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毛玉転生 ~ユニークモンスターには敵ばかり~ Reboot  作者: すてるすねこ
第4章 大陸動乱編&魔境争乱編
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17 ロル子との別れ……?


 公国の王位には、第四王子が就くことが決まった。

 あんな子供で大丈夫なのかな?、と思わなくもない。

 だけど関係者で話し合っての結果だし、ボクは口出しする立場でもなかった。


 ロル子も納得していた。

 だから、いいんじゃないかなあ、と。


 そのロル子は、帝国へと赴いて留学の続きをする。

 公国での爵位を持ったまま、いずれは客将になるのを期待されていた。


「悪く言えば、また人質の立場ですわね。けれど良く言えば、帝国で身を立てる機会を得られたのですわ。この国のために働くことは、何処にいても出来ますもの」


『たくましいね』


 本当に感心する。ロル子の心意気は、大人だって顔負けだと思う。

 国ひとつを変えちゃったし。

 間違いなく、歴史に名を残したと言える。

 ボクも手伝いはしたけど、そうでなくとも結果は変わらなかったんじゃないかな。


「ともかくも、これで一段落ですわ」


『うん。あとは偉い人に任せればいいよ』


 いまボクたちは、お城にある私室でのんびりとした時間を味わっていた。

 時間は昼過ぎ。午後の優雅な一時、ってところだ。

 毛玉姿でソファに転がっている。


 行儀が悪いと言う人も、ボクの姿に驚く人もいない。

 一号さんも控えているので、誰かが来たらすぐに知らせてくれる。

 ロル子も対面のソファに腰掛けていた。


「あの……よろしければ、こちらへ来ませんか?」


 隣の席を、ロル子が目線で示す。

 んん? 構わないけど、なんだろ? 秘密の話でもあるのかな?


 とりあえず席を移動。

 ソファは広いし、ロル子も小柄なのでゆったりとできる。

 で、なにか話でもあるんじゃないの?

