表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
毛玉転生 ~ユニークモンスターには敵ばかり~ Reboot  作者: すてるすねこ
第4章 大陸動乱編&魔境争乱編
123/185

02 カウントダウン:120日


《外来襲撃まで残りおよそ120日です。万全の備えをしてください》


 島への帰還から数日―――。

 外来襲撃に備えて、ボクは戦力強化に努めることにした。


 まずは拠点の防衛を第一に考える。

 遠出したおかげで、我が家の大切さがよく分かった。

 やっぱりボクは、インドアでゴロゴロしてるのが好みみたいだ。

 毛玉だし。よく転がるし。

 まあそれは冗談にしても、落ち着ける場所って大事でしょ。


 なので、今日も一生懸命働いてる。

 主にメイドさんたちが。

 拠点を守る新しい壁を築いたり。元からあった城壁を強化したり。

 監視塔をいくつも建てて、侵入者を感知できる魔法装置も設置していった。


 まあ、平常運転と言っていい。

 相変わらず、謎技術であれこれと役立ってくれてる。

 他の拠点メンバーの生活も順調だ。


 内政担当のアルラウネは、今日もぼんやりしている。

 大陸からも適当に植物や食材を持ち帰ってきたので、その栽培も任せてある。

 花壇や畑もどんどん広がって、もう食料に困ることはなさそうだ。


 ただ、少し気になるのは、最近は数が増えてきたこと。

 いつの間にか大きくなってる子供が増えてきたね。

 だけど、その成長具合は個体によってバラバラだ。

 どうやらアルラウネは、きっちり何年で大人に、というのがないらしい。

 桃栗三年柿八年とか言うから、アルラウネの中でも違いがあるのかも。


 最初に会った幼ラウネは、背丈とかもまったく変わってない。

 少なくとも見た目は子供のまま。


『大人になるのは、いつ?』


 ボクが訊ねると、幼ラウネはぼんやりと首を傾げた。

 右に左に首を傾げてから、両手を開いてみせる。

 うん? 十日? 十ヶ月? それとも十年?

 よく分からないね。まあ、いいや。


 ラミアたちは拠点の警備巡回と、魔獣狩りを担当。

 メイドさんたちから装備も揃えてもらって、訓練も繰り返している。

 単純な近接戦闘能力なら、ラミアクイーンはかなりのものじゃないかな。

 やけに動きが鋭くなってるし。

 肌や鱗の色艶なんかも増してる気がする。

 魅了の魔眼もあるから、そこらの魔獣だと相手にならなそう。


 そのラミアたちの子供も増えてる。

 いまはまだ拠点に余裕があるけど、そのうち拡張も考えないといけないかも。

 まあ、防衛戦力が充実するのはいいことだ。


 防衛と言えば、スキュラたちもその役目の一部を担ってくれてる。

 ただし、湖方面の専門。

 前に棲んでた魚竜は駆除したので、他の魔獣が現れないように監視するのが主な役目になっている。

 あとは、定期的に魚や貝を持ってきてくれる。


 それと、もふもふ。

 スキュラから生まれる黒狼の数が増えてきた。

 周囲の偵察と、子供たちの面倒を見るのに役立ってくれている。


 こうして整理すると、拠点の状況も充実してきたね。

 メイドさん部隊を中心に、内務と、陸上水上戦力も揃ってきてる。

 空戦も、一応はメイドさんたちと赤青鳥が対応できる。

 赤青鳥の方は、まだちっこいままで復活待ちだけど。

 空の散歩に行ったり、ボクの部屋で騒いだりしている。


 そういえば、鳥仲間とか配下とかいなかったのかな?

 メジャーなところだと、ハーピーとかいそうなんだけど、どうなんだろ?

 今度、聞いてみよう。


 ん? ボクは何してるかって?

