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21 作戦名LO


 夜の帳が下りた。

 辺りはもう完全に暗闇だ。

 月や星の明かりも、生い茂った枝葉に遮られている。

 だけどボクの眼は、しっかりと風景を捉えていた。


 『暗視』スキルとかは持ってないんだけど、不思議と見えてるね。

 魔獣の特性か、それともベアルーダ種だからなのか。

 どっちにしても有り難い。

 今回の作戦では、暗闇での正確な行動が必須だからね。


 男たちは最低限の野営道具しか持っていなかったようで、全員が質素な毛布に包まっているだけだ。

 焚火もつけていたけど、食事が終わると消していた。

 幼女は薪と一緒に集めた葉っぱを被って横になってる。毛布は与えられていない。


 はあ。本当に酷い連中だね。

 あの子がいなければ、とっくに遠距離から『死毒の魔眼』をお見舞いしてる。

 いまは巻き込む恐れがあるから使えないけどね。

 でもまあ、どっちにしろ、あの男どもに容赦は無用ってことだね。

 それじゃあ始めようか。

 作戦名、LOを。


 ちょうど見張りで一人だけ起きていた男が立ち上がった。

 交代の時間かと思ったけど違う。

 近くの木陰へ向かう。トイレだね。

 可能性は薄いと思ってたけど、これは正しく絶好の機会だ。

 一人(lonely)になった(otoko)をヤッちゃおう作戦の始まりに相応しい。


 男が木陰に入った直後、『死毒の魔眼』発動!

