02 毛玉vs異界門①
異界門を開いて経験値稼ぎをする。
一歩間違えれば世界の危機で、安全の保障なんて何処にもない。
我ながら、けっこう無茶な行動だとは思う。
でも大丈夫だとも思うんだよね。
異界門そのものは、『死獄の魔眼』で破壊できるのが分かっている。
まず危なくなったら、それで封鎖すればいい。
さらに予想外の事態が起きても、最終兵器である『勇者』も健在だ。
もうじき呪いも解けるって話だった。
そのためにボクが力を付ける必要が出てきたんだから、複雑な感じもするけど。
歴代の勇者でも、外来襲撃にはかなり対抗できていた。
それと比べても、サガラくんは格別に戦闘力が高いんじゃないかと思う。
転生して記憶があるっていうのは、大きなアドバンテージだから。
そんな勇者が控えているんだから、けっこう無茶してもいいじゃないかなあ、と。
もちろん可能な限りの安全確保はするけどね。
異界門を丸ごと移動させてるのも、安全対策の一環だし。
『この速度なら、丸一日もあれば充分かな?』
「はい。ご主人様の屋敷は元より、エルフ領にもすぐには危険は及ばないと推測できます。周辺海域の流れも穏やかです」
一号さんの解説を聞きながら、ボクたちは海の上を飛行している。
異界門が移動を始めたと知って、エルフや獣人たちは大騒ぎしていた。
そこで空を飛べるボクが様子を見に行く、となった訳だ。
長老二人はちょっと訝しげな目をしてたけどね。
だけど異界門が動き始めた時間には、ボクはベッドで眠っていた。
証拠は無い。実行犯のメイドさんたちも念入りに隠密行動をしていたし、疑っても確証は得られないはず。
あとはしっかり異界門の始末をすれば円満解決、になると思う。
まあ自分勝手なのは承知している。
危険な異界門が消えて良かった、と素直に喜ぶ人達ばかりじゃない。
エルフや獣人の中には、ずっと封印を見張っていたのを誇りにしている部分もあるんじゃないかな。
真実を知ったら、銀子だって怒る気がする。
美味しいものでもあげれば許してくれそうだけど。
どうするにしても、これから“起こす”外来襲撃を片付けてからだ。
『大貫さんも、本当に避難しなくてよかったの?』
「う、うん……心配してくれて、ありがとう」
恥ずかしそうに身を捩って、大貫さんは一号さんの背後に隠れる。
空中を飛んでるのに隠れるんだから、徹底してるね。
でも、心配か。どうなんだろ。
なんとなく出た言葉だったけど、相手は元魔王なんだから、むしろ戦力に数えた方がよかったのかな。
まあ、いいか。いざって時は頼らせてもらうってことで。
それよりも、ずっと異界門を追っていくのも疲れそうだ。
空を飛ぶボクたちの眼下で、異界門は氷漬けのまま海を進んでいる。
巨大な門を封印している氷ごと、魔法で移動させている形だ。流氷みたいなもので、速度は帆船を上回るくらいは出ている。
封印の魔法も活きたまま、下手に近づけばボクだって凍りつく。
だけどその点も計画通り。移動魔法の範囲は、封印よりも広めに取ってある。
『ずっと見張ってる必要もなさそうだね』
「少し降りて休憩なさいますか?」
一号さんの気遣いに頷いて、場所の用意をしてもらう。
海の上だけど、魔法で海水を凍らせれば足場になる。あとはその上に休憩所を作ればいい。
とはいえ、用意できたのは木製のスノコと簡素な天幕。
即席だから贅沢は言わない。氷と海風の冷たさを防いでくれるので充分だ。
まあボクは毛玉だから寒さには強いんだけどね。
そういえば夏毛とか冬毛とか生え変わったりするのかな。どうでもいいか。
「お茶の用意を致します。少々お待ちください」
『うん。温かいのをお願い』
大貫さんも誘って、ほっと一息つく。
これからの予定を話したり、ごろごろしたりと、しばらくは異界門の移動を待つ。
偶に海の魔物が襲ってきたりもした。
大きなタコとか、サメとか、竜っぽいのとか。
でも大貫さんが「邪魔すんじゃないわよ!」の一睨みで撃退してくれる。
平穏な旅路だった。
丸一日以上を掛けて、海の上を移動。
やがて小さな島が見えてきた。ちょっと飛べば一周できるくらい小さな無人島だ。
というか、ほとんど砂浜?
木も生えていないので、生き物がいないのは一目で分かる。
貝くらいは隠れてるかも知れないけど、ともかく目立ったものは見当たらない。
そこに異界門を上陸させる。
氷が溶けたら海に沈みました、なんてなったら困るから。
そのままでも海の上に浮かびそうな気がするけど。
だってこの門、ただ立ってるだけなのに倒れる気配もない。謂わば、基礎工事をしていないビルみたいなもの。
なんかこう、魔法的な力が働いてるんじゃないかな?
