30 森のくまさん、with火炎ブレス
問い:森でくまさんに出会ったらどうするべきですか?
答え:目を合わせたまま、ゆっくりと後退して距離を取りましょう。
『混沌の魔眼』&『衝撃の魔眼』、全力発動!
『九拾針』は貫通、爆裂、溶解、各種に『破戒撃』や『強力撃』を乗せて撃ちまくる。
木陰から現れたのは、赤黒斑模様の凶暴そうなクマだった。
とても落し物を届けにきてくれたようには見えない。
実際、いきなり木を叩き折って投げ飛ばしてきたからね。
こっちも全力で応戦させてもらう。
衝撃でクマを吹き飛ばしつつ、慎重に後退する。
銀子も慌てた声を上げながらも従ってくれる。
草木が倒れて、土煙が上がった。
やったか!?、と言いたくなるような場面だ。
もちろん油断はしない。
ボク自身と銀子に『加護』を掛けて様子を窺う。
この『加護』は、字面通りに身を守るためのスキルだ。
自身を囲う形で魔法っぽい防壁が展開する。
魔術の一種なんだろうけど、魔眼みたいに簡単に発動できる。
魔力消費は軽くて、普通の人間が殴ったくらいじゃ破れないくらいの硬さがある。
もっとも、この世界の”普通”がどれくらいか知らないし、魔獣相手だと気休めくらいにしかならないだろうけど―――、
それでも展開しておいてよかった。
木陰が揺れる。
直後、炎が襲ってきた。
銀子を横に突き飛ばして、ボクも必死になって避ける。
炎はダメだ。焦んがり毛玉にされる。
火炎放射器みたいにクマの口から吹き出された炎を、ボクたちは辛うじて避けた。
そして今度はクマが突撃してくる。
でも、遅い。
最初に吹っ飛ばされてくれたおかげで、準備をする時間は稼げていた。
『万魔撃』、発動。
少々の”溜め”が必要になるけど、この『万魔撃』、威力は格別だ。
太い光が一直線に放たれて、進路上にあるものを徹底的に破壊する。
ほとんどビームだ。
正面の単眼から放たれるように見えるので、ますますバックベア○ドっぽくなってきた。
クマは咄嗟に身を捻ったけど、避けられる速度じゃない。
体の右半分を消し飛ばされたクマは、そのまま息絶える。
《総合経験値が一定に達しました。魔獣、オリジン・ユニーク・ベアルーダがLV5からLV6になりました》
《各種能力値ボーナスを取得しました》
《カスタマイズポイントを取得しました》
《行為経験値が一定に達しました。『万魔撃』スキルが上昇しました》
《行為経験値が一定に達しました。『加護』スキルが上昇しました》
《行為経験値が一定に達しました。『回避』スキルが上昇しました》
勝利!
とはいえ、ギリギリの戦いだった。
いきなり炎吐くクマが出てくるとか、やっぱりこの森はデンジャーだね。
『加護』つけてたのに少し燃えたし。
銀子が慌てて水を出して消してくれてる。
ふう。大した怪我がなくてよかった。
西を目指して出発して、今日で十日目に入った。
根っ子に苦しめられた後も、色々と事件はあったけど、なんとか無事に旅を続けていられる。
川に近づいたらダツっぽい魚が襲ってきたり、
毒粉を撒き散らすセミが襲ってきたり、
貫通針も弾くアルマジロが襲ってきたり。
襲われてばっかりだよ! なんで平穏な旅をさせてくれないかな!
ちなみに、アルマジロが一番美味しかった。
丸まったままの死体を見て、銀子が悲しそうな顔をしてたけどね。
もしかして丸い物が好きなのかね?
最近、夜中じゃなくてもボクに抱きついてくるし。
撫でるだけじゃなくて、抱えたまま振り回すようにもなった。
はいはい。分かったから、そろそろ離しなさい。
元気なのはいいけど、騒ぎすぎるのは困る。
高い高~いとかやられても、こっちは喜ぶような年齢じゃないんだから。
いつか銀子の両親に会ったら文句を言ってやろう。
お嬢さんは毛玉遊びするような子になってしまいましたよ、と。
あれ? あんまり文句になってないかな?
