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毛玉転生 ~ユニークモンスターには敵ばかり~ Reboot  作者: すてるすねこ
第4章 大陸動乱編&魔境争乱編
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08 循環点の獣


 『循環点』の魔獣―――。

 ザイラスくんがそう呼んでいるだけで、正式な名前ではないそうだ。


 この世界の大地深くには、魔力が川のように巡っている。

 人の目には触れないが、そこには死した魂も流れ込んで、一点へ辿り着く。

 終着点は、恐らくはシステムさん。

 魂は魔力へ返還され、魔力はまた魂に力を与えて、循環を繰り返す。

 その循環の基点になる魔獣が存在する、とザイラスくんは語った。


「そんなの、どうやって知ったの?」


「帝国には古い書物が保管されている。その中には、システムから与えられた『閲覧許可』によって得た、稀少な知識もあった。スキルの『常識』や『魔獣知識』……それらを読み進めると、世界の成り立ちにまで迫れる」


 言われてみれば、そんなスキルもあったね。

 語り口からすると、信憑性は高い話みたいだ。


「それで肝心の『循環点』の魔獣だけど……要するに、システムから大量の魔力が降りてくる存在みたいなんだ。上手くすればその力を利用できるし、システムへ働き掛けることも出来ると考えてる」


「話半分に聞いといた方がいいぞ。そんな魔獣がいたら、もっと暴れてるはずだ」


「温厚な魔獣かも知れないだろ」


「だとしても、人間に目をつけられるのは間違いねえだろ?」


 サガラくんの指摘も一理ある。

 大陸だと、人間が魔獣を狩り尽くす勢いだって聞いた。

 鳥類保護を訴えるつもりはないけど、あの二羽が研究材料とかにされるのは気持ちよくない。


「もしも見つけたら、ザイラスくんはどうするつもり?」


「可能なら、協力を頼みたいな。四体いるって話だから、一体くらいは話が通じるのがいてもおかしくないだろ?」


「そもそも一体もいない、って可能性も高いがな」


 サガラくんが茶々を入れると、委員長は眉根を寄せる。

 その反応からしても、自分の仮説に自信を持っているみたいだ。


 でも話を聞くと、その循環点の魔獣って、世界の四方にいるらしい。

 そうなると、この島に二体も集まってるのは理屈に合わない。


 あ、でも雷鳥の方は、昔からハーピーとかを守ってたって話だった。

 炎鳥の方は、元居た場所から引っ越してきたとか?

 あまり深く考えて行動するタイプじゃなかったし、有り得るかも。

 まあ、推測どころか憶測に過ぎないけど。


 詳しくは、後で確かめればいい。

 あの二羽がそんな偉そうな存在かどうかも、まだ分かっていないのだから。

 っていうことで、ザイラスくんに話を振ってみる。


「それっぽい鳥の魔獣なら、心当たりがあるよ」


「へえ、さすがは魔境の主。どこに居るとか分かるかな?」


「っていうか、倒した。不死鳥だった」


「……は? 不死鳥?」


「卵になったんだよ。で、またすぐに生まれた」


「ちょ、ちょっと待ってくれ。いま理解するから……」


「いまはボクに従ってて、赤と青の二体がいる」


「どういうことだい!?」


 ザイラスくんが慌てた声を上げる。

 マリナさんやサガラくんも、目を丸くしていた。


 まあさすがに、ボクも混乱を煽ったのは自覚している。

 でも毛玉が生きていける世界だし、そんなに驚かなくてもいいとも思う。

 不死鳥の一体や二体いても、そう不思議でもないんじゃない?







 例えば、ペットを飼っていたとする。犬でも猫でも鳥でもいい。

 同級生から話を持ち掛けられる。

 研究のために貸してくれ、と。

 解剖なんてしないから、と。

 それはもう当然のように断る。解剖とか言葉が出た時点でアウトだ。


 だけどまあ、ザイラスくんは只の同級生じゃない。

 頭の良い同級生だ。

 ボクにとっても何かしらの利益があるかも知れない。なので、


「見るだけなら」


 そういう条件で、赤鳥と青鳥を籠に入れて連れてきた。


「酷いニャ! あたしらを売ったニャ!」


「貴様、それでも我らの主か!?」


 ピーチクパーチクうるさい。いいじゃん、見るだけなら減らないし。

 どうせ放っておいても、子供と遊ぶくらいしか役に立たないし。


「不死鳥かどうかは分からないけど……でも確かに、見たこともない鳥だな。炎と雷を操るっていうのも文献と一致するし、あとは魔力の流れを探って……」


 ザイラスくんは興味深げに目を光らせている。

 ひとまず手を出すつもりはない様子だ。

 でも念の為に、小毛玉を監視に置いておく。


 新たに進化してから、随分と小毛玉の射程が延びていた。

 この島と大陸を隔てても大丈夫なくらいに。

 詳しくは、これからさらに確かめる予定だ。


「んじゃ、俺は聖教国へ向かうぜ」


 調査を進めている内に、サガラくんは自分の目的を果たすつもりらしい。

 ついでに、他の『循環点』の魔獣を探す。

 シュリオン聖教国は大陸の東側にあって、僅かながら未開領域もあるそうだ。

 文献によれば、大陸の東端と北端にも、大きな鳥型魔獣がいる。


「一応、魔王への睨みも利かせたからな。帝国への義理も果たしたぜ」


「ここに来たのって、そういう意味もあったんだ」


「ああ、黙ってて悪かったな。勇者って面倒くせえんだ」


 サガラくんが渋い顔をする。

 だけど口に出したってことは、魔王である大貫さんと敵対するつもりはないのだろう。いまのところは、と条件はつくとしても。


「ボクは気にしてないよ。たぶん、大貫さんも」


 言いながら、部屋の窓へ目を向ける。

 ちらりと覗く影が見えた。話している間も、ずっと視線は感じていた。


 ここ、二階なんだけどね。

 まあ今更驚くことでもない。


「……アイツ、この前まで世界征服目指してたんだよな?」


「ま、まあ、いいんじゃない? 今度のはいくらか平和的だし?」


 ボク以外は驚いているけど、気にしないでおく。


「それよりも、大陸へ行くなら良いものがあるよ」


 つい最近になって完成したものだ。

 是非、勇者一行に人柱……もとい試してもらいたいと企んでいた。


 以前に公国を訪ねた際に、ヴィクティリーア嬢ことロル子の先生に会った。

 色々と話をしたけど、その中に転移魔法の研究に関するものもあった。

 失敗した研究だと言っていたので、使えれば便利だなあ、と思った程度だった。

 でも資料を見せてもらい、それをメイドさんたちに託した。


 元々、メイドさんたちは魔導技術に秀でている。

 淡い期待だったけど、そう時間を掛けずに試作品を作ってくれた。

 つまりは、転移装置。

 それはすでに試作品を通り越して、実用段階に入っていた。


「こっちで座標を入力すれば、受け側に設置してなくても飛べる。大陸までも一瞬で行き来できるよ」


 ざっと説明をする。

 と、また三人が揃って目を見開いた。


「……詳しく教えてくれ」


 一番食いついてきたのは、やっぱり委員長だった。


「ああでも、こっちの不死鳥も気になるんだよな。どっちから先に……くそっ、計画の練り直しじゃないか!」


 まあ転移装置が革新的な技術であるのは否定しない。

 興味を持つのも当然だろう。

 ただし、まだ人間での実験はしていないんだけどね。



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