17 毛玉vsサンドワーム
大きな鳴き声を響かせたサンドワームが、ゆっくりと首をもたげた。
だけどその口は、ボクたちとは別方向を向く。
地面へ向けて齧りついた。
特大のショベルカーみたいに土をさらっていく。
水でも飲むみたいに長い全身が蠢いた。
実際、食事なんだろうね。
土を食べてる。
ん? サンドワームなのに?
砂漠にいる他の生き物を食べるんじゃないのか―――、
とか観察していると、サンドワームがピタリと動きを止めた。
直後、口から大量の砂を吐き出す。
まるでブレスを吐いたみたいに、辺り一面に砂が撒き散らかされた。
『十号より―――推測ですが、あの生物が砂漠化の原因のようですね』
ああ、なるほど。
土を食べて、養分だけ吸って、砂にして吐き出してるのか。
妙な地形だと思ったけど、魔獣の影響で変わってきてる?
温暖化とか、曖昧な原因じゃないのは喜ぶべきかな。
だけど厄介でもあるね。
サンドワームがいる限り、砂漠が広がっていくってことでしょ。
これは見過ごせない。
進行速度がどれくらいにしても、いずれボクの拠点まで迫ってくるはず。
それに、このサバンナが食い荒らされるのも困るよ。
羊とか牛とかいるかも知れないし。
ボクのご飯のためにも、砂漠化は食い止めたい。
ってことで、サンドワームにはこの世からご退場願おう。
幸い、動きは鈍いみたいだしね。
戦い方を考えれば安全に狩れるでしょ。
まずは十号さんに退避の合図を送る。
飛竜の死体も運んでもらわないといけないからね。
『十号より―――承服いたしました。どうか、ご無理はなさいませんように』
空中で一礼して、十号さんが去っていく。
それを確認してから、ボクもサンドワームから距離を取った。
数百メートルほど。それでも魔眼なら充分に届く。
相手はまだ土を食べてるね。
こっちを警戒してる素振りもない。
だけど砂の中に隠れられても困るし、早々に決着をつけよう。
円形に開かれた口を睨んで―――『死滅の魔眼』、発動!
途端に、サンドワームは身をくねらせた。
悶えるような鳴き声も上がる。
効けば即死の魔眼だ。
でも、耐えられた?
魔法効果は徹ったように感じたんだけど、ともかく、まだ生きてるね。
死毒に耐えた巨人と似てるかな。
生命力で強引に捻じ伏せたような?
でも幾分かダメージはあったみたいだね。
大口から吐き出された砂に、黒や緑の体液が混じった。
続けて、もう一発”死滅”を撃ち込む。
サンドワームが悶える。
だけど直後に、その巨体を囲むように魔力の光が瞬いた。
なにか、マズイ?
《行為経験値が一定に達しました。『魔力感知』スキルが上昇しました》
サンドワームの周囲にあった砂が渦を巻く。
まるで竜巻が起こったみたいに、砂の壁が巨体を覆い隠した。
でも隠れたり逃げたりするつもりはないらしい。
砂が鞭みたいな形になって襲ってくる。
うわ、この距離で届くのか。
だけど離れてる分、鞭の一本くらいなら余裕で避け―――一本じゃない!?
何本もの砂の鞭が襲ってくる。
さらには、槍にもなって飛んでくる。
そういえばミミズも石礫を飛ばしてきたっけ。
こうなると脅威だ。
事前に距離を取っていたから、その気になればすぐに逃げられるはず。
だけどまだ、その時じゃないね。
多少の抵抗は想定の内だよ。
『衝破の魔眼』を散らす。
避けながら、当たりそうなものは砕いていく。
砂で作られてるから強度はそれほどでもないみたいだね。
でも地面を削るくらいの威力はある。
直撃したら、ボクには大ダメージだよ。
防戦だけじゃ追い込まれる。
応戦する。『轟雷の魔眼』撃ち込む。
《行為経験値が一定に達しました。『連続魔』スキルが上昇しました》
《行為経験値が一定に達しました。『轟雷の魔眼』スキルが上昇しました》
空中を一直線に貫いた雷撃が、サンドワームの皮膚を焼く。
うん。焼いただけだ。
焦げ痕からしても大した傷じゃない。
竜巻みたいな砂の壁に守られてるおかげで、雷撃が散らされた。
おまけに、魔術障壁みたいなものが輝くのも見えた。
そういえばミミズも魔術への抵抗力は高かったね。
アレが進化して、サンドワームになったのかな?
長所はしっかり残してるって訳だ。
だとしたら厄介だけど―――。
まずは、その砂の壁から抑えようか。
『凍晶の魔眼』、発動!
巨体の根元を狙う。
砂地ごと凍らせてあげよう。
可能ならサンドワームごと凍りつかせたいけど、それは障壁で防がれる。
だけど地面は凍った。
砂が飛ぶのを抑えられるはずだし、サンドワームも動き難くなるはず。
なんて、甘かった。
サンドワームが身をくねらせて氷結した地面を割る。
舞い上がる砂に、氷も混じった。
土と氷が合わさってパワーアップ!
ダメじゃん!
また砂の鞭が振り回される。
氷礫も混じって避け難くなっちゃったよ。
『爆裂針』と『衝破の魔眼』を散らして、こっちも弾幕を張る。
この距離だと、毛針はサンドワーム本体までは届かない。
防御に使うしかないね。
攻撃は、第二の作戦でなんとかしよう。
砂の鞭を回避しながら地面に降り―――られない!
