所は、発生源となった白人が倒れているところのすぐ近くだった。

 コラプサーはその元凶となる死体が膨張し破裂するという異常な現象から始まる物だが、実際にはもうこの時点ですでに過剰認識空間が展開されており、実はそれも虚構(セカンドレアリティ)の出来事にすぎない。つまり、言ってみればコラプサーの発生を告げる演出のような物であり、実際に死体が損傷したりなくなったりするわけではないのである。

 その為、あの致命者と名乗った男の死体も道に伏したまま残っているのだが、今度は彼に異変が現れた。

 とうに生き絶え糸の切れた人形のようにうつ伏せで倒れていたはずの亡骸が、一人でに起き上がったのである。

 それも、ただ立ち上がったのではなく、目に見えない大きな手によっ起き上がらされたかのような、不自然な動き方で。


「こ、今度は何……?」


 この世の物とは思えぬ異常な出来事に、椚原さんが震える声で呟いた。

 杏藤も、そして他校の女子も、青ざめた顔をして蘇った死者を見つめる。


「……オヤ、オカシイデスネ〜」


 自らの喉笛を短刀で切り裂いたはずの男は、死してなおカタコトで喋った。


「『セップク』ト言イナガラ首ヲ切ッタトイウノニ、誰モツッコンデ(・・・・・)クレナイダナンテ……」


 場違いにもほどがあるセリフが、逆に狂気を感じさせる。

 それから、彼は右腕を伸ばし握ったままだった短刀の切っ先をこちらに突き付けた。


「コウナッタラ、ジャパニーズ『斬リ捨テ御免』デ〜ス」


 不気味な笑みを口許に浮かべ男が言った刹那、彼の頭は内側から何かに押し破られるような形で吹き飛んでしまう。

 肉や骨の破片を飛び散らせながら、雛鳥が卵の殻を破るみたいに顔を覗かせたのは大きな花の蕾だった。

 蕾はぐちゃぐちゃとグロテスクな音を立てながら彼の顔を崩壊させ、ボールのように丸まったその姿を露わにして行く。

 また、異常が起きたのは頭だけではなく今度は男の胸を突き破り、緑色の皮膚を持つ人間の物に似た腕のが体外へと突き出した。左右一対の腕はそれぞれ外側から彼の体に爪を立てると、強引に引き千切り、殻を脱ぎ捨てる。

 血も肉も骨も、元々は一人の人間を構成していた物をまるで生ゴミのように扱いながら、コラプサーの(あるじ)は男の中から現れた。

 緑色の首の先に乗っていた蕾は幾つのも花弁を同時に蠢かせて花開き、黄色い大輪の花は菊──中でも大菊という最大級の大きさの品種だろう──だとわかる。

 また、首の付け根の辺りには菊の葉っぱが連なってできたマフラーのような物を巻きつけており、その下にある体は中肉中背といった感じだった。

 男の脚だった物を踏み潰し、菊の頭を持つ怪物──フラワノイドは五本の指のある足をアスファルトに着ける。

 円盤型の大きな花を斜めに頭に乗せている様は、どことなく時代劇なんかで見かける編笠を被った侍のようでもあった。

 プラント一体を相手にするだけでも手一杯だというのに、フラワノイドまで現れてしまうだなんて。

 ──もう、ここで「神の指」を使うしかないのか?

 椚原さんや杏藤にはこの力を隠していたかったが、そうも言っていられない。

 俺は静かに右手を握り、指をペンを持つ時の形する。

 と、俺が「神の指」を起動させるよりも先に、フラワノイドはどこからともなく得物を取り出していた。

 奴は両手で一本の刀を握り刃を真横に寝かせて、顔の前で構える。刀は一見すると日本刀のようであったが、鍔は二枚の菊の葉でてきており、そこから伸びる刀身は毒素でも持っているのか濃い紫色をしていた。


