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14 毛玉vs巨大ミミズ


 ボクの正面を塞ぐように、五匹のミミズが聳え立っている。

 うねうねと蠢きながら。

 気持ち悪いなあ。

 でも鳥肌立てて丸くなってもいられないんだよね。

 とりあえず、全身の毛を逆立てて威嚇してみる。

 うん。まったく効果がないね。

 それどころか、一匹が大きく口を開いて襲い掛かってきた。

 蛇みたいな動きで、なかなかに素早いけど、回避できないほどじゃない。


《行為経験値が一定に達しました。『高速思考』スキルが上昇しました》


 スキルアップがあったけど、いまは構っていられないね。

 状況確認。

 敵は五匹。油断できないくらいに素早い。

 たぶん、ボクは一撃でももらったら終わる。


 ボク自身の状況はと言えば、いまだに足の二本が失くなったままだ。

 六本の足でも普通に動く分には問題ないけど、微妙にバランスが崩れてる。

 気を抜けない戦闘では致命的な隙を作りかねない。


 逃げるのは、難しいかな?

 ミミズたちが追ってきたら、ボクの体力が先に尽きる。

 倒しきるか、どうにかして追い払うしかない。

 ならば、まずは『混沌の魔眼』発動!


《行為経験値が一定に達しました。『混沌の魔眼』スキルが上昇しました》


 こっちの魔眼はそんなに魔力も喰わない。

 ミミズ五匹をまとめて効果範囲に収められる。

 ウサギでも試した通り、この魔眼の効果は”混乱”だ。

 それだけじゃない気もするけど、ともあれ、敵が多い状況では役立つはず。

 潰し合えー!、と念も乗せる。


 でも、予想外のことが起こった。

 ミミズ五匹の内、一匹には効いた。

 魔力感覚による手応えと、そのミミズが苦しそうに蠢いたので判別できた。

 だけど残りの四匹は違った。

 一瞬、ミミズの体を囲うように半透明の壁みたいなものが見えた。

 結界? 障壁?

 なんだかよく分からないけど、魔眼を防がれたのは分かった。

 魔法への抵抗(レジスト)ってやつだ。


 ミミズのくせに生意気な!

 と、悔しがってる場合じゃない。

 一匹は混乱して近くにいたミミズに襲い掛かったけど、多勢に無勢だ。

 混乱したミミズは、二匹のミミズから反撃を受けて瞬く間に食い散らされる。

 仲間に対しても容赦無しだ。

 薄情なミミズだね。


 残りの二匹が、ボクの方へ襲い掛かってきた。

 一匹目の攻撃を飛び退いて避ける。

 だけど続く二匹目の攻撃が、空中にいるボクを捉えようとする。

 事前に準備していなかったら、身動きできない空中では避けようがなかった。

 操ったツタで、半ば自身を叩くようにして逃れた。

 ボクの体の重さは、ソフトボールよりは幾分か軽いからね。

 身軽でよかった、と喜ぶべきかな。


《行為経験値が一定に達しました。『回避』スキルが上昇しました》


 そのまま他のツタも操って、木の上へと逃れる。

 ミミズは攻撃する瞬間は素早いけど、移動速度はそれほどでもない。

 というか、地面から生えている状態なんだよね。

 地中に埋まっている部分もあるから、すぐには移動できない。


 おかげで、距離は取れた。

 また地中を進んできたら、すぐに接近戦になるだろうけどね。

 ミミズたちの巨体からすると、木の上にでも登ってきそうだし安全とは言えない。

 だけど、一瞬でも安全圏に離れられれば充分だ。

 『死毒の魔眼』、発動!


 魔眼効果が直撃したミミズの一匹が真っ黒に染まる。

 苦しげにのたうって、ボロボロと崩れながら倒れ伏した。

 もちろん、効果はそれで終わらない。

 倒れた一匹を中心に、黒い死毒の霧が広がっていく。

 あっという間に、残り三匹のミミズも包み込んだ。


 ボクは木の上、おまけに風上にいる。

 安心して見ていられるね。

 死毒の霧が晴れるのを待つ。

 現状、ボクが可能な最大威力の攻撃だ。

 やったはず。 やったよね? やったか!?