 もちろん、サボってる訳じゃない。

 メイドさんたちに魔力供給をして、各所に小毛玉を送って、

 あとはベッドに転がっての読書だ。

 大陸のお土産として持ってきた。

 お城の図書館とか、貴族の家から、十三号に頼んでこっそりと。

 向こうの知識なんかも仕入れたかったからね。


 全二十巻ほどの分厚い騎士物語とかもあったので、いまはそれを読んでる。

 いまは盗賊の首領が正体を表して、豚の魔獣になったところ。

 オークのロードとかキングみたいな?

 そういうことってあるのかね?

 まあ、物語の中のことだから、本気で受け止めるものじゃないとは思う。

 だけど『変異』スキルなんてある世界だから、起こり得るのかも。


「ご主人様、どうかなさいましたか?」


 部屋の隅で控えている一号さんが訊ねてきた。

 いつの間にか、ページをめくる手が止まっていたらしい。

 そう。いまのボクには手がある。


「ううん。ちょっと考え事」


 流暢に喋れる。使い慣れた口も咽喉もあるから。

 『変異』を使って、人間の姿になってみた。

 華奢で、小柄で、肌の色も薄くて、まるで女の子みたいと言われたこともある、記憶にあるボクのまま。

 今回は小毛玉で、その姿をしっかりと確認できる。


 姿を変える時には、相変わらず正気を失いそうなくらいの激痛があった。

 体の形が変わるんだから、これは避けられないのかも。

 前回と違うのは、全裸じゃないこと。

 全身の毛が服になるようイメージしてみた。

 着慣れた制服のズボンとワイシャツを形作るのは、そんなに難しくなかった。

 体の方も問題なく動かせる。


 でも、そろそろ限界かな?

 じっとしてるだけでも、どんどん魔力が減っていくのが分かる。

 これまでで、だいたい三十分くらいかな。

 激しく動いたら、きっと十分も姿を留めておけない。


「そろそろ戻るね」


 全身が光に包まれる。

 また痛みはあるけど、耐える。

 ほどなくして、ボクは毛玉に戻ってベッドに転がった。


 最近は、この『変異』を積極的に使ってる。

 べつに痛みを味わいたい訳じゃないよ。

 魔力を消費して、鍛えるのに都合がいいから。


《行為経験値が一定に達しました。『魔力超強化』スキルが上昇しました》


 おかげで、元の『魔力大強化』スキルもランクアップした。

 やっぱり大量に魔力を消費すると、ボクの魔力量も増えるみたいだ。

 筋トレと同じようなもの。

 『万魔撃』とかでも消費はできるんだけど、破壊を振り撒くのも、ねえ?


 それに、いつか完全に人間の姿に戻れるのも期待してる。

 毛玉でいるのに慣れてきても、まだ元の姿への愛着も残ってるから。


「ご主人様、ひとつ質問をよろしいでしょうか?」


 ん? なんだろ?

 いいよー、と転がりながら意思表示してみる。


「変身技能でしょうか? それを、小毛玉で使ったらどうなるのでしょう?」


 …………。

 おお! それは考えたこともなかった!

 変身系スキルはボク本体しか使えない、って無意識に思い込んでたよ。


 小毛玉の質量的に無理なんじゃないか、とも思える。

 だけど、ボク本体にしても人体よりは小さめだからね。

 もしも可能なら面白そうだ。

 よし。魔力が回復したら、早速試してみよう。

 上手くすれば、新しい技も―――。


「ご主人様、緊急の報告です」


 一号さんの声で、ボクの思考は遮られた。

 で、緊急ってどういうこと?


「人型の魔獣が、空からこちらへ接近しているようです。数は八体」

『魔獣? 人型で、空を飛んでる?』

「追加報告。ハルピュリアと呼称される種族です」


 もしかして、ハーピー?

 何にしても、この拠点に迫ってきてるなら油断はしない方がいいかな。

 空から接近って言われると、ファイヤーバードを思い出す。

 あの時は大変だった。

 あれほどの脅威になるとは思えないけど、念の為、ボクも様子を見に行った方がいいかもね。









 で、ボクが出撃した訳だけど―――。

 目の前では、ハーピーたちが土下座してる。ガタガタ震えながら。

 うん。『威圧』で一発だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