「……斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ」


 不気味なほど整然と並んでいる歯を見せながら、今までの奴らと同じく怪物は憎悪の籠った言葉を、壊れた機械のように何度も繰り返し吐き出し続ける。

 これ以上ないというくらい絶望的な状況は、俺に選択の余地を与えなかった……。


 *


 私立秋津学園の中庭には、鳥籠のような形をした立派な温室が存在した。

 この温室の中心部は少し開けた空間となっており、眩しいほど白い円卓と揃いの椅子が三脚設置されている。

 今日はその全ての席が埋められており、彼女らはそれぞれ紅茶の注がれたカップを手に談笑(・・)を楽しんでいた。


「……ううむぅ」


 といっても、その中の一人、茉莉だけは浮かない表情で自分のティーカップに視線を落としたまま、まるで見知らぬ客人に威嚇する番犬のように唸り続けていたのだが。

 と、彼女の様子を見かねた桜が、苦笑いと共に口を開く。


「そんなに警戒しなくても、もうわさびなんて入ってないわよ」

「……そう言って、本当はまた私を騙すつもりなんだろ」


 ジロリと、不信感の籠った瞳を自分の左隣りに向ける茉莉。どうやら、昨日彼女にされた悪戯を相当根に持っているらしい。


「んもう、ごめんって言ってるじゃない。確かに一本丸々はやりすぎたと思ってるわ」

「い、一本丸々? そんなに入れたのか……?」

「ええ。リスクは大きい方が面白いからね」


 全くと言っていいほど悪びれる様子もなく平然と言ってのける桜に、生徒会のナンバーツーは絶句するしかなかった。

「信じられない」と言いたげな顔のまま凍りつく茉莉のことなど気にも留めず、桜はテーブルの上にある丸い皿に盛られたクッキーに手を伸ばし、一枚掴むとパクリと口の中に放り込む。


「うん、美味しい。やっぱり小枝ちゃんの手作りクッキーは素晴らしいわ〜。誰かさんもこれくらい作れるようになるといいんだけど」

「なんだと? 自分だってろくに自炊もせずにお菓子ばかり食べてるクセに!」

「私はできない(・・・・)んじゃなくてしない(・・・)だけだしぃ〜」


 そう答えた彼女はさらにもう一枚、今度はアーモンドの乗った物を掴み、茉莉に見せつけるように口の中に入れた。

 すると、テーブルについていた三人目の女生徒が、このままでは無益な応酬が続くだけだということを危惧してか、仲裁も兼ねて友人に声をかける。


「まあまあ、桜先輩も謝ってることだし許してあげなよ。ほら、クッキーあげるから」


 言いながら、彼女はクッキーの盛られた皿を不貞腐れた様子の茉莉の目の前に差し出した。茉莉とは同学年であるらしいく、度の強そうな丸い眼鏡とセミロングの茶色い髪、そしてそれを後ろで束ねている小判の装飾物のついたヘアゴムが特徴的である。