《総合経験値が一定に達しました。魔獣、ティニィ・レア・ベアルーダがLV2からLV3になりました》

《各種能力値ボーナスを取得しました》

《カスタマイズポイントを取得しました》

《行為経験値が一定に達しました。『魔力大強化』スキルが上昇しました》


 確かに、一匹は倒せた。

 だけど残りの三匹は無傷だった。

 死毒の黒霧に包まれたのに、また障壁で防いでみせた。


 ええー……。

 正直、かなり驚いてる。

 『死毒の魔眼』って、ほとんど反則と言ってもいいくらいのスキルだと思ってた。

 だって見ただけで相手は死ぬんだよ。

 おまけに、範囲攻撃っていう容赦の無さ。

 最初のインパクトも大きかったからね。

 これを使えばどんな敵でも倒せるんじゃないか、って評価しても仕方ないよ。


 でもどうやら過信だったみたいだ。

 そうだよねー……。

 どんなに強い技でも、対応策くらいあるよね。

 抵抗(レジスト)、か。


 まあ過信していたとはいえ、いつかは防がれる可能性も少しは考えてたよ。

 でもそんな相手は、ドラゴンとか、凄腕の魔術師とか、そういった明らかに強そうなのを想像してた。

 なのに、まさかミミズとはねえ。

 驚愕っていうより衝撃だね。落胆かなあ。


 見た目で判断しちゃいけないのは分かってる。

 ウサギだって凶悪な牙を隠してた。

 外見は毛玉のボクだって、中身は真っ当な人間だしね。

 このミミズも、単純な見掛けの割にテクニカルな魔獣らしい。


 魔法攻撃を防ぐだけじゃない。

 魔法を攻撃にも使ってくる。

 ミミズの周囲に小さな光粒が浮かんだかと思うと、地面が盛り上がった。

 土が固まって、幾つもの弾丸になって飛んでくる。

 また驚かされたけど、ぼんやりしている余裕はない。

 咄嗟に木の幹に隠れて土の弾丸を防ぐ。

 威力は大したことなかった。木を盾にしておけば、やりすごせそう。

 ただし、相手が動かなければ。


 三匹のミミズが、地面から完全に姿を現す。

 え~と……全長10メートル近くありそうなんですが。

 この辺りは深い森だけど、5~6メートルくらいの木がほとんどだ。

 つまり、木の上に居てもミミズの射程範囲内になる。

 さすがに細い体だと直立は出来ないみたいだ。

 でも、木に巻きついて登ろうとしてくる。


 頼みの綱である魔眼も効かない。

 もう一度『混沌の魔眼』を使ってみたけど、あっさり抵抗(レジスト)された。

 そうしている間にも、ミミズは這い寄ってくる。土の弾丸も飛ばしながら。


 まずい。本格的に追い込まれ始めた。

 とにかく、じっとしていたらやられる。

 ボクは枝を伝って木から木へと逃げる。

 対して、ミミズたちはまた土の弾丸を撃ってくる。頭から突撃もしてくる。

 その攻撃は素早く、鋭い。さほど狙いが正確じゃないのが救いだ。


 紙一重で攻撃を避けながら、ボクは毒針での反撃も試みる。

 でもここでまた意外な事実が判明する。

 ミミズたちは見た目に反して硬い。ボクの針が徹らない。

 表皮をちょっと傷つけるだけだ。毒の方も黒い点ができるくらいで効果は見られない。

 こうなるともう打つ手が無い。

 いや、『破戒撃』を乗せた毒針ならいけるかな。

 早速試す。

 避けられた! うねうねと、体を捻じって。


 なに、このミミズ!? やっぱり気持ち悪くてテクニカルだよ!

 あとは、『死毒の魔眼』を直撃させれば倒せそうだけど、残念ながら魔力切れだ。

 土の弾丸と突撃から逃げまくるしかない。


《行為経験値が一定に達しました。『俊敏』スキルが上昇しました》

《行為経験値が一定に達しました。『器用』スキルが上昇しました》


 弾丸を避けるために木の影に身を隠す。

 でも直後、その幹がミミズに食い千切られた。

 ボクの頭上を、ミミズの長い身体が掠めていく。

 何十本かまとめて毛も毟られていった。

 ハゲるよ! そんなこと言ってる場合じゃないけどね!


 半ば飛ぶようにして、ツタも操って隣の木へと移動する。

 その時、妙な出来事があった。

 ミミズに圧し折られて、地面に落ちた木を、別のミミズが攻撃した。

 もちろん、そこにボクはいない。

 どうにか太い枝の上に辿り着いて、次の逃走経路を探っていたところだ。

 そこで、気づいた。


 このミミズたちには目らしき部位が無い。

 もしかしたら、普段は地中に潜んでいるから退化したのかも。

 だとしたら、どうやってボクの位置を掴んでいる?

 音? 匂い? あるいは両方? 他にも気配とか、風の流れとか?

 そういえば逃げている内に、いつの間にかボクは風下へと移っていた。

 ミミズたちの攻撃は、鋭くても正確じゃなかった。

 合わせて考えると―――、

 ”見えていない”のだとしたら、そこに付け込む隙があるかも知れない。



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魔獣 ティニィ・レア・ベアルーダ LV:3 名前:なし


戦闘力:740

社会生活力:-1660

カルマ:-2550

特性:

 魔獣種   :『毒針』『吸収』『変身』『破戒撃』

 魔導の才・極:『干渉』『魔力大強化』

 英傑絶佳・従:『成長加速』

 手芸の才・参:『器用』

 不動の心  :『我道』

 生存の才・壱:『生命力大強化』『自己再生』『激痛耐性』『水冷耐性』

 魔眼の覇者 :『治癒の魔眼』『死毒の魔眼』『混沌の魔眼』

 閲覧許可  :『魔術知識』


称号:

『使い魔候補』『仲間殺し』『悪逆』『魔獣殺し』


カスタマイズポイント:280

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