そういった細かい部分も調べたいところだけど、たぶん余裕は無いだろうね。
封印を解いた途端、向こう側からの侵攻が始まる。
繋がってる先がどんな異世界か知らないけど、対応が早いのは確かみたいだ。
以前も、ちょっと刺激しただけで妙な巨人が現れた。
何かをする前に凍りついたから、相手の目的も力も不明ではある。
それでもかなり好戦的なのは予想できた。
ずっと昔になるけど、この世界を侵略しようとしたのは間違いないみたいだ。
いまは事情が変わっている可能性はあるけど、油断は出来ない。
どっちにしろ、ボクの目的は“狩り”だ。
異界門を開いて、やって来る相手を狩り尽くす。
今更、この予定を変えるつもりはない。よし。
『それじゃ、準備はいいかな?』
「はい。全員、退避を完了致しました。緊急時の対処もお任せください」
一号さんと、その背中に隠れている大貫さんだけが残った。
もしもの時は、みんなで揃って逃げる予定。
そしてさらに万が一の時は、ボクを抱えて逃げてもらう予定だ。
それと、大貫さんには封印の破壊を担当してもらう。
封印の核は十二。それが異界門を囲う形で、氷の中を緩やかに移動している。
いっぺんに破壊すればいいんだけど、口で言うほど簡単な作業じゃない。
でもそこは元魔王だ。
全人類の敵とまで言われた力は伊達じゃない。
「そ、それじゃあ、始めるね。五十鈴くん、ちゃんと見ててね?」
『うん。見てるよー』
もじもじと身悶えしている姿は、威厳の欠片もないけど。
ともあれ、ボクたちは上空から異界門を見下ろす。
大貫さんが前に出て、じっと目を凝らした。
まずは十二の核の位置を把握する。常に魔力を発しているけれど、それを隠す術式も組み込まれているらしく、普通は核の存在を見つけることさえ難しい。
だけど完全に隠しきれるものじゃないし―――、
「ん……五十鈴くんのために、潰れろぉっ!」
大貫さんが『重圧の魔眼』を発動。
空間が歪み、轟音とともに、広範囲で氷が砕ける。
同時に、魔力の塊が押し潰され、やがて散らばるのが感じ取れた。
霧みたいに拡散する氷に混じって、魔力の光も爆発的に広がる。
キィン、と澄んだ音も聞こえた。
封印が破壊された。感覚でそう理解できた。
氷の破片が散らばる中で、異界門にも動きがあった。
開かれた扉の奥で、空間が蠢いているのが分かる。
『ありがとう。後は任せて』
「う、うん。役に立てたよね? 誉めてくれる?」
もちろん、と頷いている間にも、また事態は変化していた。
扉の奥から低い音が響いてくる。
前回は、まず黒い巨人みたいなのが現れたけど、今回は違うらしい。
低い音は羽虫が飛ぶようなそれ。
やがて耳障りなほど大きくなって―――大量の蜂の群れが飛び出してきた。
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魔眼 バアル・ゼム LV:35 名前:κτμ
戦闘力:89600
社会生活力:-9860
カルマ:-27820
特性:
魔眼皇種 :『神魔針』『絶対吸収』『変異』『空中機動』
万能魔導 :『支配・絶』『懲罰』『魔力超強化』『魔力集束』
『万魔撃』『破魔耐性』『加護』『無属性魔術』『錬金術』
『上級土木系魔術』『生命干渉』『障壁魔術』『深闇術』
『創造魔導』『精密魔導』『全属性大耐性』『重力魔術』
『連続魔』『炎熱無効』『時空干渉』
英傑絶佳・従:『成長加速』
英雄の才・弐:『魅惑』『逆鱗』
手芸の才・極:『精巧』『栽培』『裁縫』『細工』『建築』
不動の心 :『唯我独尊』『不死』『精神無効』『明鏡止水』
活命の才・弐:『生命力大強化』『不壊』『自己再生』『自動回復』『悪食』
『痛覚制御』『毒無効』『上位物理無効』『闇大耐性』
『立体機動』『打撃大耐性』『衝撃大耐性』
知謀の才・弐:『解析』『精密記憶』『高速演算』『罠師』『多重思考』
闘争の才・弐:『破戒撃』『超速』『剛力撃』『疾風撃』『天撃』『獄門』
魂源の才 :『成長大加速』『支配無効』『状態異常大耐性』
共感の才・壱:『精霊感知』『五感制御』『精霊の加護』『自動感知』
覇者の才・弐:『一騎当千』『威圧』『不変』『法則無視』『即死無効』
隠者の才・弐:『隠密』『無音』『暗殺』
魔眼覇皇 :『再生の魔眼』『死獄の魔眼』『災禍の魔眼』『衝破の魔眼』
『闇裂の魔眼』『凍晶の魔眼』『轟雷の魔眼』『重壊の魔眼』
『静止の魔眼』『破滅の魔眼』『波動』
閲覧許可 :『魔術知識』『鑑定知識』『共通言語』
称号:
『使い魔候補』『仲間殺し』『極悪』『魔獣の殲滅者』『蛮勇』『罪人殺し』
『悪業を極めし者』『根源種』『善意』『エルフの友』『熟練戦士』
『エルフの恩人』『魔術開拓者』『植物の友』『職人見習い』『魔獣の友』
『人殺し』『君主』『不死鳥殺し』『英雄』『竜の殲滅者』『大量殺戮者』
『扉の破壊者』
カスタマイズポイント:350
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