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毛玉転生 ~ユニークモンスターには敵ばかり~ Reboot  作者: すてるすねこ
第4章 大陸動乱編&魔境争乱編
124/185

03 カウントダウン:90日

ブクマ1万件を突破しました。

皆様の応援にたいへん感謝しております!


《外来襲撃まで残りおよそ90日です。万全の備えをしてください》


 拠点の上空を、赤い翼を広げた大きな鳥が飛んでいる。

 鷹を二回りは大きくしたような鳥。

 以前のファイヤーバード姿とは比べるべくもないけど、随分と成長した。


 三日ほど前には炎を吐けるようになって、「にゃっはー!」と喜んでた。

 そして直後、一号さんに捕まって水桶に沈められてた。

 室内で炎なんて吐くから。仕方ないね。


 バカな部分は成長しても治らないらしい。

 だけどまあ、赤鳥が力を取り戻してきてるのは確かだ。


「くっ……私もすぐに復活してみせるぞ!」


 倒された時期の差か、青鳥はまだオウムくらいの大きさしかない。

 悔しそうに喚いてる。

 拳でも握ってれば格好がつくんだろうけど、小さな鳥の姿じゃ負け惜しみにしか聞こえない。

 おまけに、いまはボクの頭の上で丸くなってるからね。

 威厳もなにもあったものじゃない。


 なのに、ハーピーたちからは敬意の眼差しが注がれてる。

 先日、この拠点に訪れたハーピーたちは、元はサンダーバードに従っていた。

 従者というか、巣の近くで暮らしていたらしい。

 鳥仲間で、守られてたってところかな。


 元々、サンダーバードは何日か出掛けるくらいは珍しくなかったそうだ。

 だけど突然に姿が消えて、随分と経って、さすがにハーピーたちも不安になった。そして捜索を始めて、この拠点にもやって来た、と。


 まさか毛玉に負けて飼われてるなんて、想像もしてなかったみたいだけどね。

 でも、ハーピーの忠誠は変わらないらしい。


「いまは雌伏の時。だが、貴様らの忠義が無駄ではなかったと必ずや証明してみせよう!」


 数名分の拍手と、感嘆の声が上がる。

 青鳥を乗せたボクの回りには、ハーピーたちが集まっていた。


「この小癪な毛玉も、次の機会には打ち倒し、雪辱を果たしてくれる!」


 途端に、ハーピーたちの拍手が止んだ。

 笑顔も引き攣ったまま固まってる。

 そりゃまあ、倒す宣言をした相手が目の前にいるんだから、蒼い顔にもなるでしょ。


 ハーピーたちも、ボクの戦闘力の高さは承知してる。

 『威圧』を受けただけじゃなくて、メイドさんからなにやら映像を見せられていた。

 どうやらボクの姿を撮った映像集があるらしい。

 その時のハーピーたちは、最初に息を呑んで、蒼ざめた顔をして、やがてガタガタと震えて気を失うのも何名かいて、最後はほっこりとしていた。

 いったいどんな映像だったのやら。


 気になったけど、メイドさんが誤魔化したいみたいなんで聞かなかった。

 表向きは、新人教育用の資料だそうだ。

 新人というか、新魔獣?

 ともかくも、まあそんな感じでハーピーが配下に加わった。


 ハーピーと言っても、鳥成分は若干控えめだ。

 翼は背中から生えてて、下半身は鳥型。人間と同じように腕も生えてる。あとは髪にも羽毛が混じってる。

 モンスター娘道に詳しい人からすると、邪道なのかも知れない。


 ちなみに、何故か女性型しかいない。

 そして、胸を隠してる羽毛は生えてるのか、服みたいなものなのかは謎。

 ラミアの鱗と同じだね。

 まあ、あんまり深いことは考えないようにしてる。


 仲間が増えた、ってだけでいいんじゃない?

 まだ仲間と言うか、取引相手って程度だけどね。


「ご主人様、こちらが引き渡す物資になります。ご確認をお願いします」


 メイドさんたちが運んできたのは、余りまくってたサンドワーム肉をはじめ、食料を主とした物資。

 ハーピーたちとの物々交換を行っている。

 代わりに、ハーピーが住む湿原地帯からも色々と持ってきてもらってる。

 魔獣素材とか、そこでしか採れない果実とか。

 羽毛の束もあったけど、出所は聞かなかった。


 アウラウネやラミアたちと違って、ハーピーは引っ越して来ていない。

 元々、定住を好む種族でもないらしい。

 渡り鳥的な気質があるというか。

 木々が生えてる場所なら、何処でも休めるというか。

 遊牧民みたいな生活をしているみたいだ。

 さすがにこの魔境だと、何処でも、って訳にはいかないそうだけど。


 ともかくも、空を飛べる彼女たちは、活動範囲が広い。

 ボクが知らない魔境の地理とかも教えてくれた。

 今後も、ボクたちの目が届かない範囲を見回ってくれるそうだ。


 それと―――。


「協力していただいた試験の結果も出ました。やはり彼女たちも、魔術への適性が高いようです」


 最近になって分かったことだ。

 どうやらこの拠点に住む魔獣っ娘たちは、全体的に魔術が得意らしい。

 ハーピーたちも同じく。

 これまでは花粉とか魅了の魔眼とか、そういう特殊能力に頼ってたから、他の技能を鍛えることに目が向かなかったんだろうね。


 切っ掛けは、一人の幼ラミアだった。

 ボクやメイドさんが魔術で飛んでるのを見て、真似したいと言い出した。

 もちろん、魔術で飛ぶのはそう簡単じゃない。

 ボクだって、ほとんど魔眼としての本能で飛んでるようなものだし。

 だけどその幼ラミアは、二週間ほどで術式を自分のものにしてみせた。

 で、他の子も真似し始めて―――。


「仕事の合間を使って、授業時間を作りたいと計画しております。皆、乗り気になっておりますので、これまでの活動に支障は出ないと判断しました」

『分かった。任せる。期待してる、って伝えて』


 文字で伝えつつ、ボクは頷く。

 偉そうな言葉かな、とも思う。

 だけどボクはもうここの主だって宣言しちゃったからね。

 少しはそれっぽく振る舞ってもいいんじゃないかな。


 期待してるのも本心だ。

 ここの戦力が充実すれば、その分だけボクはのんびりできるから。


「それと、もうひとつ御報告です。例の物の試作品が出来上がりました」


 ん? 例の物……?