 ロル子を見るけど、手を組んでもじもじとしているだけだ。


「えっと……その、撫でても構いませんの?」


『いいよー』


 そんなことで躊躇ってたのか。気にしなくていいのに。

 だけどまあ確かに、相手が人間だったら「撫でていい?」って聞くのはハードル高いかもね。場合によっては失礼か。


 ボクだって意識は人間のつもりだけど、この毛玉体にも随分と馴染んできた。

 大雑把になっている部分はあるのかも。

 べつに幼女に撫でられて喜んでるワケじゃない。うん、ホントに。

 小さくて温かい手の感触は悪くないけどね。


「……もうじき、お別れなのですね」


 ロル子がぽつりと言う。


 まあ、そうだね。この国での騒動にも一応の決着がついた。

 もう居続ける理由もない。


 帝国軍も、ある程度の部隊を置いて撤退する。

 ロル子も一緒に帝都まで向かう予定だ。

 その時点で、お別れだね。しんみりとした気分になるのも分かる。

 だけど、あんまり深刻になる必要もないんじゃないかな。


『また、いつでも会えるよ』


 何処かで聞いたような台詞を返す。

 でも実際、そうだから。

 ロル子には、偽使い魔として高性能茶毛玉を持っていかせるつもり。

 茶毛玉って言っても黒く塗るんだけどね。ややこしい。


「わたくしは、貴方を見つけて保護することをずっと考えておりました」


『うん? それはもう解決したよね?』


「……ですが貴方には、わたくしの保護など必要なかったのです。むしろわたくしの方が庇護され、助けられて……この恩をどうやって返せばよいのか分かりませんの」


 むぅん。やっぱりロル子は真面目だね。

 恩とか、そんな風に考えなくてもいいのに。


 でもそういうロル子だから、ボクも味方する気になった。

 このまま素直に成長して欲しいね。

 って、ボクが偉そうに言うのもおかしいんだろうけど。


「貴方は……バロール様は、これから何を望まれるのでしょう?」


『そうだねえ……』


 とりあえず、公国と帝国が安定してくれるのは望ましい。

 大陸での争いが、魔境まで飛び火するのは避けたかった。

 だけど、望みって言われると違う気もする。


 ああ。前にもこんな風に悩んだっけ。

 これからボクは、どうしたいのか? まだ答えが出ていないんだよね。

 あ、そうだ。


『一緒に考えてくれない?』


「え……? それは、これからのことを、という意味でしょうか?」


『島でのんびり過ごせればいいとは思ってる。だけど、ただ時間を潰すのも違う気がする』


 子供に相談するのも、どうかとは思う。

 だけど意外とすんなりと言葉が出てきた。

 ロル子はしばらく目をぱちくりとさせて、こちらを見つめていた。


「あの、もしかして……今回の戦いを手伝ってくださったのも、それだけの理由なのですか? のんびりと過ごすというだけで……?」


『そうだけど? あとの理由って言えば、なんとなくかな』


「なんとなくって……あ、いえ、ですがあの島の安全を考えておられるのでしたら、他にも手はあったのでは? 例えば中立でも、バロール様ほどの力があれば、帝国でも東方連合とでも交渉は上手く進められたはずですわ」


 ロル子からの問い掛けに、ボクはそっと目を逸らす。

 うん。そこまで深く考えてなかった。


 所謂、戦略的思考っていうやつ? そんなものをボクに求めないでほしい。

 少しは先を考えたりもするけど、国家を支える軍師とかじゃないんだから。

 基本は行き当たりばったりだよ。

 自分で言ってて認めたくなくなってくるけど。


「……わたくしには、バロール様の望みは分かりませんけれど」


 小さな手が、繰り返し黒い毛並みを撫でる。

 そうしながら、ロル子は優しげに微笑んでいた。

 いつもの緊張した、大人びた表情とは違う。子供っぽさが滲んでいる。


「心のままに為されればよろしいのですわ。もしも助力が必要になりましたら、わたくしも微力ながらお手伝いさせていただきます」


『恩とか、本当に考えなくていいからね?』


「ふふっ、その言葉だけありがたく受け取らせてもらいますわ」


 結局、ボクが自分で決めるしかないってことだね。

 だけどこうして話すのは悪い気分じゃない。

 あんまり深刻に悩んでたワケでもないけど、心が軽くなった気がする。


『まあ、いつか助けてもらうってことで』


「はい。けっして約束は違えませんわ」


 軽く受け流してくれてよかったのに。

 ほんと、どこまでも真面目なんだから。

 でもやっぱり、そこがロル子のいいところなんだろうね。


 そうしてボクたちはソファに身を預けたまま、ゆったりとした時間を過ごす。

 一号さんがお茶を入れ直してくれたり、お菓子を持ってきてくれたり。

 ロル子が毛繕いをしてくれたり。


 だらけきっている気もする。でもまあ、偶にはこういう時間も悪くない。

 いつの間にか、部屋には夕陽が差し込んできていた。

 ソファで眠ってしまったらしい。

 ロル子も、ボクを枕にして静かな寝息を立てていた。

 無防備だけど、涎を垂らしていないあたりは育ちの良さを窺わせるね。

 ともかくも、そっとしておきたいところだけど―――、


「ご主人様、よろしいでしょうか?」


 一号さんが問い掛けてくる。

 ボクが目を覚ましたのは、ロル子が重かったからじゃなくて、一号さんに揺り起こされたからだ。


『ん、なに?』


「警戒用の茶毛玉が、人影を捉えました」


 この公国周辺には、かなりの広範囲に警戒網を敷いてある。

 そこに怪しい人影が引っ掛かったってことかな?

 でもわざわざ眠っているボクを起こすなんて、一号さんにしては珍しい。


『人影って、どんな?』


「こちらへ向けて、高速で飛行中。恐らくは魔族です」


 映像を浮かべながら、一号さんは続ける。


「そして帝国からの情報を信じるならば、これは例の、新しい魔王かと」


 ……は? え、ちょっと待って。

 なんで魔王がここに? どういうこと?

 えっと……ともかくも、のんびりしていられる状況じゃなさそうだ。



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