01 大陸からの帰還
お待たせしました。本編再開です。
懐かしの我が家が見えてくる。
それほど長い時間を過ごした訳じゃない。
だけど、やっぱり安心する。
なにより大地に足を着けるのがいい。いつでも飛べるとはいえ、海の上で過ごすのは落ち着かなかったから。
今回の大陸遠征は、充分な成果があった。
まず、金髪縦ロール幼女の情報。
人質という言葉は物騒だけど、そう心配は要らないみたいだ。
他国に赴くと言っても、安全は保障される。
たとえ公国が帝国を裏切っても、いきなり殺される事態にはならない。
ハゲ頭の先生が教えてくれた。
貴族としての立場は、かなりマズイ状況みたいだけどね。
それでもまあ、命が無事なら心配は要らないでしょ。
なんとなく、あの幼女なら乗り切れる気がする。
金髪縦ロールだし。高笑いしながら苦難を追い払いそう。
少しは気になるけど、ボクが帝国まで向かう訳にもいかないからね。
亀型魔獣に荒らされまくった街のことにしてもそうだ。
今後が大変そうだけど、ボクが関わるようなことじゃない。
そもそも今回は、行って帰ってくるだけのつもりだったし。
拠点を長く空ける訳にもいかないし。
それに、保護した生命もある。
お土産とも言うね。
牛や山羊、豚。それぞれ四頭ずつを持ち帰った。
ふふ。これが今回一番の成果だね。
ちゃんと雄雌を分けてもらってきたので繁殖も可能。
お肉だけじゃなくて、乳製品も期待できる。
さすがに海を渡って持ち帰るのは苦労したけど。
主に、十三号が。
重力魔術を使ってまとめて運んだけど、なかなかシュールな光景になってた。
牛や山羊に囲まれて飛ぶ幼女だ。
しかも巨大亀の素材や、他にも農作物も幾つか抱えている。
一歩間違えたら幼女虐待。
疲労を覚えない人形だからこそ可能だった作業だ。
でもおかげで無事に帰ってこられたし、何日か休んでもらってもいいかも知れない。
『お帰りなさいませ、ご主人様』
『ただいま』
メイドさんや各クイーンズをはじめ、大勢が出迎えてくれた。
牛や山羊を下ろすと、子供たちが興味深そうに目を輝かせる。
うん。食べないように言っておかないといけない。
涎を垂らしてる子もいるからね。
『なにか、異常は?』
『ございません。皆、平穏に過ごしておりました』
まあ、そうだよね。
異常が起こったら、十三号を介して伝えられてたはずだから。
むしろボクの方から色々と話すべきなんだろうけど―――。
『詳細、報告は、十三号が』
面倒な部分は任せよう。
ボクはお土産の中から、革袋をひとつ取り出す。
誰もいなくなった貴族屋敷を覗いて、こっそり小毛玉に回収させた物だ。
中には飴玉がいっぱい詰まってる。
子供たちに配ってやる。
『お菓子だ。噛まないで、舐める』
最初に十三号にひとつ摘んで渡す。
よく働いてくれたから、お手本を兼ねたご褒美だね。
次に目についた幼ラウネに渡すと、幼ラウネは口に入れて、すぐに嬉しそうな声を上げた。
途端に、他の子供たちも手を上げて駆け寄ってくる。
んん? なんか、出張帰りのお父さんになった気分だ。
ひとつひとつ渡すのもめんどい。
って、いつの間にか行列が出来上がってる。
子供だけじゃなくて、出迎えてくれたみんなが並んでるんですが?
大人や黒狼、赤鳥と青鳥もしっかり列に入ってる。
なんでイベントみたいになってるのさ。
なにこれ? 握手でもするべきなの?
ボクが飴玉を渡すと、恭しく受け取って頭を下げる子までいるし。
まあいいや。幸い、飴玉は山ほどある。
飽きるまでは付き合うとしよう。
屋敷に戻って黒甲冑を脱ぐ。
片付けや手入れなんかもメイドさんがしてくれる。
ふう。この気楽さも安心できるね。
甲冑に入ってても苦しくはないけど、ちょっとだけ窮屈ではある。
やっぱり毛玉スタイルの方が解放感があっていい。
体を伸ばす、っていうのも変な表現かな。
ちょっと癖のついた全身の毛を伸ばして、椅子の上に転がる。
用意されてた果実水を飲んで、ほっと一息。
『やはり肩部魔法陣の破損が見受けられます。改善を検討致します』
『数回しか、使ってないけど?』
『元より完成とは言い難い装置です。ですが、鎧自体の機能は問題ありません』
まあ、元々は人間のフリをするための鎧だ。
戦闘能力はおまけみたいなもの。
暴走して爆発とかしなければ構わないでしょ。
他の装備の開発とかも、細かい部分は丸投げさせてもらおう。
『それよりも、お疲れでしょうか? 湯浴みの支度なども整えております』
言われてみれば、お風呂にも入りたかったんだよね。
向こうの街だと、そんな余裕はなかったし。
もちろん海を渡ってる時も無理だった。
折角だし、綺麗にして、一眠りさせてもらおう。
『よろしければ、浴室での御奉仕もさせていただきます』
『それは、要らない』
全部任せて、洗濯物の気分を味わうのも楽なんだろうけどね。
そこまで怠惰になるつもりもないよ。
でもたしか、前にも同じようなことを言われて断ったはず。
また言い出すってことは、そんなに疲れてるように見えたのかな?
