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15 ミミズのち、新たなる脅威


 ミミズ観察日記。

 襲われてから半日ほどが過ぎました。もうすっかり夜です。

 三匹のミミズは、なにやら土いじりをしています。

 ボクはと言えば、じっと木の上で隠れたままです。

 魔力回復を待ちながら、ミミズたちを観察中。こうして静かに眺めていると、少しだけ愛着が出てきました。


 あ、あいつら、ボクが狩ったウサギを食べてる。

 肉食なのかな。木の根とか食べるんじゃないんだ。ふぅん。

 べつに怒ってないよ。

 ウサギ肉くらい、あげちゃってもいい。どうせ大して美味しくないからね。

 でも殺す。

 あとで、ミミズ肉の味も確かめさせてもらおう。

 食べられる部分が残っていたらだけど。


《行為経験値が一定に達しました。『瞑想』スキルが上昇しました》

《行為経験値が一定に達しました。『待機』スキルが上昇しました》

《行為経験値が一定に達しました。『自己再生』スキルが上昇しました》


 観察して分かったのは、ミミズは視覚以外が鋭いってこと。

 注意深く歩かないと、ボクの小さな足音にも反応する。

 匂いも捉えてくる。風上に立つと、攻撃の正確性が増した。

 でもなるべく高い所に居れば、風が匂いを散らしてくれるので安全に過ごせる。


 厄介なのは、魔力にも反応する点だね。

 毟られた毛の部分だけでも『自己再生』しようとしたら、土の弾丸が飛んできた。

 すぐに逃げたけどね。

 『瞑想』にまで反応しなくて助かったよ。

 おかげで魔力は回復できたし、反撃の態勢は整った。

 まあ、『死毒の魔眼』を放つだけの簡単なお仕事なんだけどね。


 でもちょっと気になっていることがある。

 ミミズたちが妙な行動をし始めた。

 さっきも言ったけど、土いじりだ。畑を作るみたいに土を掘り返してる。

 それで、その掘り返した場所に、なにやら吐き出した。

 三匹のミミズが揃って嘔吐する光景っていうのは……うん、気持ち悪い。

 なんだろう? 揃って変な物でも食べた?

 ウサギに毒を仕込んだ覚えはないんだけど。


 ボクには首は無いけど、気持ち的に首を捻りながら観察していると、今度はミミズが揃って輝き出した。何かの魔法を使っているみたいだ。

 すると、地面からにょきにょきと草が生えてくる。

 もしかして、吐き出したのって植物の種なのかな?

 その植物を育てている?

 そういえばミミズがいる土は栄養豊かだと聞いた覚えがある。

 でも直接に育てるっていうのは……まあ、魔獣の生態なんだから何でもアリかな。


 ともあれ、観察はこれまでだ。

 ミミズたちは作業が終わったのか、魔力切れなのか、地中へ戻ろうとしてる。

 隠れられるのは困る。

 妙な植物も、育ちきったら厄介なものになるかも知れないからね。

 ってことで、『死毒の魔眼』全力発動!

 『魔力集中』も乗せて威力を増す。


 まず一匹。長い身体の中ほどから黒く染まったミミズがのたうって倒れる。

 やっぱり直撃させれば効果はあるみたいだね。

 続いて、二匹目、三匹目も仕留める。

 いまのボクなら、『死毒の魔眼』も全力で六発は撃てるからね。

 あっさりしてるけど、勝利だ。

 ボクに回復の時間を与えた、それがミミズの敗因だね。


《総合経験値が一定に達しました。魔獣、ティニィ・レア・ベアルーダがLV3からLV4になりました》

《各種能力値ボーナスを取得しました》

《カスタマイズポイントを取得しました》


《行為経験値が一定に達しました。『死毒の魔眼』スキルが上昇しました》

《行為経験値が一定に達しました。『魔力感知』スキルが上昇しました》

《行為経験値が一定に達しました。『高速思考』スキルが上昇しました》

《条件が満たされました。『知謀の才』が承認されます》

《『知謀の才』取得により、関連スキルが解放されました》


 んん? 知謀の才?

 これは字面のまま、頭を使う才能ってことだよね?

 ずっと色々と考えてたし、『高速思考』も上がったから認められたのかな。

 別段、誉められた訳じゃない。

 システムメッセージが告げてくれただけ。

 だけど、こうして行動の結果を認められるのは悪くない気分だね。


 将来的には、参謀とか軍略家なんかになれるのかな?