 また、この女生徒の左腕にも他の二人と同じ真っ赤な腕章が巻かれていた。


「ああ、ありがとう小枝。いただくよ」


 小枝という名前の女生徒の気遣いを察してか、若干機嫌を取り戻した彼女は笑顔で答える。それから皿の中の物を一枚手に取り、桜とは違い二回に分けて頬張った。


「……美味しい」

「ありがとー。もっといっぱい食べていいからねっ」

「本当か? では、遠慮なく」

「ふふ、あまり食べすぎると太るわよ?」


 と、桜はすかさず楽しそうに釘を突き刺す。

 再びむすっとした表情になった茉莉が睨みつけると、彼女は目を泳がせながらそっぽを向いてしまった。


「問題ない。年がら年中ぐうたらしてる誰かとは、鍛え方が違うからな」

「私食べても太らない体質だから大丈夫だしぃ。それに知らないの? 脂肪よりも筋肉の方が重いのよぉ?」

「あーもう、どうして二人ともすぐ口喧嘩するんですか。しかも、めちゃくちゃレベル低いし」


 不毛なやり取りが再開されそうになったのを見て、小枝は呆れたように言う。

 互いに顔を背け合っている二人の間を取りなす為、彼女は違う話題を提供することにした。


「そういえば、どうだったんですか? 例の春川くんって人。計画(・・)には協力してくれそうですかねぇ?」


 その問いに答えたのは、彼岸花を模して作られた髪留めをした少女である。


「さあ、どうかしら。こちらとしては申し分ないと思ってるけれど、彼がいい返事をくれるかどうかは微妙なところね」

「ほお、珍しく弱気だな」


 先ほどの意趣返しとばかりに、茉莉はここぞとばかりに横槍を入れた。

 これに対し、桜は自らの艶やかな黒髪に指を絡めて弄りながら、「べっつにぃ」とぶっきらぼうに返事をする。


「本当のことだし〜。それに、先のことはわからないからいいんじゃない」

「どういう意味だ?」


 友人が不思議そうに尋ねる様を見ながら、小枝もまた何か深い意味があるのではないかと、生徒会長の答えに注目した。

 後輩たちの視線を浴びながら、彼女はするりと髪を梳かすように指を下す。


「ゲームは簡単すぎちゃツマらないってことよ」


 不敵な笑みを浮かべて言った桜は、ティーカップを握り紅茶を口に含んだ。

 茉莉たちはなんとなく肩透かしを喰らったような気分で、その様子を見つめる。


「え、それだけ?」

「うん」

「……相変わらず、お前の言うことは深いのか浅いのかよくわからないな」

「あら、だからこそいいんじゃない。

 ──それより、小枝ちゃんの方こそどうなの? あれ(・・)の開発は順調に進んでるのよね?」


 カップを置きながら尋ねる彼女に、小枝は「はいっ」と笑顔で応じた。


「茉莉のデータのお陰で、もうほとんど完成状態です。

 後は何回かテストして調整できれば充分かと」

「そう、それは何よりだわ。

 あれが完成しないことには、私のプランは半分以上意味を成さなくなってしまう……。さすが小枝ちゃん。できる子ね」

「うむ、やはり頼りになるな」


 生徒会ツートップは口々に彼女を褒めてから二人同時に、


「「誰がさんとは違って」」


 と続けると、彼女らは互いに責めるような視線を送り合うのだった。

 その様子を見た小枝は、また始まったと呆れながため息を吐く。

 相変わらず仲がいいのか悪いのか。

 いや、確実に前者なのは確かだが痴話喧嘩の理由があまりにも幼稚すぎるのだと、彼女は冷静に分析しつつカップに手を伸した。


「どういう意味だ?」

「そういう意味だけど?

 というか、そっちこそ何よ」


 と、彼女らが不毛な応酬を再開しようとした矢先、ある予想外の事態が発生する。

 彼女らの顔と同じ高さの空間に、それぞれ長方形のウインドウが開かれたのだ。

 かと思うと、今度は警報音が温室中に響き渡る。


「こ、これって……⁉︎」


 アラートに合わせて点滅するウインドウは黄色と黒の縞模様をしており、それが非常事態を告げる物であることは明らかだった。

 加えて、その中央に真っ赤な文字で表示されていたのは、「コラプサー発生警報」である。


「まさか、三度目(・・・)が⁉︎ 桜!」

「どうやら、そのまさかのようね」


 居ても立っても居られないといった様子ですでに腰を上げている茉莉に、桜は至極落ち着いた表情で応じた。

 それから、彼女は目線を前に向けたまま静かに告げる。


「行って来なさい、茉莉。秋津学園生徒会副会長として、そしてフリーファイターとして、この街を護るのよ」

「うむ」


 生徒会会長の命を受け、フリーファイターは真剣な面持ちで頷き返した。その拳はすでに硬く握り締められており、かと思うと徐に腕を振るう。

 そして、裏拳の要領で左手の甲をウインドウに叩きつけ、彼女は強引にアプリケーションの警報機能を停止させた。


「これ以上、あの巫山戯た災害にうちの生徒を傷つけさせはしない」


 確固たる意志を鋭く尖らせた瞳に浮かべると、茉莉は踵を返して歩き出す。


「ええ、期待しているわ」

「頑張ってね、茉莉! けど、気を付けて!」


 出入り口のある方へと向かって行く背中を見つめながら、彼女らはそれぞれのセリフと共に仲間を送り出すのだった。


 *


「斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ斬リ捨テ……」


 二本の足を開き腰を低くさせたフラワノイドは、濃紫色の刃の切っ先がこちらを向くように、顔の真横で得物を構え直した。

 その様子を見た俺はとうとう決心を固め、ペンを握る時と同じ形にしていた右手を真横に挙げる。

 すると、指の間に黒いもやが集まって行き、それは瞬く間に一本の節くれ立った細長い指へと姿を変えた。

 リロードを終え俺の手の中に現れた「神の指」を見て、友人たちは不思議そうな表情を浮かべる。


「は、春川くん……何、それ……?」


 椚原さんがこちらを見つめながらそんな風に零すのが聞こえて来たが、その時の俺は彼女の声には答えなかった。

 ──代わりに、静かな落ち着いた声で、いつものワードを呟く。


「執筆……」

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