旅なんて、以前のサバイバル生活に比べれば楽なものなのに。
拠点での暮らしで気が抜けてたのかも知れない。
悪いことじゃないとは思う。
むしろ文化的で最低限度の人間らしい生活に慣れてきたと喜ぶべき?
人間じゃなくて、毛玉だけどねえ。
そんなことを考えながら、ボクはお風呂に向かう。
服を脱ぐ―――必要もなくて、軽くお湯を浴びて、湯船に突撃。
ああ。程好く熱い湯加減が心地良い。
やっぱり我が家は落ち着く。
この場所は、本当に大事にしていかないといけないね。
ボク自身が強くなってきた自覚はある。
よっぽどの事態でも起こらない限りは、力技で解決できるはず。
それでも油断はできない。
ボクには、三つの目的がある。
一つ目は、生きること。これは大前提。
望めるなら、だらだらと楽しく生きたいね。死ぬのは一回で十分だ。
二つ目は、この世界に来た原因を探ること。
どうでもいい気もするんだけど。
それでも異世界で生まれ変わるのも、前世での死に方にしても、あまりにも不自然だった。
興味がある。それと、警戒もしたい。
不自然ってことは、誰かが意図したものかも知れない。
だから、警戒。
そして三つ目は―――。
なんてことを考えながら、ぷかぷかと湯船を漂う。
五つの小毛玉も一緒に。
ん? 五つ? 基本は六つのはずだけど……ああ、十三号に預けたままだ。
意識を向けると、すぐにその小毛玉と繋がる。
なにやら温かい感触に包まれていた。
って、これ……蒸したタオル?
丁寧に体を拭かれて、毛繕いまでされてる。
むう。小毛玉のくせに、本体よりも厚遇されるとは生意気な。
いやまあ、そっちもボク自身なんだけどね。
あ、一号さんも手を出そうとして、十三号に止められてる。
隙をついて手を伸ばそうとする一号さんと、その手を叩き落す十三号。
両者とも無言。眼差しも冷ややか。
だけど手の動きは素早くて、真剣な雰囲気が漂ってる。
静かだけど苛烈な戦いが繰り広げられてる。
なんだろ、これ? 仲裁した方がいいの?
まあ構わなくてもいいか。
ボクにはまだ考えなくちゃいけないこともあるから。
当面の問題は、”外来襲撃”。
人間の街へ行ったおかげで、”それ”に関しても話を聞けた。
予想はしてたけど、大きな騒動になるのは確実らしい。
その時まで、残り半年を切ってる。
備えておくべきことは山ほどありそうだ。
拠点の強化や、物資の貯蔵、この島の安定化に、ボク自身の鍛錬―――。
たぶん、忙しくなる。
だから今くらいは、のんびりと休ませてもらおう。
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魔眼 バアル・ゼム LV:5 名前:κτμ
戦闘力:67800
社会生活力:-4160
カルマ:-12520
特性:
魔眼皇種 :『神魔針』『絶対吸収』『変異』『空中機動』
万能魔導 :『支配・絶』『懲罰』『魔力大強化』『魔力集束』
『万魔撃』『破魔耐性』『加護』『無属性魔術』『錬金術』
『上級土木系魔術』『生命干渉』『障壁魔術』『深闇術』
『魔術開発』『精密魔導』『全属性大耐性』『重力魔術』
『連続魔』『炎熱無効』『時空干渉』
英傑絶佳・従:『成長加速』
英雄の才・壱:『魅惑』
手芸の才・極:『精巧』『栽培』『裁縫』『細工』『建築』
不動の心 :『極道』『不死』『精神無効』『明鏡止水』
活命の才・弐:『生命力大強化』『不壊』『自己再生』『自動回復』『悪食』
『激痛耐性』『死毒耐性』『上位物理無効』『闇大耐性』
『立体機動』『打撃大耐性』『衝撃大耐性』
知謀の才・弐:『解析』『精密記憶』『高速演算』『罠師』『多重思考』
闘争の才・弐:『破戒撃』『超速』『剛力撃』『疾風撃』『天撃』『獄門』
魂源の才 :『成長大加速』『支配無効』『状態異常大耐性』
共感の才・壱:『精霊感知』『五感制御』『精霊の加護』『自動感知』
覇者の才・弐:『一騎当千』『威圧』『不変』『法則無視』『即死無効』
隠者の才・壱:『隠密』『無音』
魔眼覇皇 :『再生の魔眼』『死獄の魔眼』『災禍の魔眼』『衝破の魔眼』
『闇裂の魔眼』『凍晶の魔眼』『轟雷の魔眼』『重圧の魔眼』
『静止の魔眼』『破滅の魔眼』『波動』
閲覧許可 :『魔術知識』『鑑定知識』『共通言語』
称号:
『使い魔候補』『仲間殺し』『極悪』『魔獣の殲滅者』『蛮勇』『罪人殺し』
『悪業を極めし者』『根源種』『善意』『エルフの友』『熟練戦士』
『エルフの恩人』『魔術開拓者』『植物の友』『職人見習い』『魔獣の友』
『人殺し』『君主』『不死鳥殺し』『英雄』
カスタマイズポイント:50
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