 ちょっと戦いに傾いてるけど、イメージとしては格好良いかも。

 あ、でも学者とか研究者にもなれる才能でもあるのか。

 そっちの方がボクの好みではあるね。

 のんびり過ごせそうだし。

 まあ、そんな職業に就く以前に、毛玉なんだけどねえ。


 それにしても、やっぱり相手がいるとスキルの上がりも早いみたいだ。

 訓練よりも実戦の方が経験を多く積めるってことかな。

 だからって積極的に危険を冒したくはないけどね。


 ともあれ、いまはミミズの片付けだ。

 死毒は強力だけど、周りの被害も大きいのが難点だね。

 土まで黒く汚染されてる。下手に触ったら、ボクだって危ない。

 これはもう、この簡易野営地は廃棄かな。

 ミミズは、毒されてない部分だけでも『吸収』しておこうか。

 直接食べなければ、たぶん毒も入ってこないはず。

 勿体無いしね。慎重にいけば大丈夫でしょ。

 うん。なにせボクは知謀家だからね、その判断は間違ってないでしょ。


 針を刺して、ちゅぅぅ~っと……。

 あ、これ美味しい。

 例えるなら、濃厚なオレンジジュースみたい。

 なんで? ミミズのくせに!

 まあいいや。毛玉生初の甘味だし、じっくりと味わ―――げぼらバッ!?


《行為経験値が一定に達しました。『毒耐性』スキルが大幅に上昇しました》


 うわぁ。マズイ。

 死毒に侵された部分まで『吸収』しちゃったよ。

 っていうか、『吸収』でも毒って回ってくるんだね。

 あ、くらくらする。視界が歪む。

 体全体が痺れてきた。

 まずいまずい。

 『治癒の魔眼』、オン!


《行為経験値が一定に達しました。『激痛耐性』スキルが上昇しました》

《行為経験値が一定に達しました。『我慢』スキルが大幅に上昇しました》


 我慢って……そんなスキルもあったんだ。

 と、細かいことを気にしてる場合じゃないね。

 死毒まずい。不味いどころか死味いっていうくらい。

 自分の中で、生命力がどんどん黒に染まっていくのが分かる。

 『治癒の魔眼』で生命力を回復させてるけど、黒く染まる方が早い。


 でも、なんとか堪えないと。

 自分の毒で死ぬなんてシャレにもならない。

 魔力が切れるよりも先に、毒耐性が上がれば―――。


《行為経験値が一定に達しました。『毒耐性』スキルが上昇しました》

《行為経験値が一定に達しました。『自然治癒』スキルが上昇しました》

《行為経験値が一定に達しました。『生命力大強化』スキルが上昇しました》


 よし! って、あんまり楽になってないね。

 ちょっと毒の侵蝕が遅くなった気がするくらいだ。

 耐えるだけじゃダメだ。

 そうだ、解毒。なにか解毒できるような方法はないかな?

 治療魔法とか、解毒魔法とか、薬作成とか。

 そういうスキルが欲しい!

 っていうか、『治療系魔術』なら持ってる。

 でも使い方が分からない。

 『魔術知識』に頼ろうにも、また術式が暴走する可能性の方が高いよね。

 魔法はダメだ。

 ここはもっと生命力的に耐える方向でいこう。


《行為経験値が一定に達しました。『治癒の魔眼』スキルが上昇しました》

《行為経験値が一定に達しました。『耐久』スキルが上昇しました》


 ぐべっ!? 口からなんか変な液体が出た。

 本格的にマズイかも知れない。

 治癒の魔眼効果は上がっても、まだ毒の進行の方が早い。

 でも、そうだ。

 ポイントでスキルの強化も可能だったはずだ。

 そんな訳で、『毒耐性』を強化できないかな、システムさん?


《スキル『毒耐性』は『猛毒耐性』への強化が可能です》

《カスタマイズポイント:100が必要です。強化を行いますか?》


 YES! すぐにお願い!

 ここはポイントを惜しむところじゃない。

 命が買えるなら、全部注ぎ込んでも安いものだしね。


《申請を受諾。『毒耐性』は『猛毒耐性』へと強化されました》

《残りカスタマイズポイントは190です》


 む? むむ?

 かなり楽になった気がする。

 毒の進行が止まった? いや、まだ油断できないね。

 もう一段階、毒耐性を強化できないかな?


《スキル『猛毒耐性』は『死毒耐性』への強化が可能です》

《カスタマイズポイントが足りません》


 さすがに無理か。

 上位のスキルになると、それだけ多くのポイントが必要になるみたいだね。

 でも、なんとか耐えられそう?

 『治癒の魔眼』と死毒の進行、拮抗してる感じはする。

 油断は出来ないけど、集中して『治癒の魔眼』を発動させてると、ほんのちょっとだけど回復してるのも感じられる。

 『魔力集中』のおかげか、多めに魔力を注ぐと回復効果も上がってる。


《行為経験値が一定に達しました。『魔力集中』スキルが上昇しました》


 スキルアップは嬉しいけど、いまはあんまり使わない方がよさそうだね。

 なるべく現状維持で、毒が抜けるのを待つ方針でいこう。

 治癒効果が切れたら、一気に毒の進行も早まりそうだ。


 治癒と毒との我慢比べ。

 地味な戦いになりそうだ。



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