横薙ぎにブッ叩かれた。
サッカーのシュートみたいに吹っ飛ばされる。
《行為経験値が一定に達しました。『激痛耐性』スキルが上昇しました》
《行為経験値が一定に達しました。『打撃大耐性』スキルが上昇しました》
ぐぅ。やっぱり強烈だね。
『下位物理無効』があっても防ぎきれなかったよ。
おまけに砂がヤスリみたいになって、皮膚ごと削られた。
だけど致命傷じゃない。
地面に叩きつけられる前に、『空中機動』で衝撃をやわらげる。
そのまま空中に戻らずに、そのまま地面を転がった。
毛玉ローリングだ。
狙いは、外に漏れる魔力をカットすること。
ほら、ミミズって魔力や音への感知能力に優れてたから。
代わりに、視力は退化してるみたいだった。
その特徴はサンドワームにも受け継がれてるはず。
音も、この砂嵐の中なら紛れてくれる。
『空中機動』とは違って、毛玉ローリングなら魔力を放たない。
これでサンドワームは、ボクの姿を見失う。
なんて期待をしたのに、また砂の鞭が襲ってきた。
うへぇっ!? 毛玉ジャンプで回避!
狙いが荒くて助かった。
だけど、確実にボクの位置を掴んでる?
あ、首もこっちを向いた。間違いなさそうだね。
見えてる、とは思えない。
音でバレた? この砂嵐の中で?
もしかして、地面からの震動とか―――って考えるのは後回しだ。
また鞭と土礫が飛んでくる。
『空中機動』を使って回避。
『爆裂針』で弾幕も張って、どうにか追撃を躱す。
”溜め”の間は魔眼が使えないんだよね。
だから時間を稼ぎたかったんだけど―――どうにか間に合ったよ。
『万魔撃』、発動!
魔力ビームが砂の壁も突き破る。
障壁で僅かに抵抗されたけど、それでも威力は充分だ。
サンドワームの太い体を、半分近くも削り取った。
虫が喚くみたいな悲鳴が上がる。
巨体がのたうつ。地震でも起こったみたいに辺りが激しく揺れた。
トドメを刺すチャンスだね。
傷口を狙って、『轟雷の魔眼』を叩き込む。
一発、二発と続け様に。
さすがにもう障壁で防ぐ余裕もない。
四発目で、サンドワームの全身が伸びて痙攣した。
そのまま大きな音を立てて倒れる。
《総合経験値が一定に達しました。魔眼、ジ・ワンがLV10からLV11になりました》
《各種能力値ボーナスを取得しました》
《カスタマイズポイントを取得しました》
《行為経験値が一定に達しました。『魔力集束』スキルが上昇しました》
ふうぅ。けっこう強敵だったね。
結局、『万魔撃』でゴリ押しする形になっちゃったよ。
もうちょっとスマートに勝ちたかったんだけどね。
強烈なシュートで、危うくゴールネットを揺らしそうにもなったし。
『自己再生』で手早く回復しておこう。
さて、ともかくも勝った。
あとは、この、でろんとした死体をどうしよう?
『吸収』して片付けてもいいけど、さすがに大きすぎる気がする。
食べるだけっていうのも勿体無いかな。
素材とか使えるかも知れない。
とりあえずメイドさんを呼んで、運べるか検討してみよう。
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魔眼 ジ・ワン LV:11 名前:κτμ
戦闘力:8620
社会生活力:-2980
カルマ:-7350
特性:
魔獣種 :『八万針』『完全吸収』『変身』『空中機動』
万能魔導 :『支配』『魔力大強化』『魔力集束』『破魔耐性』『懲罰』
『万魔撃』『加護』『無属性魔術』『錬金術』『生命干渉』
『土木系魔術』『闇術』『連続魔』『魔術開発』『精密魔導』
『全属性耐性』
英傑絶佳・従:『成長加速』
手芸の才・極:『精巧』『栽培』『裁縫』『細工』『建築』
不動の心 :『極道』『不屈』『精神無効』『恒心』
活命の才・壱:『生命力大強化』『頑健』『自己再生』『自動回復』『悪食』
『激痛耐性』『死毒耐性』『下位物理無効』『闇大耐性』
『立体機動』『打撃大耐性』『衝撃大耐性』
知謀の才・弐:『鑑定』『記憶』『高速演算』『罠師』『多重思考』
闘争の才・弐:『破戒撃』『回避』『剛力撃』『高速撃』『天撃』『獄門』
魂源の才 :『成長大加速』『支配無効』『状態異常大耐性』
共感の才・壱:『精霊感知』『五感制御』『精霊の加護』『自動感知』
覇者の才・弐:『一騎当千』『威圧』『不変』『法則改変』
隠者の才・壱:『隠密』『無音』
魔眼覇王 :『大治の魔眼』『死滅の魔眼』『災禍の魔眼』『衝破の魔眼』
『闇裂の魔眼』『凍晶の魔眼』『轟雷の魔眼』『破滅の魔眼』
閲覧許可 :『魔術知識』『鑑定知識』
称号:
『使い魔候補』『仲間殺し』『極悪』『魔獣の殲滅者』『蛮勇』『罪人殺し』
『悪業を積み重ねる者』『根源種』『善意』『エルフの友』『熟練戦士』
『エルフの恩人』『魔術開拓者』『植物の友』『職人見習い』『魔獣の友』
『人殺し』『君主』
カスタマイズポイント:410
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