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毛玉転生 ~ユニークモンスターには敵ばかり~ Reboot  作者: すてるすねこ
第4章 大陸動乱編&魔境争乱編
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06 新たな力?


《進化が完了しまし―――gぅいおrhxomp;:laるgふぃs》


 パチリと意識が覚醒する。

 一瞬、電流が走ったような感覚が襲ってきた。


 痛みはない。不快感も。スッキリとした目覚めだ。

 だけど真っ暗だ。視界は暗闇に覆われている。

 いや、暗闇というか、黒い?


 ……ああ、分かった。もさもさ&ふかふかのコレは、アレだ。

 ボクの毛がとんでもなく伸びてるだけだ。

 部屋を埋めるほどに黒毛が伸びまくってる。

 黒毛の全体にまで感覚が届いてるから、そう理解できた。


 それだけ長いこと眠っていた、って訳でもないみたいだ。

 原因はたぶん、溢れる魔力。黒毛の一本一本まで魔力が満ちている。

 だから感覚も行き届いてる。


 うん、なんとなく状況は理解できた。

 とりあえず大きな心配は要らないらしい。

 部屋の隅で黒毛に埋まっている大貫さんも、幸せそうに涎を垂らしてるし。


 外の様子も窺える。

 幼ラウネたちの遊んでいる声や、赤鳥や青鳥のどうでもいい言い争いも聞こえた。

 どうやら随分と、感覚が鋭くなっているみたいだ。


 ボク本体の方は―――、

 外見に大きな変化は無いのかな?

 以前と同じく、バスケットボールサイズの毛玉だ。

 小毛玉も数体、部屋を埋める黒毛の中にいるのが分かる。


 とりあえず、この部屋から出るとしよう。

 長すぎる毛は、適当に揃えるように切り落とす。

 毛針を発射する応用で簡単だった。いまのボクは、自身を完璧にコントロールできる。なんとなく、そんな感じがする。


 余計な毛を落として、部屋の扉を開ける。

 もさっ、と黒い塊が溢れ出た。


 奇妙な光景のはずなのに、そこで待ち構えていた一号さんは平然としている。

 相変わらず、静かな態度のまま一礼してくれた。


「おはようございます、ご主人様」


『うん。おはよう』


 ボクの声が出ないのも変わらず。でも魔力文字が使えるから問題はない。


「え? 五十鈴くん、起きたの?」


 部屋の中から、大貫さんが驚いたような声を上げた。

 もさもさと、まだ室内に詰まっている毛が蠢く。

 大貫さんが出てこようとして、上手く動けないでいるらしい。

 そちらは放っておいてよさそうだけど―――。


「ご主人様、白くなられましたね」


 え? 白く?

 ボクは内心で首を傾げる。見た目は黒い毛玉のはずだ。

 でも一号さんには白く見えている?


『黒じゃなくて、白?』


「はい……いいえ。どちらにも見えるようです。光彩が移り変わる、というのも少々異なりますが、白と黒の両方の色を纏っておられます」


 冷ややかな眼差しに、微かな困惑が混じっていた。

 どうやら奇妙な現象が起こっているらしい。

 それを確認するためにも、ボクはあらためて自身を見つめる。

 そして、ステータスを呼び出す。



-------------------------------

魔眼??ネ?甲?? バル・バロール  LV:??? 名前:κτμ


戦闘力:222800+αΣ8E

社会生活力:-3

カルマ:-l; ptdfcgvkb???

特性:

 Θぐp;眼???

-------------------------------



 バグっていた。

 ……どうしよう、これ?







 考えても分からない。なので、放置。

 ステータスのことはひとまず頭から離して、ボクは席に着いた。

 いまは食事だ。お腹が空いていた。


「ご主人様は十日も眠っておられました」


「あのね、最初は何も起こらなかったんだよ。でも三日目くらいから、一気に毛が伸び始めて……」


 一号さんと大貫さんが、眠っている間のことを話してくれる。

 まとめると、大きな事件は起こっていない。

 偶に魔獣がやってくるくらいで、この拠点は平穏だったそうだ。


 胃に優しいシチューを味わいながら、十日分の報告を聞く。

 まあ相変わらず、何処に胃があるか分からない身体で―――。

 ふと思いついた。『変異』を発動。


「ぁ……五十鈴くん!」


 ソファの裏から、嬉しそうな声が上がった。

 毛玉でもボクだと見抜いた大貫さんだけど、元の姿の方が好みみたいだ。

 いまも部屋に大量の写真を張ってるのも知ってる。


 ボクは気にしないけど、メイドさんたちが困ってた。掃除がしにくいって。

 一枚でも位置が変わってたりすると、凄く怒るから―――っていまは関係ないか。


「うん……魔力が増えたおかげかな。こっちの姿でいても消費は感じない」


「だ、だったら、ずっと人間の姿でいられるの?」


「無理ではないけど、寝る時とかは毛玉の方が楽そうだよ」


 ソファに座り直しながら、食べかけだったパンを手に取る。

 毛玉体にも慣れたけど、やっぱり手があると便利だ。

 味覚はあんまり変わらない。

 でもゲテモノ食べる時は毛玉の方がいいかな。心情的に。


 いや、そもそもゲテモノを食べなければいいんだけど。

 もう生活も安定してきたし、そんな状況に追い込まれないことを祈ろう。

 この世界に神様がいるのかどうか知らないけど。

 システムさんは祈っても一切構ってくれなさそうだ。


「気になるのは、システムさんのバグか……」


「え? バグって?」


 思わず呟いていた。大貫さんが不思議そうに問い掛けてくる。


「ステータス画面が変なのになってる。文字化けってやつだね」


「そうなの……? こっちは普段通りだよ?」


「ボクだけってことか。実害が無ければいいんだけど」


 どっちにしても、後で確かめてみるつもりだ。

 進化して、ボクの力がどうなったのか。


 とりあえずいま分かっているのは、弱体化はしていないこと。

 魔力量は増えているし、小毛玉も扱い易くなっている気がする。

 小さな毛玉が空中を舞う動きは、以前よりも鋭い。

 見た目は、心なしか大きくなったくらい?


 あとは、ボク自身の見た目だ。黒なのか白なのか。

 大貫さんには黒くてふさふさの毛玉に見えている。

 でもメイドさんたちには、黒にも白にも見えるらしい。

 どちらでもある、ってことなのかな。


 一番重要なのは、主力武器である『魔眼』がどうなってるかだけど―――。

 少なくとも、この場で発動させるのはやめておこう。

 色々と巻き込んじゃうと危険だから。

 魔眼もまた強力になっているのも、なんとなく予感できる。

 軽く目蓋を伏せるだけでも、瞳の奥で渦巻く魔力を感じ取れた。


 勇者が苦戦した邪龍軍団とも、いまなら正面から戦える気がする。

 まあ、過信は禁物だけど。


「委員長……ザイラスくんあたりから、何か連絡はない?」


「現状ではこれといって……いえ、少々お待ちください」


 軽く一礼してから、一号さんは目を伏せる。

 どうやら他のメイドさんから念話が入ったらしい。

 ややあって、一号さんはまたこちらへ目を向けた。


「失礼致しました。そのザイラス様からご連絡です。“勇者”を含めて、会談の場を持ちたいそうです」


 なんとも絶妙なタイミングだ。

 勇者が出てくるってことは、それだけ帝国の方が落ち着いてきた証拠だろう。

 こちらはまあ、用は無いけど興味ならある。


「この島に来るなら歓迎する。そう伝えて」


 こっちから出向くよりは時間を稼げるはず。

 念には念を入れて、勇者様を迎える準備を整えておこう。



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