この世界にボールがあるのかは知らないけど、それくらいの遊びは普通にするだろうし。
って、ボクはボールとは違うからね。
最近、少し頑丈になって弾力も出てきたけど、あくまで毛玉だ。
似てるけど違う。そこは一線を引いておきたい。
まあ毛玉って時点で誇れはしないんだけどねえ。
さて、遊ぶのはこれくらいにして、と。
まだ先がどれくらいあるかも分からないし、進まないといけない。
銀子を押し離して、『操作』の魔力糸を伸ばしてクマの死体を運ぶ。
食料確保だ。
午後からは、クマの解体だね。
野営地を作るのにも随分と慣れてきた。
偽リンゴの効果なのか、幸運なのか、夜中に襲われたことも今までは無いね。
その偽リンゴだけど、大きな変化があったよ。
しばらく続けてきた品種改良が成功した。
『生命干渉』の補助も利いてるはず。
イメージ構築が難しいとか、魔力消費が激しいとかの問題はあるけど、結果はそれに見合ったものだ。
なんと、甘いリンゴが生るようになりました。
青森!、って味がする、本物と言えるリンゴだ。
しかも破魔効果も現れない。
ちゃんとボクが毒見して、時間も置いて確かめたからね。
もうこのままリンゴ農家として生活していけそうだ。
土の養分と魔力だけでぐんぐん成長してくれるので、食料にも悩まされない。
種さえ持っていれば、ほとんど何処ででも育てられる。
銀子も喜んで齧ってるよ。
とりあえず昼食はこれでよし、と。
それじゃあ次はクマの解体だね。
って言っても、さすがに動物の解体方法なんて知らない。
とりあえず内臓を避けて、肉を削ぎ落としていく感じでいいかな。
ちなみに使うのは人攫いどもが持ってた剣、それを持ち易い包丁に改造したもの。
改造方法の基本は、『操作』による魔力を介した物体への干渉。
そこに『錬金術』が加わって、少しずつ幅が広がってる。
元々は、物を曲げたり伸ばしたりしか出来なかったスキルなんだけどねえ。
『干渉』から進化した『操作』、なかなかに奥が深そうだね。
地球からの知識のおかげで、ボクが物質の構造を理解してる影響もあるのかな。
鉄の剣を折ったり、圧縮したり、鋭くしたりも可能だった。
まだ細かな作業は難しいけど、練習すれば上達もしていけそうだ。
鋼○錬金術師とか名乗れる日も近いかも。
どちらかと言えば、毛玉の錬金術師だけどね。
字は毛玉! カッコ悪い!
まあ、そんなことはともかくも。
あれこれと覚えた技を駆使して、今日はまた新たな挑戦をしてみた。
土を円筒形に固めて、内部にちょこちょこと手を加えて、所々をくり貫いて。
簡素だけど燻製器が完成。
燻すよ~、超燻すよ~!
クマ肉も手に入ったことだし、試してみるしかないでしょ。
銀子も首を捻りつつも、拍手して応援してくれてる。
うん。きっとよく分かってないね。
薪を設置して、火を点けてくれるように頼む。
ボクも一応、『爆裂針』と『火炎針』を持ってるけど、使い勝手が悪いんだよ。
下手したら自分が燃える。
なので、火の管理は銀子が頼りだ。
あと燻製には、チップとやらが必要なんだよね。
よく分からないので、リンゴで代用。
桜チップとか聞いたことあるけど、そんな木は見掛けてないからねえ。
適当に切って混ぜればいいでしょ。
いい匂いがつきそうだし、なんとなくお肉が柔らかくなりそうな気がする。
材料はたっぷりあるので失敗しても問題なし。
死んだクマは文句を言うかも知れないけど、襲ってきた方が悪いんだしね。
残った肉も適当に焼いて持っていくようにしよう。
あ、クマの手って高級食材だっけ?
