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16 一人で立てた完璧な計画は大抵ロクなことにならない


 ミミズは強敵だった。

 まさか、死んでからも毒で苦しめてくれるとはね。

 え? 自爆だって?

 そんな過去は忘れたよ。

 過去は振り返らない。振り返りたくない。

 っていうか、そんな余裕も無いんだよね。


《行為経験値が一定に達しました。『睡眠耐性』スキルが上昇しました》


 一晩中、毒と戦い続けてたからね。

 うん。徹夜なんだ。

 さすがに、ぐったりしてる。肉体的にも。精神的にも。

 『猛毒耐性』スキルが上がったおかげで、幾分か楽にはなったよ。

 だけど苦しいのは相変わらずだ。


《行為経験値が一定に達しました。『魔力圧縮』スキルが上昇しました》

《行為経験値が一定に達しました。『自然治癒』スキルが上昇しました》

《行為経験値が一定に達しました。『瞑想』スキルが上昇しました》


 いまは大きな木の根元に隠れてじっとしている。

 樹液を吸ったりしながらね。

 とにかく体力の回復を待つしかない。

 でも少しは余裕が出てきた。

 『瞑想』スキルも上がったおかげで、魔力回復を図りながら、同時に『治癒の魔眼』も発動できてる。


 『魔力圧縮』は文字通りのスキルだね。

 自身の内にある魔力を圧縮して、溜められる量を増やす感じだ。

 とりあえず、他に何もしなければ魔力切れの心配はなさそうだよ。

 樹液ばかりだと、先に体力が尽きそうだけどね。


 それにしても、こんなに苦しめられるって、どんだけ強い毒なんだろ。

 やっぱり『猛毒』以上ってことだよね。

 ミミズには防がれるのに。

 でも、毒自体が入るとミミズもあっさり死んでたね。

 ミミズは魔法系の敵だったから、そっち方面の抵抗力が高かったのかな。

 あくまで『魔眼』の毒だから、入るまでは魔法判定で、入ってからは生命力での判定とか?


 まあ、深く考えても仕方ないんだけどね。

 いまは他にすることがないんだよ。

 風邪ひいて寝込んでる気分だね。

 じっとしてなきゃいけないけど、退屈で何かしたいっていう。

 もちろん『治癒の魔眼』は発動させたままだし、気も抜けないんだけど。

 考える時間はあるし、あらためてステータスでも見てみようか。



-------------------------------

魔獣 ティニィ・レア・ベアルーダ LV:4 名前:なし


戦闘力:780

社会生活力:-1760

カルマ:-2750

特性:

 魔獣種   :『毒針』『吸収』『変身』『破戒撃』

 魔導の才・極:『干渉』『魔力大強化』

 英傑絶佳・従:『成長加速』

 手芸の才・参:『器用』

 不動の心  :『我道』『我慢』

 生存の才・壱:『生命力大強化』『自己再生』『激痛耐性』『猛毒耐性』

 知謀の才・壱:『高速思考』『待機』

 魔眼の覇者 :『治癒の魔眼』『死毒の魔眼』『混沌の魔眼』

 閲覧許可  :『魔術知識』


称号:

『使い魔候補』『仲間殺し』『悪逆』『魔獣殺し』


カスタマイズポイント:190

-------------------------------



 地道に戦闘力は上がってるね。

 でも相変わらず比較できる相手がいないから、高いのか低いのか分からない。

 社会生活力とカルマが下がってるのも平常運転。

 でも『悪逆』を取って以来、これといって派手なことはしてないのにねえ。


 あれかな? やっぱり『死毒の魔眼』?

 一発使うごとにカルマが下がっていくとか。

 まさか、ねえ?

 自然にも汚染を広げてるって考えると、有り得なくもないのが怖いところだね。


 だけど仕方ないと思うんだよ。

 現状、他に頼れる武器もないしね。

 宇宙人に攻められたら、正義の国アメリカだって核兵器を使うもんね。

 核に比べたら、毒なんて可愛いものだよ。


 しかしこうして見ると、ボクのスキル構成って頼りないね。

 魔眼対策をされたら簡単に詰みそうだ。

 鏡で反射されるとか、想像したくもない。

 だからといって物理攻撃を頼るのも、この毛玉体だと難しそう。

 辛うじて頼れるのは『破戒撃』くらいかな。

 要検討だなあ。


《行為経験値が一定に達しました。『情報把握』スキルが上昇しました》

《条件が満たされました。『鑑定』スキルが解放されます》


 お? おお!

 『鑑定』キタ! これで勝つる!?


