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18 もう全部メイドさんに任せていいんじゃないかな?


 サンドワームの巨体を、メイド人形が数人掛かりで空輸する。

 やっぱりメイド人形たちは魔術での重力操作ができるみたいだった。

 それでも簡単な作業ではないけどね。

 なにせ直径数メートルの胴体だから。


 長さは、地上に出てた分だけでも十メートルを越えてた。

 地下に隠れてた部分を合わせると三倍以上になる。

 大縄跳びの世界記録に挑戦できるね。

 跳び損ねた人から潰されていく。

 命懸けだ。


 と、くだらないこと考えてる場合じゃないね。

 とりあえず、飛竜と合わせて拠点に運ぶことにした。

 だけど、どう扱おう?

 そもそも何に使えるか分からない。

 一番簡単なのは食べることだね。

 アルラウネもラミアも、けっこう何でも食べるからね。

 毒さえなければ、だけど。


 安全な食料かどうかは、ちょっと面倒だけど調べられもする。

 適当な動物を捕獲してきて、アルラウネやラミアの魅了で、実験に付き合ってもらえばいいんだからね。

 要は、モルモット役がいればいい。

 医学の発展に犠牲が付きもの作戦だね。

 ほら、食も医学の内だって言うし。


 そんな面倒なことをしなくても、大丈夫そうではあるんだけどね。

 ミミズもサンドワームも、毒を使うような攻撃はしてこなかった。

 むしろミミズなんて、『吸収』しても美味しいくらいだった。

 まあ、メイド人形任せでいいかなあ。


『ご主人様、よろしければ氷室を作っては如何でしょう?』


 ヒムロ?

 えっと、たしか地下に氷なんかを溜めておくやつだっけ?

 昔の大型冷蔵庫だね。

 うん。いいんじゃないかな。

 余裕が無くって考えつかなかったけど、これからは食料の保存も必要だね。

 獲物だって、いつ狩れなくなるか分からないし。

 任せちゃって大丈夫かな?

 穴掘りは得意だから、ボクが作るべき?


『では、現在の城壁の外側に、地下貯蔵庫を設置するべきと考えます。並行して、拠点の拡張計画も進めていくのがよろしいかと』


 ん? 拡張計画?

 そんなの聞いてないんだけど、話が大きくなってない?

 だけど確かに、いまの拠点内に作ると邪魔になることもあるかな。

 ラミアの洞窟や、アルラウネの畑もあるし。

 サンドワームの死体も、ひとまずは城壁の外に置いたし。


 あ、見張りのラミアが驚いた顔をしてる。

 後でお裾分けくらい持っていこうか。

 アルラウネも、畑の肥料に使ってもらえるかな。


『こちらが、我々で立案した建築計画となります』


 一号さんが、空中に複雑な文字列を浮かべる。

 文字列というか、設計図だね。

 しかも三次元的に描かれてるものもある。


 えっと、中央にはやたら豪華なお城が建てられてるんですが。

 しかも、湖に沿う形で、かなり広い城下町も造られてる。

 城壁が三重になって、今のとは比べ物にならないくらい長大になってるね。

 お城とか、街の主要道路には細かな数値も付けられてる。


『このような街作りを目指しております。およそ、十年後を目途に』


 遠大ですね、一号さん。

 その計画立案能力には脱帽です。

 あと、絵心?、もしくは設計能力?、ともかくこのイメージも精密で凄いよ。

 だけど張り切り過ぎてるというか、うぅ~ん……、


 まあ、いいか。

 やっちゃおう。面白そうだし。

 十年後を目標っていうなら、余裕のある計画だろうからね。

 ボクはボクで、しばらく好き勝手するつもりだし。


 突撃サインを出す。

 一号さんは恭しく頭を下げた。

 心なしか嬉しそうに見えたのは、やっぱり気の所為かな?


