34 このロリコンオークどもめ!
毛針を飛ばす。盾で防がれる。
貫通針でさえ、亀の甲羅を完全には貫けない。
深く刺さりはするんだけど、ボスオークまでは届かない。
しかも本体の表皮も硬そうだ。
ボクが距離を取ろうとすると、他のオークが囲むように移動する。
もう数えられるくらいしか残っていないのに、連携を保っていた。
どうしてもボクを倒したいらしい。
『混沌の魔眼』をバラ撒いても、精鋭連中にはほとんど効果がない。
精々、一瞬動きを止められるくらいだ。
ボスオークが迫る。
振り下ろされる大剣の一撃は、ボクの体を両断できそうだ。
たぶん『加護』でも防ぎきれない。
辛うじて回避する。
同時に毛針も飛ばしてる。狙ったのは後方にいる杖持ちオークだ。
魔術を使おうとしてた杖持ちを、爆裂針で邪魔してやる。
怯んだところに『死毒の魔眼』も直接に叩き込む。
範囲攻撃としては防がれる魔眼でも、『魔力集中』も乗せて直接なら、まず確実に効果を発揮する。
隣にいた数体も抵抗に失敗して、死毒を吸い込んで倒れた。
これで杖持ちは全滅のはずだ。
だけどまたボスオークが突撃してくる。
横薙ぎの剣を避ける。
その直後、大型オークが回り込む形で迫っていた。
盾でぶん殴られる。
正しくボールみたいに吹っ飛ばされた。
《行為経験値が一定に達しました。『打撃耐性』スキルが上昇しました》
いたた。
一瞬、意識が飛びそうになったよ。
体も凹んでるんじゃないかな。
地面を削って、背中から木にぶつかってどうにか止まった。
ダメージは大きい。
でも距離が取れたのは幸運だ。
反撃を―――と思ったところで、銀子が悲鳴を上げた。
ボスオークが銀子に迫ってる。
手を伸ばして細い腕を掴んだ。
マズイ。銀子も魔術を放って抵抗するけど、物ともしていない。
助けに行きたいけど、ボクの目の前には大型オークだ。
壁を築くみたいに立ち塞がる。
貫通針。効かない。盾で防がれる。
その間にもボスオークは銀子を捕まえて、そのまま逃げようとしていた。
連れ去るつもりか!
仕方ない。ボスに叩き込むつもりだったけど、ここで使おう。
最後の『万魔撃』だ。
目からビーム! 大型オークどもがまとめて消し飛ぶ。
逃げるボスオークがちらりと振り返った。
ボクと目が合う。
向こうが怯えているのが分かった。
こんな毛玉に何を怯えてるのやら。だけど、それだけ必死だったのかね。
知ったことじゃない。
追い掛ける。
まだ何体か残ってたオークが邪魔しようとするけど、毛針を叩き込んで排除。
ボスオークも動きが鈍ってるのか、逃げ足はさほど速くない。
追いつけそうだ。
向こうもそれを察したのか、足を止めて銀子を離した。
剣を構えてボクと向き合う。
正真正銘、最後の対決といったところかな。
お互いのすべてを賭けて。正々堂々と?
いや、もう終わってる。
傷ついてるボスオークは、すでに何本か猛毒針を喰らっているんだ。
治療法があれば別だけど、ボクはもう時間を稼ぐだけでいい。
その意味では、銀子がサポートしてくれたとも言えるね。
それでもボスオークは諦め悪く剣を振り上げる。
ボクは剣の間合いから逃れて、『衝撃の魔眼』を叩き込んだ。
さすがに吹っ飛びはしない。やっぱり、とんでもない力だね。
だけど動きは止まった。
そこにまた『九拾針』。まとめて叩き込む。
あ、貫通針がちょうど頭に突き刺さった。
大きく目を見開いたボスオークは、地面へと倒れ伏した。
おまけで猛毒針もお見舞いしておく。
いくらなんでも、これで死んでない、なんてことはないよね?
