表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/185

05 グロ中尉③


 晒け出されてる心臓を叩き潰すなんて簡単。

 そう考えていた時期が、ボクにもありました。


 だってほら、謂わば動かない弱点だし。

 ちょっと毛針で突けば、風船みたいに破裂しそうなイメージがあったんだよ。

 うん。甘かったね。

 だけどまさか、肉が城砦化するなんて思いもしなかったよ。


 ボクだって油断してた訳じゃない。

 まず最初に、充分な距離を取ってから『万魔撃』を叩き込んだ。

 でも防がれた。

 床や壁を覆っていた肉が蠢いて、変形して、壁を作って。

 壁というか、ブロックミート?

 硬さじゃなくて、厚さで防ぐような肉の塊だった。

 『万魔撃』もけっこう頑張ってくれたんだけど、肉壁の半分くらいしか削れなかった。


 そんな肉壁が次々と作られていって、心臓部を囲った。

 城壁みたいに。

 だけどボクにはまだ余裕があった。

 いくら城壁を積み重ねても、それも無限のはずはないからね。

 五~六発も『万魔撃』を叩き込めば決着がつきそうだった。


 でも、お城にあるのは壁だけじゃないんだよね。

 城を守る兵士もいる。

 そいつらは、天井からボタボタと落下してきた。

 なんていうか、とってもグロ注意な兵隊だったよ。

 背中にザクロを貼りつけたムカデみたいな。


 そんな連中が、何十何百と天井の肉から落ちてくる。

 この時点もう、怖気を覚えたね。

 うぞぞぞぞぞ、って。

 ザクロムカデが赤黒い波になって向かってくるんだもん。


 もちろん迎撃はした。

 近づかれるだけでも気持ち悪いからね。

 衝破や雷撃、凍結、攻撃系の魔眼をフル稼働で。

 だけどザクロムカデは、仲間の死体を押し退け、踏みつけて向かってくる。

 しかもその背中のザクロが割れて、溶解液を飛ばしてきた。

 一発一発は、『加護』で充分に防げるくらいの威力だ。

 だけどザクロムカデは数で攻めてくる。

 もしもボク自身に群がられたら堪ったものじゃない。


 この時点で戦略的撤退を決定。

 毛針や魔眼を散らしながら、背後へ向かって全力で飛んだ。

 幸い、ザクロムカデの足はさほど速くなかった。

 距離を取ったところで、『凍結の魔眼』を使って通路を氷で埋め尽くす。

 時間稼ぎだね。

 ちょっと作戦を立て直したい。

 ザクロムカデは氷の壁を壊そうと群がってくるけど、土壁を作った時の要領で強化してある。

 分厚く作ってもあるから、十分や二十分は耐えられるはず。

 で、いまは一息ついて作戦を練り直してるワケだけど―――、


《行為経験値が一定に達しました。『恒心』スキルが上昇しました》

《行為経験値が一定に達しました。『精神無効』スキルが上昇しました》


 やっぱり精神衛生上よろしくないよねえ。

 氷壁を挟んだ向こうでは、ザクロムカデの群れが諦めずに蠢いてるし。

 倒す以外に、逃げ道も無いワケだし。

 でもひとまずは休憩する余裕が持てた。

 魔力も少しだけど回復できてる。

 『万魔撃』を何発か撃つ余裕はあるね。


 あとは、力押しでもなんとか倒しきれると思う。

 いまも敵の数は減ってるし。


 撤退はしたけど、ボクは恐怖で錯乱してた訳じゃない。

 反撃の策も打っておいた。

 可能な限りの『焼夷針』をバラ撒いておいたんだよ。

 ボクが休んでる間にも、炎は広がっていた。

 もう面積だけなら、ザクロムカデの群れを上回ってる。

 肉壁にも火を消し止める能力が無くて助かったよ。


 さて、敵軍の数は減って追い詰められてる。

 反撃をしてトドメといこう。

 薄くなってきた氷壁へ向けて、『衝破の魔眼』を撃ち込む。

 氷が砕けて、数え切れないほどのザクロムカデもまとめて吹き飛んだ。

 そこへ『万魔撃』も叩きつける。

 魔力ビームが通路を埋め尽くして、薙ぎ払った。

 心臓がある大広間までの道が、一気に拓ける。


 それでもまだ肉壁軍は侮れなかった。

 心臓は文字通りの分厚い壁で守られてる。

 さらに、ザクロムカデもまだ後から沸いてくる。

 ボクが大広間に近づくと、一段と太い触手も襲ってきた。

 先端に無数の棘がついた触手だ。

 太い分だけ破壊力もある。

 まともに殴られたらダメージは大きそうだね。

 そんな触手が何本も、通路を塞ぐように伸びてくる。


 だけど、こっちも見てるだけじゃないよ。

 『破砕針』や『爆裂針』を飛ばしまくる。

 『雷撃の魔眼』で動きを止めて、『衝破の魔眼』で砕き散らす。

 ザクロムカデも近づかせない。

 そうして時間を稼いで、また『万魔撃』で心臓を狙う。


《行為経験値が一定に達しました。『八万針』スキルが上昇しました》

《行為経験値が一定に達しました。『破戒撃』スキルが上昇しました》

《行為経験値が一定に達しました。『万魔撃』スキルが上昇しました》


 三発目の『万魔撃』で、ついに心臓に届いた。

 大きく脈打っていた部分が弾けて、赤黒い液体が大量に飛び散る。