『では、まずはあの長くて太いのから片付けましょう』


 無表情のまま、一号さんはサンドワームの死体を見下ろす。

 指示が送られて、他のメイド人形もテキパキと働く。

 ちょっと時間の掛かる作業になりそうだけど、問題はなさそうだ。


 ボクは一旦屋敷へ戻ろう。

 あ、子供たちが草むらで寝転んでる。

 夕方だけど、まだ暖かい季節だからね。

 お昼寝するには良い時間か。

 ボクもちょっと混ぜてもらおうかな。







 拠点のある湖周辺は平穏が続いている。

 人間の姿も、前回の襲撃から見掛けていない。

 色々な魔獣は出てくるけど、ラミアやアルラウネでも対処できるくらいだ。

 メイド人形のおかげで武装も充実してきたからね。

 狩りに出たラミアが怪我をして帰ってくることはあっても、深刻な事件は起こっていなかった。


 うん。平和だ。

 目の前のこれだって、大した事件じゃない。


『ご主人様は、自重という言葉をご存知ですか?』


 一号さんからじっとりと見つめられて、ボクは目を逸らす。

 眼下には、新たなサンドワームの死体が転がっている。

 最初のを仕留めてから、これで六体目だ。


 だってほら、この魔獣って砂漠化の原因だし。

 可能なら絶滅させた方がいいはずだし。


 一体目の時は苦戦したけど、楽に狩れる方法も見つけたからね。

 ちょっと知恵を絞れば簡単だった。

 サンドワームは挑発に弱い。

 魔術で攻撃したりすると、その反応をすぐに追い掛ける。

 だから囮役がいれば、安全に攻撃できるんだよね。


 その囮役をメイド人形に頼んだ。

 もちろん安全は考慮したよ。

 砂の鞭や土礫を防ぐだけなら、二人もいれば充分だった。

 だから三人掛かりで、確実にサンドワームの注意を引いてもらった。

 そして、ボクが充分に溜めた『万魔撃』を撃ち込む。

 これで大ダメージを与えられる。

 あとは傷口に集中攻撃で、あっさりと仕留められた。


 中には、『万魔撃』で真っ二つになるサンドワームもいたよ。

 それでも生きてたけど。

 どうやら雷撃とかで、内部を破壊する方が有効らしい。

 それが分かってからは、もっと簡単に狩れるようになった。

 おかげで、レベルも二つ上がったし。

 問題ないんじゃないかなあ?


『すでに二体のサンドワームが置き場所がなく、氷漬けで放置されております。このままでは、他の作業にも支障が出るかと』


 ですよねー。

 うん。さすがにもう狩って来るのは自重しよう。

 飛竜も何体か狩ってるし、食材の確保は充分すぎるよね。


 ただ、経験値を稼ぐ相手としても上質なんだよね。

 いまのボクじゃ、まだサンダーバードには勝てないと思う。

 なるべく力を付けておきたい。

 まあ、ゲーム感覚で経験値ばかり稼ぐのも良くないかもね。

 しばらくは拠点内での鍛錬に励んでもいいかな。

 メイド人形から魔術も習いたいし。

 重力制御とか、防護障壁とか、多才な技を持ってるし―――。


『ご主人様、緊急の報告があります』


 一号さんからの思念通話に、微かな緊張が混じったみたいだった。

 緊急って、何があったのかな?

 お肉の処理よりも大切なこと?


『拠点北側の警戒に当たっていた八号が、数名の人間を発見しました』


 人間? まさか、冒険者?

 あるいは、もっと別の可能性もあるけど―――。


 いずれにしても、決断しなきゃいけない時期ってことか。

 こんな拠点を作って、ずっと隠れていられるはずもないもんね。

 前回は襲撃を受けた訳だし、敵対する可能性が高いかな。


 でも、友好的な関係も築けるかも知れない。

 相手の出方次第だね。

 どうなるにせよ、まずは様子を見に行こうか。



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