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毛玉転生 ~ユニークモンスターには敵ばかり~ Reboot  作者: すてるすねこ
第4章 大陸動乱編&魔境争乱編
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05 平穏は続かない


 晴れ渡った空が広がっている。

 遥か高くに浮かぶ雲は白く、緩やかに流れている。

 陽射しも柔らかくて、芝生に寝転ぶとそれだけで心地良く眠れそうだ。


 やっぱり穏やかな時間は素敵だ。

 こうしたまま丸一日だって過ごしていける。


 でも、この贅沢が分からない連中もいる。

 赤と青の光、それと小さな人影が上空を舞っていた。


「ニャッはーーーー! やっぱりあたしが一番早いニャ!」


「くっ……以前の体ならば、速度は私が上だったはずなのに」


「おまえらおかしいぞ! どうして竜である我より、鳥の方が速いのだ!?」


 鳥二匹と、竜人幼女が戯れてる。

 遊ぶのはいいけど、もうちょっと静かに出来ないのかね。

 幼ラウネや幼ラミアがお昼寝してるのに。

 黒狼も、ボクの枕代わりになって大人しくしている。

 さっきスキュラたちもちらっと訪ねてきていた。


 エルフ領から戻ってきて、もう三日―――。

 この拠点内や近くの森で、ボクはのんびりと過ごしている。

 魔境とか言われている島なのに平穏そのものだ。


 たまに現れる魔獣も、メイドさんやラミアたちを中心にして排除されてる。

 ボクが出くわした時も、『威圧』すれば簡単に逃げ出す。

 まあ、逃がさずに仕留めているけどね。


 脅威ではないけど、未だに新種の魔獣に出会うことがある。

 そういう部分は、さすがに魔境ってところかな。


 新種といえば、エルフ領から色々と植物の種とかも貰ってきた。

 例の祠にお供え物として置かれていたから。

 桃っぽいのとか。マンゴーっぽいのとか。


 適当に美味しいのを選んで、アルラウネに栽培を頼んである。

 まだ三日だから小さな芽が出てるくらいだけど、成長は期待してる。

 っていうか、三日で芽が出るのも異常なのかな?

 栽培方法とかまったく知らずに種だけ持ってきたのに、なんとかなっちゃうのも普通じゃないんだろうね。


 また『常識』から遠ざかった気がする。

 常識と言えば、大陸の様子も茶毛玉で窺っているんだけど―――。


「ご主人様、少々よろしいでしょうか?」


 一号さんの声? でも、随分と遠い気がする。

 ああ、屋敷にいる小毛玉を介して送られてきたのか。

 いまは一号さんに預けて、頭の上に乗ったままだった。

 とりあえず、話の続きを促しておく。


「大陸方面、島の北側から接近する者がおります。数は三名。恐らくは魔族です」


 ほう。魔族とな?

 また初遭遇の種族だね。だけど知識としては仕入れてあるよ。


 大陸の西北部を領土としていて、長年に渡って人類種と敵対していた。

 角や翼、尻尾が生えていたり、青や黒の肌をしていたりと、外見的特長は様々。

 総じて戦闘力が高い、と。


 そういえば外来襲撃の時も、偵察の竜軍団を完璧に撃退していたんだっけ。

 でも本格的な参戦はしていない。

 帝国と和平を結んだとかいう話もあったけど、共闘はしなかったのか―――、


 と、そっちはいまは関係ないか。

 問題は、どうしてこの島へ近づいてきたのか?

 魔族領とは、かなり距離が離れているはずだ。

 ほとんど大陸ひとつ分は離れている。

 だから、偶然ってことはないはず。


 単純に考えれば偵察? 帝国との取引を聞いて様子を窺いに来た?

 外来襲撃が終わったばかりだけど、だからこそ混乱している隙を狙ったとか?


 まあ、考えていても答えは出ないか。

 それに、三名ってはっきり言ったのが気になる。


『接近って、空を飛んできたの?』


「はい。船舶ではなく、各々の魔術で飛行しております。三名とも戦闘能力は未知数ですが、速度を見る限りでは脅威ではありません」


 小毛玉越しに、映像が送られてくる。

 海上を飛んでる魔族を、さらに上空から捉えたものだ。

 全員、蝙蝠みたいな翼を生やしている。でもそれ以外は人間と変わらない。


 自力で空を飛べるってことは、それなりに魔術を得意としている証拠だ。

 だけど、それだけかな。

 映像だけだから推測になるけど、たぶんメイドさんでも余裕で制圧できる。


『捕まえよう』


 魔族の情報とか、聞き出したいところだし。

 まあ、ただの通りすがりってこともないでしょ。

 友好的な相手なら、お土産でも持たせて帰ってもらえばいいんじゃないかな。








 魔族捕獲作戦開始。

 まず、相手が海の上で休むのを待ちます。

 その後、襲撃します。以上。


 竜軍団もそうだったけど、この島への侵入って簡単じゃないんだよね。

 いくら空を飛べても、大陸から一気に海を越せる距離じゃない。

 途中で必ず休憩を取らなきゃいけない。

 だから水際での侵入阻止を受け易い。

 ボクにとっては防衛がしやすいってことだ。


 魔族たちは、海面の一部を凍らせて、その上にマントを敷いて休みはじめた。

 海上は見晴らしがよくて、あまり不意打ちには向かない。

 だけどそれ以上に、相手が油断しやすい。

 広い海の上でいきなり襲われるなんて、ボクだってなかなか想像できないから。


 まあ、気づかれるとしてもやることは変わらなかった。

 油断しきっている魔族へ急接近。

 『静止の魔眼』発動。続けて『麻痺針』を発射。

 はい、作戦完了です。


『縛り上げて、港に運んで。話はそっちで聞こう』


「承知いたしました。尋問など、お任せいただければ一通りの情報は聞き出してみせますが?」


『じゃあ、お願い』


 呆気無かった。

 氷の上で、魔族三名とも唖然として身動きも取れずにいる。

 麻痺が効いて、しばらくは喋ることも出来ない。

 わざわざ出向いてきたんだから、もうちょっと歯応えがあってもよかったのに。


 だけどまあ、治安維持ってこういうものなんだろうね。

 事が起こる前に済ませるのが一番。


「くっ……我らにこのような真似をして、只で済むと思っているのか!?」


「奇妙な魔獣を従えているようだが、いい気になっていられるのも今の内だ」


 連行途中で、魔族たちが騒ぎ出した。

 だからといって何か出来るとも思えないけどね。


 手足には、メイドさん謹製の枷が嵌められている。

 魔力の流れを乱して、相手を無力化する優れ物だ。

 ちなみにボクも小毛玉を使って、その効果を試してみた。

 結果は、ボクの勝利。でもかなり苦労した。

 『万魔撃』を暴走させるつもりで発動させて、えらいことになったからね。


 たぶん、竜だって捕縛できるんじゃない?

 全盛期のファイヤーバード級になると無理っぽい。

 まあつまりは、この魔族たちじゃ騒ぐくらいしか出来ないってことだ。

 でも喧しいし、また『麻痺針』で黙らせておくのも―――、


「新魔王様にかかれば、貴様らなど一睨みで―――」


 ん? 新魔王?

 ちょっと聞き捨てならない単語が出てきたような?


 そういえば覗き見した歴史書にも書いてあった。

 外来襲撃後は、各国間、あるいは内部での争いが激化しやすい傾向にある、と。

 こっちにまで飛び火しないのを願いたいんだけど。

 念の為、もうしばらくは大陸に目を向けておいた方がいいみたいだ。



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