 そういう台詞ってよく漫画とかではよくあるけど、分かり難いよね。

 えっと、思いつくのは……。


『ああ、アレ?』

「はい。ご覧になりますか?」


 頷いて、メイドさんの後に続いて屋敷へと戻る。

 と、頭に青鳥が乗ったままだった。


「おい待て。私はまだこやつらと話が……」


 また青鳥が喚き出しそうだったので、ちょこっと毛を立てる。


「あたっ!? き、貴様、ふざけた真似を、や、やめろぉぉっ!」


 本気では刺してないよ。ちくちくしただけ。

 すぐに逃げ出すと思ったのに、何故か離れようとしない。

 仕方ないので、体ごと軽く跳ねて、ハーピーたちの方へと放り投げる。


「お、覚えてろぉー……」


 情けない声を出した青鳥だけど、しっかりキャッチされてた。

 まったく。なんだってボクに乗りたがるのやら。

 そんなにこの毛玉体は居心地がいいのかなあ。








 遠隔偵察用の、長期活動可能な奉仕人形。

 そんなものが欲しい。

 いつだったか、言った気がする。


「最大の課題は、やはり稼働時間に関するものでした」


 以前には会議でも使われた部屋で、一号さんが説明を始めた。

 他には、手が空いてたのか十三号もいる。

 一号さんの手元には、魔術で作った映像が浮かんでる。

 映像と言うか、複雑な図解やら文字やらがビッシリと。


「我々、奉仕人形の複雑な思考行動は、擬似魂魄の制御によって成り立っております。この恩恵は大きいのですが、それ故に魔力消費の抑制も難しく―――」


 ふむ。なるほど。

 さっぱり分からん。


 いや、嘘だけどね。お約束っていうやつだよ。

 本当は、それなりに理解できる。

 一号さんの説明は分かり易いし、魔術に関してはボクも学んでるから。

 さすがに細かい術式の仕組みとかになると怪しいけど。

 スマホは使いこなせるけど、プログラミングは無理、みたいな。


 ともかくも、メイドさんたちは単独行動が難しい。

 偵察型を作るのも容易ではない、と。


「そこで試作したのが、こちらです」


 一号さんが掌を広げる。

 その上には、薄茶色の毛で覆われた、フェルト人形みたいな”それ”が乗せられていた。

 えっと……。


『小毛玉?』

「はい。ご主人様の分体がヒントとなりました」


 小毛玉は、ボク本体と魔力を共有している。

 当り前のように魔眼の連発とかで使ってたけど、考えてみれば奇妙だ。


 小毛玉自体は、さほど多くの魔力を持っていない。

 だけどいざ使用するとなれば、その魔力はボク本体から送られる。

 いったい、どういった経路で送られているのか?


「分体の操作などは、糸のように魔力経路を繋いで行われているようです。その経路を使って魔力も供給されていると推測しましたが、違いました。大量の魔力が使用される際にも、その流れは確認できておりません」


『大魔力が流れれば、感知できる?』


「はい。ですが、分体が大きな魔力を扱っているのは間違いありません」


 小毛玉に魔力そのものは流れていない。

 でも、一時的に大きな魔力を使っているのは確実。

 矛盾してるね。

 小毛玉が勝手に魔力を生み出してる、って訳でもないし。


「どうやら魔力自体は、空間を跳躍して転送されているようです」


 ああ。なるほど。

 例えるなら、普段は糸電話で子供に指示を出してる。

 ご飯なんかの必要物資は、その場に転移させて送ってる、と。


 しかし魔力だけを転移させるって、難しいことじゃないの?

 まったく意識してなかったけど、普段からそんなことしてたのか。

 まあ、ボクは毛玉で魔眼だからねえ。

 存在そのものが謎だし。

 不思議生物としての特殊技能、ってことで納得しておこう。


「空間転移自体がすでに高度な魔術ですが……しかし、それで魔力を送るというのは、ある意味では合理的です。転移による魔力消費はありますが、空間に経路を使って送る場合も、その際の無駄な漏出は起こるものですから」


 ん~……まだ話にはついていける。

 でも、なんだかややこしくなってきたね。

 そろそろ結論を聞こう。


『試作品は、その茶毛玉?』

「……はい。まずは映像と音声のみを得る、偵察機能に特化してみました。理論上では、大陸での偵察も行えて量産も可能です」


 さらりと述べた一号さん。

 表情はまったく崩れないけど、なんとなく説明し足りない雰囲気を醸し出している。


 でもポケットに手を伸ばすと、十個ほどの茶毛玉を取り出した。

 ふよふよと浮かぶ茶毛玉。

 それぞれが捉えた映像も、空間に映し出される。


「原材料は魔鋼化させた鉄と羊毛、少々の稀少土類です。とりわけ羊毛の質と着色には拘りまして―――」


 うん。結論は、やっぱりアレだ。

 メイドさんって凄い。



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