なんだか毛むくじゃらで美味しそうじゃないけど。
爪の方が凄いね。
加工したら武器になりそうだし、ボクも角みたいに装備してみようかな。
少しは強そうに見えるかも。
まあ、時間に余裕があったらだね。
午後にも、やるべきことは山ほどある。
基本的にはスキルの検証や、鍛錬の時間だね。
細かな作業をしたり、ダッシュを繰り返したり、魔術の練習をしたり。
毎日やってたおかげで、それなりに成長してきた実感はある。
まずは基礎的な身体能力を伸ばしてくれる、『器用』や『耐久』や『俊敏』。
これらのスキルが伸びて、上位の『精巧』、『頑健』、『疾風』がそれぞれ解放された。ステータス表記されてるのは一部だけどね。
魔術も徐々に使いこなせるようになってきてる。
相変わらず『魔術知識』は読めない。
『鑑定知識』を使っての言語学習も遅々としたものだ。
だけど大切なのは、結果への明確なイメージ力だからね。
そこさえ固めておけば、魔力自身が複雑な術式も描こうとしてくれる。
まあ、ゼロから魔術を作り出してるようなものだね。
魔力量には自信のあるボクだけど、消耗が激しくて苦労させられてる。
それでも幾つか成功はしたよ。
一番大きいのは、『土木系魔術』で大きな穴を掘れるようになったことだね。
これで野営地の周囲を囲んでる。
夜の安全度が増して、少しは落ち着いて眠れるようになった。
ついでに、『罠師』なんてスキルも上昇してきた。
あと面白いのは『精霊感知』だね。
称号『エルフの友』を貰った時に、一緒に解放されたスキルだ。
妖精みたいなものが見えるワケじゃないけど、大地とか樹木とか風とか、そこに流れる力みたいなものが感じられるようになった。
魔力と似ているけど違う。
木に毛針を刺したりすると、怒ってる感じを受けたりもする。
だからって、何が起こるでもないけど……、
精霊というよりは、精霊力なのかなあ?
だとすれば、魔力みたいに扱える?
もしくは、『操作』で干渉できるのか……要検証だね。
さて、燻製器の様子も見ながら鍛錬再開。
と思ったところで、銀子が抱きついてきた。
さっきまで魔術の練習をしてたのに、どうやら飽きたみたいだ。
仕方ないので相手をしてやる。
ただし、鍛錬にもなるようにね。
『浮遊』を使いながら、前足を上げて銀子と押し合いっこをする。
むむむ、今日こそは……銀子がちょっと本気を出しただけで転がされた。
この毛玉体、肉体としての能力は本当にへっぽこだね。
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魔獣 オリジン・ユニーク・ベアルーダ LV:6 名前:κτμ
戦闘力:2780
社会生活力:-2280
カルマ:-3990
特性:
魔獣種 :『九拾針』『高速吸収』『変身』『浮遊』
魔導の才・極:『操作』『魔力大強化』『魔力集中』『破魔耐性』『懲罰』
『万魔撃』『加護』『無属性魔術』『錬金術』『生命干渉』
『土木系魔術』『闇術』『高速魔』
英傑絶佳・従:『成長加速』
手芸の才・参:『精巧』『栽培』『裁縫』
不動の心 :『極道』『我慢』『恐怖大耐性』『静寂』
生存の才・壱:『生命力大強化』『自己再生』『自動回復』『激痛耐性』
『猛毒耐性』『物理大耐性』『闇大耐性』『悪食』
知謀の才・壱:『鑑定』『沈思速考』『記憶』『演算』『罠師』
戦闘の才・壱:『破戒撃』『回避』『強力撃』『威圧』
魂源の才 :『成長大加速』『支配無効』
共感の才・壱:『精霊感知』『危機感知』『五感制御』
魔眼の覇者 :『大治の魔眼』『死毒の魔眼』『混沌の魔眼』『衝撃の魔眼』
『破滅の魔眼』
閲覧許可 :『魔術知識』『鑑定知識』
称号:
『使い魔候補』『仲間殺し』『悪逆』『魔獣殺し』『無謀』『罪人殺し』『戦士』
『悪業を積む者』『根源種』『善意』『エルフの友』
カスタマイズポイント:460
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