 黒靄に顔を包まれた男が悲鳴を上げる。

 声も上げられずに即死、っていうのが理想だったけど、まあ仕方ないか。

 ほんの数秒だけ悶えた男は、そのまま事切れる。


《特定行動により、称号『罪人殺し』を獲得しました》

《称号『罪人殺し』により、『懲罰』スキルが覚醒しました》

《条件が満たされました。称号『戦士』を獲得しました》

《称号『戦士』により、『強力撃』及び『威圧』が覚醒しました》

《条件が満たされました。称号『悪業を積む者』を獲得しました》

《称号『悪業を積む者』により、『極道』スキルが覚醒しました》

《スキル『我道』は上位スキル『極道』へ統合されます》


《総合経験値が一定に達しました。魔獣、ティニィ・レア・ベアルーダがLV9からLV10になりました》

《各種能力値ボーナスを取得しました》

《カスタマイズポイントを取得しました》

《条件が満たされたため、魔獣、ティニィ・レア・ベアルーダは進化可能です》

《進化先の候補が複数あります。次の中から選択してください。

 エンジェリック・ベアルーダ

 デモニック・ベアルーダ

 カオティック・ベアルーダ》



 なんかえらいことになった。

 ああもう。とりあえず、全部保留で。

 ツッコミが追いつかない。

 なにより、いまは構ってる場合じゃない。


 一人目を仕留めたのはいいけど、悲鳴を上げられたおかげで残りも目を覚ましちゃったからね。

 男二人がなにやら喚きながら明かりを灯す。

 幼女も起きたけど、こっちは身を縮めて震えているだけだ。

 可能なら、男どもだけ誘い出したいところだけど―――、


 あ、男の一人が幼女を強引に立たせた。

 腕を捻り上げて、首筋に剣を押し当てる。

 叫んでる言葉は分からないけど、これたぶん人質のつもりだよね。

 うむむ、最悪の展開になっちゃったなあ。

 気づかれずに一人ずつ始末するつもりだったのに。

 あ、一人目の死体も見つけられた。

 驚いた顔してるね。

 まあ顔のほとんどが崩れた死体見れば、戦い慣れた人間でもそうなるか。

 動揺してる内に、こっちは次の作戦に移らせてもらおう。

 プランBは常に用意しておく。生き残るための鉄則だよ。


 ってことで、3番から5番、起動。

 奴等が野営の準備をしている間に、こっちも罠を設置しておいたんだよ。

 ツタを組んだ簡単な物だけどね。

 殺傷力はなくて、木枝や草むらが揺れるだけ。

 それでも注意を引くには充分だった。


 揺れる草むらを凝視する男どもの背後から、ボクはこっそりと近づく。

 まずは幼女を人質に取っているゲス野郎から。

 後頭部へ向けて、『毒針』を全力射撃。

 『破戒撃』と、取ったばかりの『強力撃』も乗せてやる。


 わぁい。根元まで突き刺さったよ。

 何本かは貫通までしてた。

 ボクの毛針って、いまの長さは二十センチ以上もあるんだよね。

 そんなのが十本単位で根元まで刺されば、そりゃあもう即死だよ。

 今度は悲鳴も上げずに倒れる。


 あ、でも幼女が小さく悲鳴を上げた。

 残った男一人が振り向く。

 ボクと目が合った。


 だけど残念。そっちは風下なんだ。

 距離もひとまず安全なくらいには離れてるね。

 『死毒の魔眼』、発動。

 ついでに『混沌の魔眼』と、『毒針』&『破戒撃』&『強力撃』、あとなんだか分からないけど『懲罰』も使ってみる。

 いまのボクが撃てる最強コンボだね。

 お? 毛針が白く光った。

 魔眼を喰らって動きを止めた男を、容赦なく穴だらけにしていく。

 あっさりと、最後の一人も死体になった。


《行為経験値が一定に達しました。『死毒の魔眼』スキルが上昇しました》

《行為経験値が一定に達しました。『混沌の魔眼』スキルが上昇しました》

《行為経験値が一定に達しました。『毒針』スキルが上昇しました》

《行為経験値が一定に達しました。『射撃』スキルが上昇しました》

《行為経験値が一定に達しました。『破戒撃』スキルが上昇しました》

《行為経験値が一定に達しました。『強力撃』スキルが上昇しました》

《行為経験値が一定に達しました。『危機感知』スキルが上昇しました》


《総合経験値が一定に達しました。魔獣、ティニィ・レア・ベアルーダがLV10からLV15になりました》

《各種能力値ボーナスを取得しました》

《カスタマイズポイントを取得しました》

《特殊条件が満たされたため、魔獣、ティニィ・レア・ベアルーダは進化可能選択肢が増えました》

《進化先の候補が複数あります。次の中から選択してください。

 エンジェリック・ベアルーダ

 デモニック・ベアルーダ

 カオティック・ベアルーダ

 オリジン・ユニーク・ベアルーダ》



 またえらいことになった。

 ああ、これはスキル検証が大変だね。

 それよりも進化先が増えたってどういうこと?

 てっきりレベル10で打ち止めだと思ったんだけど、それ以上にアップしたから、特殊進化が可能になったと?


 ん~、よく分からないね。

 きっと考えても答えは出ない。

 いまは目の前の問題から解決しよう。

 とりあえず邪魔者は始末した。後は幼女だけだ。


 って、こう言うとこっちが悪役みたいだね。

 違うよ。『極道』とか持ってるけど、悪いことするつもりはないからね。

 それに、連中はやっぱり悪人だったっぽい。

 称号で『罪人殺し』なんて手に入ったからね。


 さて、それじゃあ幼女に目を向けようか。

 涙目になってへたりこんで震えてる。

 地面がちょろちょろと濡れてるのは、えっと、見なかったことにしてあげよう。


 やっぱり怖がらせちゃったか。

 とりあえず落ち着けるためにも、邪魔な死体の片付けから先にしておこう。

 まずは幼女から見えない森の影まで運びます。

 次に、毛針を刺します。

 『吸収』します。


《行為経験値が一定に達しました。『吸収』スキルが上昇しました》

《条件が満たされました。『高速吸収』スキルが解放されます》


 死体は灰みたいになって散っていって跡形も残らない。

 これ、完全犯罪に使えるね。

 そんなことする予定はまったくないんだけど。

 あ、でも装備や服だけは残ってる。使えるかも知れないから回収しておこう。


 元の場所に戻ると、まだ幼女は座り込んでいた。

 ボクの姿を見て、やっぱり怯えたみたいに肩を縮める。

 幾分か落ち着いたみたいだけど、どうしようかねえ。

 とりあえず、放置して帰るって選択肢はないね。

 ボクが連中を殺したおかげで、この子は一人で放り出されるワケだから。

 最低限、相手の行動を待つくらいはする。

 それくらいは人として当然だよね。

 毛玉だけどさ。


 で、ボクは幼女の前に腰を下ろす。

 腰なんて何処か分からないけど、とにかく座る。

 足を畳んで、それこそボールみたいに。

 レベルアップのおかげか、いまのボクはバスケットボールくらいの大きさがある。

 その黒毛玉と、幼女が座り込んで向き合ってる形だね。

 夜の薄暗い森の中で。

 傍目から見たらシュールだろうね。


「…………a%」


 幼女が小さく口を開いた。

 ん~、いつまでも幼女っていうのも妙だね。

 銀髪エルフっ子だから、銀子でいいか。


「t$O+к ̄YΟ?」


 銀子はまた何か呟く。やっぱり言葉は分からないね。

 ボクはとりあえずゴロゴロしておく。

 敵意は無いアピールだ。

 そんなボクを眺めて、銀子は目をぱちくりさせていた。


「……aλΓ&u」


 また銀子は呟くと、そっと手を伸ばしてきた。

 涙で濡れていた小さな手で、ボクの頭を優しく撫でる。

 こうしてボクは、異世界ではじめて人に触れた。



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魔獣 ティニィ・レア・ベアルーダ LV:15 名前:なし

戦闘力:1250

社会生活力:-2320

カルマ:-3450

特性:

 魔獣種   :『毒針』『高速吸収』『変身』『浮遊』

 魔導の才・極:『操作』『魔力大強化』『魔力集中』『破魔耐性』『懲罰』

 英傑絶佳・従:『成長加速』

 手芸の才・参:『器用』『栽培』

 不動の心  :『極道』『我慢』『恐怖大耐性』『静寂』

 生存の才・壱:『生命力大強化』『自己再生』『自動回復』

        『激痛耐性』『猛毒耐性』『物理大耐性』

 知謀の才・壱:『鑑定』『沈思速考』

 戦闘の才・壱:『破戒撃』『回避』『強力撃』『威圧』

 魔眼の覇者 :『治癒の魔眼』『死毒の魔眼』『混沌の魔眼』

 閲覧許可  :『魔術知識』


称号:

『使い魔候補』『仲間殺し』『悪逆』『魔獣殺し』『無謀』『罪人殺し』『戦士』

『悪業を積む者』


カスタマイズポイント:300

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