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毛玉転生 ~ユニークモンスターには敵ばかり~ Reboot  作者: すてるすねこ
第4章 大陸動乱編&魔境争乱編
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10 循環点の不死鳥


 聖教国への侵攻は終わった。

 後始末も色々と大変そうだった。国内では虐げられている魔物っ子とかもいるみたいなので、そちらの救助もメイドさんたちにお願いしておく。

 可能な限りは、人助けもしていいだろう。

 細かいことはサガラくんとマリナさんに任せて、ボクは一足先に島へ戻った。


 『循環点』の魔獣も探すけど、直接に出向く必要はない。

 偵察用茶毛玉はすでに量産できているので、何処かにいる魔獣一体だって見つけられる。

 そんなのが、本当にいればの話だけど。


『三体目まで見つかったってことは、あながち間違ってないのかも』


 自室のソファに転がりながら、ぼんやりと思考を巡らせる。

 ボクの目の前では、ひとつの氷像がテーブルに置かれていた。

 鳥型の氷像―――というより、白銀色の鳥が氷漬けにされている。


『けっこう手強かったんじゃない?』


「う、うん。街が丸ごと凍らせられたりして……潰すのも、大変だったよ」


 大貫さんはソファの裏に隠れたまま、頭の先をちょこっと覗かせた。

 氷像は、その大貫さんが持っていた物だ。

 正確には、自宅の奥で眠っていた。

 元はもっと大型で、氷を操る凶悪な魔獣だったそうだ。


 先代魔王と友好関係にあって、なにやら契約を結んでいた。魔王が一部地域の魔獣を保護する代わりに、そのアイスバードが力を貸すといった契約だ。

 そして大貫さんが先代魔王を討とうとした後、アイスバードは襲ってきた。

 だけど結末は返り討ち。

 小型の鳥になって、そのまま氷漬けの封印を施されたという訳だ。


「えっと、話さなくてごめんね。そんな重要な魔獣だとは思わなくて……」


『気にしてないよ。ボクも、赤鳥と青鳥を放置してたし』


「そ、そう? えへへ、やっぱり五十鈴くんは優しいね」


 大貫さんは顔を手で覆って、くねくねと身悶えしている。

 よく分からない反応だ。でも楽しそうだから放っておこう。


『これ、どうしようか?』


「好きになさってよろしいかと。たとえ暴れたとしても、無力化は容易かと推察します」


 ボクは少し考えてから、一号さんの助言に従うことにした。

 まだサガラくんにもザイラスくんにも、この銀鳥については話していない。

 情報を明かすかどうか、それを決めるためにも、直接対話してみるのは悪くないだろう。


『大貫さん、封印を解いてくれる?』


「う、うん、分かった。任せて」


 炎で焙ろうかとも思ったけど、封印した当人に頼んだ方が確実だ。


 ふと思ったけど、ボクの魔眼は炎系って無いんだよね。

 衝撃、闇、氷、雷、治癒、災禍、重力、静止、死、破滅―――。

 色々揃っているけど、万能とは言えない。

 っていうか、破壊力に偏りすぎている気がする。


 もうちょっとこう、融通が利くというか、普段使いに便利な魔眼も欲しい。

 例えば……お菓子が出てくる魔眼とか?


「お茶と、なにか摘まめる物をご用意致しましょうか?」


 あ、はい。お願いします。

 一号さんに考えを読まれた? 表情に出てたかな? 毛玉なのに?

 まあ、メイドさんが優秀なのは良いことだ。


「えっと、解けたよ。邪魔だったら、またすぐに氷漬けにするね」


『ありがとう。助かる』


 ちょっと考え事をしている内に、銀鳥が目覚めていた。

 氷が溶けたばかりなので、全身ずぶ濡れだ。

 メイドさんに目配せして、タオルで拭いてもらう。


 銀鳥は大人しくしていた。だけど、きょろきょろと首を回して辺りを窺っている。

 なんだか普通の鳥っぽい仕草だ。

 だけどボクの後ろ、頭だけ見せている大貫さんの方へ目を向けると、大きく目を剥いた。


「…………」


 鳥の表情はよく分からない。だけどなんとなく知性は滲み出ている。

 赤鳥や青鳥と違って無口。

 でもたぶん、話は通じる相手なのだろう。


 少なくとも、自分を倒した相手のことは覚えている様子だ。

 巨大鳥だった頃の記憶は、何処まで詳しく残っているか不明だけど―――。


『こんにちは』


 銀鳥が、ビクリと震えた。

 驚いたみたいだ。文字を操る毛玉を前にしたら、まあ当然の反応か。

 これでまず話が通じるのは確定。

 さて、面白い情報を得られるのを期待しよう。







 テーブルの上で、三羽の鳥が向き合っている。

 赤青銀と、どれも派手な色合いだ。

 大きさは赤鳥が一番かな。最近は青鳥も少し成長してきている。

 封印されていたからか、銀鳥はまだ小さめだ。


「こうして三羽も集まるのは、いつ以来かにゃ?」


「さてな。少なくとも百年以上であろう」


「……百四十五年前」


 銀鳥は控えめだけど、しっかり者らしい。

 記憶も、三百年くらい前までのは頭に残っているそうだ。

 鶏が三歩で忘れるのに比べたら、かなり凄いんじゃないかな。


「まあ、集まったからどうだという話ではあるが」


「青っちは冷めてるにゃ。折角だから騒ぐにゃ。あたしらが集まれば……なんとなく凄い気がするにゃぁ?」


「…………」


 この三羽が、ただの魔獣じゃないのは確実だろう。

 だけどこの世界の歴史は、少なくとも千年以上続いている。

 各国の歴史書にもそう記されている。


 そして彼女たちはいつから存在しているのか、そちらは不明だ。

 遠すぎる記憶なので、銀鳥も覚えていなかった。

 ただ、もう一羽いることだけは判明した。


「あいつもいれば、全員が揃うにゃ?」


「そうだな……堅物であったゆえ、己の領域からは動かぬであろうが」


「…………」


 鳥の同窓会を眺めながら、ボクはクッキーを齧る。

 メイドさんが淹れてくれたお茶も、相変わらず美味しい。

 シンプルだけど甘めのクッキーには、ストレートの紅茶がよく合う。


 カップを口へ運ぶ毛玉。

 自分の姿を小毛玉を介して見てみると、なかなかにシュールだ。

 まあ、それはともあれ。


『結局、分からないことだらけだ』


「ですが、彼女たちに利用価値があるのは間違いないようです。あるいは、この世界の根幹に繋がるかも知れません」


 大袈裟な台詞、とも言い切れないか。

 それがどんな意味を持つのか、どう扱えるのか、さっぱり分からないけど。


「そうだにゃ! あたしらは凄いのにゃ!」


「うむ。もっと敬ってもよいのだぞ?」


「……毛玉」


 赤鳥と青鳥が、ボクの上に乗って囀る。

 銀鳥も探るように嘴で突ついてきた。


 うん。やかましい。毛先で突き返して、床へ放り捨てる。

 また騒ぎ出したけど無視しておこう。


『残る一体も見つかるかな?』


「大陸の東方を中心に、引き続き捜索を行ってみます」


 今度はたぶん、ロックバードか。

 もしも見つけたら、ボクが出向いて仕留めるべき?

 だけどサガラくんにも一体くらい任せた方が、釣り合いが取れる気もする。


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