 いや、待って。落ち着こう。

 これまでも何度かスキルには騙されてきたからね。

 ポイントの無駄使いさせられたり、自爆させられたり。

 喜ぶのはまだ早いよ。


 ん~、でも『鑑定』と言えば、異世界転生の王道スキルだしねえ。

 知名度、活躍度、信頼度、どれもナンバー1と言っても過言じゃない。

 例えば、武器屋で投売りされている伝説の剣を見つけたり。

 あるいは、敵の能力をすべて見抜いたり。弱点を的確に突いたり。

 そんな場面も期待できるワケだ。

 もっとも、毛玉が武器屋に入れるかどうかは別問題だけどね。


 ともあれ、試してみようか。

 まずは『鑑定』を使うのを強く意識します。

 次に、そこらの草木に目を向けてみます。


 …………。

 んん~……どれも同じに見える?

 あ、いや、よく見ると似てるけど違う雑草が混じってるのが分かる。

 葉っぱの筋が描いてる模様の違いで区別できるね。


 って、違う!

 欲しかったのはこんな能力じゃないよ!

 もっとこうさぁ、見ただけで対象の名前が分かるとか。

 せめて『草』とか『毒草』とか表示されるとか。

 ないのかなあ。ないよねえ。

 この世界のスキルって、そういう便利さとは異なってるんだもん。


 いやまあ、『魔眼』とか『変身』みたいな変り種もあるけどね。

 この『鑑定』は、自分の目利き能力が鋭くなるってところかな。

 まあ細かな部分に気づけるなら、役立つ場面は多いかもね。

 例えば、潜んでいる敵を発見したり。

 あ、枝毛発見。

 自慢のふわふわ黒毛が、ちょっぴりお疲れ模様だ。

 『自己再生』を使えば治るけど、いまは毒に抗うので手一杯だからね。


 あと、ちょっと気になってるモノがある。

 雑草に混じって、やたらと青々とした芽が出てるんだよね。

 そう、ミミズが育てようとしてた謎植物だ。

 たった一晩経っただけなのに、ボクと同じくらいの背丈まで成長してるのもある。

 まだ植物としては小さな部類だけど……、


 これ、ウツボカズラじゃない?

 ボクを食べようとした危険植物に似てる。

 どういうことだろ? まさか、ミミズと共生でもしてるのかな?

 それで、ボクが荒らしたから追ってきた、と?


 まあ、そんな経緯はどうだっていいや。

 問題は、こいつらを利用できるかどうかってこと。

 『干渉』で操れるとは思うけど、常時支配できるワケじゃないからね。

 意識が切れた時に、こっちを襲ってきたら困る。

 でもウツボカズラを味方にできたら、それなりの戦力にはなるんだよねえ。

 獲物も引き寄せられるだろうから……ん~……、


 毒針発射!

 全部まとめて駆除しちゃった。


《行為経験値が一定に達しました。『射撃』スキルが上昇しました》


 けっして考えるのが面倒になったワケじゃないよ。

 違うったら違う。

 だってこのサバイバル生活、不安要素を抱えられるほど楽なものじゃないよ。

 ミミズとの戦いだって、最後は楽だったけど、一歩間違えたら食べられてた。

 ウサギだって、たぶん一撃喰らったらボクは真っ二つにされる。

 っていうか、大抵のモンスター相手には一撃死できるんじゃないかな?

 難易度ルナティック。

 ヘルorヘブンってやつだね。

 そんな状況で、こっちを襲ってくるかも知れない植物を育てておきたくない。


《行為経験値が一定に達しました。『猛毒耐性』スキルが上昇しました》


 あ、これは素直に嬉しい。

 このまま毒が抜けるのを待てば、なんとか乗り切れそうだ。

 とりあえず、今回は、ね。


 回復を待ちつつ、次の方針も考えておこうか。

 ウツボカズラを見て思いついたこともあるんだよね。

 意思を持った植物は勘弁だけど、そうでないなら使えるんじゃないかな?

 植物って色々な種類があるからね。

 棘があったり、毒を持っていたり、溶解液を撒き散らしたり。

 そういったのを育てれば、拠点の守りに使えそうだ。


 別段、拠点に拘っているワケでもないよ。

 でも休める場所は必要だと思う。

 何も無いところで寝泊りするよりも、守られている場所の方がいいからね。

 それに、戦いにしても守りの方が有利だ。

 だいたい、”魔獣”なんていうケモノ相手に、肉体で立ち向かうのが間違ってる。

 もっと知恵を絞るべきだよね。

 ボクも魔獣だけど、中身は人間なんだから。


 何かしらの武器が欲しい。

 なるべくボクから離れた場所でも使えるような。

 そういった意味で、自動迎撃してくれるウツボカズラみたいな植物も利用できるといいんだよね。

 武器で守られた拠点を作る。

 それを当面の目標にしようかな。


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