 異臭が広間全体に漂った。

 風を操って異臭を吸わないようにしつつ、少しだけ後退する。


 だけど攻撃の手は緩めない。

 相手もまだ最後の足掻きをするみたいだからね。

 周囲の肉壁が、一際激しく脈打ちはじめた。

 また触手が増えて襲ってくる。

 というか、滅茶苦茶に暴れて、そこかしこを殴りつけてる。

 狙いは出鱈目だけど、巻き込まれるのも馬鹿馬鹿しいね。

 さっさと大人しくなってもらおう。


 毛針と魔眼を散らしながら、”溜め”を作る。

 赤黒く蠢く肉壁の模様が、一瞬、恨めしそうにこちらを睨んでいるように見えた。

 まあ錯覚だね。

 だけどこの肉壁も、懸命に身を守ろうとしてたのかも知れない。

 グロい生物を次々と出してきたのも、他に手段がなかったから。

 根本的に、自分ではどうしようもない部分で、おぞましい生物だったのかも。

 そう考えると、少し―――、


 いや、かなり迷惑なヤツだね。

 もう二度とボクの前には現れないで欲しい。

 ってことで、『万魔撃』発動。


《総合経験値が一定に達しました。魔眼、ジ・ワンがLV8からLV9になりました》

《各種能力値ボーナスを取得しました》

《カスタマイズポイントを取得しました》


《行為経験値が一定に達しました。『一騎当千』スキルが上昇しました》

《行為経験値が一定に達しました。『雷撃の魔眼』スキルが上昇しました》

《条件が満たされました。『轟雷の魔眼』スキルが解放されます》

《行為経験値が一定に達しました。『凍結の魔眼』スキルが上昇しました》

《条件が満たされました。『凍晶の魔眼』スキルが解放されます》


 中心部から焼き尽くされた心臓は、また異臭を撒き散らしながら崩れ落ちた。

 周囲の肉壁も、蠢いていたのが徐々に鈍くなる。

 ほどなくして、完全に動きを止めた。


 ザクロムカデは残ったけど、そっちも一匹残らず駆除しておく。

 繁殖なんてされたら困るからね。

 こんなの、絶滅推奨種でしょ。

 念入りに燃やして、匂いはダンジョンの奥へ送り込んで、と。

 広間には、石壁と、僅かに焼け焦げた肉だけが残った。


 ふう。掃除完了だね。

 さよならグロ中尉。


 さて、戦闘も終わったし、一休みしたいところ。

 でもさすがに、この広間で休むのは気分的に歓迎できないね。

 とりあえず焼け残ったお肉は、広間の隅に積み上げておこう。

 あとで食べに来るかも知れないからね。

 何枚か切り身にして、黒毛の間にも隠し持っておく。

 休める場所を探すためにも、もう少しだけ進んでみよう。


 広間の奥には、一層と同じような通路が続いていた。

 少しだけ肉壁も残っていたけど、それもほどなくして途切れる。

 そうして通路を進んで―――、


 やがて、一枚の扉に行き当たった。

 また両開きの、頑丈そうな造りの扉だ。

 そして扉の脇には、光を放つ機械じみた装置が置かれていた。



-------------------------------

魔眼 ジ・ワン   LV:9 名前:κτμ


戦闘力:8280

社会生活力:-3350

カルマ:-7450

特性:

 魔獣種   :『八万針』『完全吸収』『変身』『空中機動』

 万能魔導  :『支配』『魔力大強化』『魔力集束』『破魔耐性』『懲罰』

        『万魔撃』『加護』『無属性魔術』『錬金術』『生命干渉』

        『土木系魔術』『闇術』『連続魔』『魔術開発』『精密魔導』

        『全属性耐性』

 英傑絶佳・従:『成長加速』

 手芸の才・極:『精巧』『栽培』『裁縫』『細工』『建築』

 不動の心  :『極道』『不屈』『精神無効』『恒心』

 活命の才・壱:『生命力大強化』『頑健』『自己再生』『自動回復』『悪食』

        『激痛耐性』『死毒耐性』『下位物理無効』『闇大耐性』

        『立体機動』『打撃大耐性』『衝撃大耐性』

 知謀の才・弐:『鑑定』『記憶』『演算』『罠師』『多重思考』

 闘争の才・弐:『破戒撃』『回避』『強力撃』『高速撃』『天撃』『獄門』

 魂源の才  :『成長大加速』『支配無効』『状態異常大耐性』

 共感の才・壱:『精霊感知』『五感制御』『精霊の加護』『自動感知』

 覇者の才・壱:『一騎当千』『威圧』『不変』『法則改変』

 隠者の才・壱:『隠密』『無音』

 魔眼覇王  :『大治の魔眼』『死滅の魔眼』『災禍の魔眼』『衝破の魔眼』

        『闇裂の魔眼』『凍晶の魔眼』『轟雷の魔眼』『破滅の魔眼』

 閲覧許可  :『魔術知識』『鑑定知識』

称号:

『使い魔候補』『仲間殺し』『極悪』『魔獣の殲滅者』『蛮勇』『罪人殺し』

『悪業を積み重ねる者』『根源種』『善意』『エルフの友』『熟練戦士』

『エルフの恩人』『魔術開拓者』『植物の友』『職人見習い』『魔獣の友』

『人殺し』


カスタマイズポイント:390

-------------------------------


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