《総合経験値が一定に達しました。魔獣、オリジン・ユニーク・ベアルーダがLV10からLV11になりました》
《各種能力値ボーナスを取得しました》
《カスタマイズポイントを取得しました》
《特定行動により、称号『エルフの恩人』を獲得しました》
《称号『エルフの恩人』により、『精霊の加護』スキルが覚醒しました》
《特定行動により、称号『魔獣の殲滅者』を獲得しました》
《『魔獣殺し』は『魔獣の殲滅者』へと書き換えられます》
《称号『魔獣の殲滅者』により、『一騎当千』スキルが覚醒しました》
《条件が満たされました。『覇者の才』が承認されます》
《『覇者の才』取得により、関連スキルが解放されました》
《条件が満たされました。『戦闘の才』は『闘争の才』へと強化されます》
《行為経験値が一定に達しました。『九拾針』スキルが上昇しました》
《行為経験値が一定に達しました。『混沌の魔眼』スキルが上昇しました》
《行為経験値が一定に達しました。『衝撃の魔眼』スキルが上昇しました》
《行為経験値が一定に達しました。『極道』スキルが上昇しました》
《行為経験値が一定に達しました。『威圧』スキルが上昇しました》
《行為経験値が一定に達しました。『高速撃』スキルが上昇しました》
ふうぅ。
なんとか倒しきった。
ごっそりとシステムメッセージが出たけど後回しだ。
まだ何体か残った亀オークもいたけど、散り散りになって逃げていく。
今度は追わなくてもいいかな。
銀子も無事だしね。
あ、でも泣いてる。そしてちょっと服と地面を濡らしちゃったみたいだね。
まあ後で洗えばいいよ。
ぽんぽんと、いつものように撫でてやると、銀子は抱きついてきた。
はいはい。怖かったね。
だけどもう少しだけ頑張ろうか。
まだ亀オークが潜んでるかも知れないし、油断はできないからね。
ほっと息を吐いたところで襲撃、なんて洒落にならないよ。
って、いたた。
ボクも怪我してるんだった。
銀子を押し離して『大治の魔眼』を発動させる。
ああ、魔力が尽きる寸前だよ。
治療も満足にできないね。しばらくは我慢かなあ。
《行為経験値が一定に達しました。『我慢』スキルが上昇しました》
我慢って……むしろ、戦いの中で上がってもよさそうなのに。
まあいいや。
とにかく周囲の安全を確認して、移動しないと。
荷物の回収もしたいね。
こいつらの死体はどうしようかな?
とりあえずボスオークと、精鋭どもは『吸収』しておこうか。
豚か亀か知らないけど、銀子だってこんなの食べたくないだろうしね。
それじゃあ、ちゅうぅぅ~っと。
う、不味い。
なんて言うか、油っぽさと水臭さが混じり合ってるような。
実際に亀オーク肉を口にすると、こんな味なのかな。
とても食べ比べてみる気にはなれないなあ。
ともあれ、吸収完了。
適当に後片付けをして、さっさと休みたいよ。
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魔獣 オリジン・ユニーク・ベアルーダ LV:11 名前:κτμ
戦闘力:3780
社会生活力:-2580
カルマ:-4480
特性:
魔獣種 :『九拾針』『高速吸収』『変身』『浮遊』
魔導の才・極:『操作』『魔力大強化』『魔力集中』『破魔耐性』『懲罰』
『万魔撃』『加護』『無属性魔術』『錬金術』『生命干渉』
『土木系魔術』『闇術』『高速魔』
英傑絶佳・従:『成長加速』
手芸の才・参:『精巧』『栽培』『裁縫』
不動の心 :『極道』『我慢』『恐怖大耐性』『静寂』
生存の才・壱:『生命力大強化』『自己再生』『自動回復』『激痛耐性』
『猛毒耐性』『物理大耐性』『闇大耐性』『悪食』
知謀の才・壱:『鑑定』『沈思速考』『記憶』『演算』『罠師』
闘争の才・壱:『破戒撃』『回避』『強力撃』『高速撃』『天撃』
魂源の才 :『成長大加速』『支配無効』
共感の才・壱:『精霊感知』『危機感知』『五感制御』『精霊の加護』
覇者の才・壱:『一騎当千』『威圧』
魔眼の覇者 :『大治の魔眼』『死毒の魔眼』『混沌の魔眼』『衝撃の魔眼』
『破滅の魔眼』
閲覧許可 :『魔術知識』『鑑定知識』
称号:
『使い魔候補』『仲間殺し』『悪逆』『魔獣の殲滅者』『無謀』『罪人殺し』
『悪業を積む者』『根源種』『善意』『エルフの友』『熟練戦士』『エルフの恩人』
カスタマイズポイント:510
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