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毛玉転生 ~ユニークモンスターには敵ばかり~ Reboot  作者: すてるすねこ
第4章 大陸動乱編&魔境争乱編
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22 毛玉甲冑vs巨大亀


 家ほどの大きさのある亀が数匹。

 その頭上から、太い魔力ビームを撃ち下ろす。

 亀たちが気づいた様子はなかった。

 けれど本能的に危機を察したのか、甲羅の上に半透明の障壁が張られた。

 やっぱり防御能力には優れてるのかね?

 まあ、『万魔撃』の前にはまったくの無力だったんだけど。


 障壁をあっさりと撃ち抜いて、魔力ビームが亀に大穴を空ける。

 焼き貫かれた亀は、内部から爆発するみたいに爆裂四散した。

 よし。大陸の魔獣にも通用するね。

 近くにいたお年寄り集団が驚いてるけど、放置で。

 お城の方も騒がしいけど後回しでいいよね。


 そうだ。十三号に説明とかしてもらっておけばいいか。

 合図を送って、お城の方を指差す。

 十三号は一礼して、そちらへ向かった。

 近くに誰かいると、ボクの場合は戦い難いからね。


 さて、まだお城に迫る亀も残ってる。

 様子見も兼ねて、『轟雷の魔眼』発動―――、


「気をつけろ! そいつに魔術は―――」


 あ、なんかマズイ。

 お城から叫び声が聞こえたけど、ちょっと遅かった。

 魔眼から放たれた雷撃が、亀の張った障壁に当たる。

 直後、反射された。


 『明鏡止水』や『超速』がなかったら反応もできなかったね。

 咄嗟にこっちも障壁を張って防ぐ。

 防ぎきれず、小毛玉がちょっと焼かれた。


 いやほんと危なかった。

 全力で撃ってたら、小毛玉が潰されてたかも。

 なにこの亀? 自動で魔術反射とか付いてるの?

 だけど『万魔撃』が徹ったってことは、一定以上の威力だったと通用する?

 それとも魔術の種類によるのかな?


 どっちにしても、ボクとの相性はよろしくない。

 下手に魔眼は使わない方がよさそうだね。

 もしも『死獄の魔眼』とか反射されたら、シャレにならない。


 とはいえ、アレは最初から使うつもりはなかったから構わないんだけど。

 派手になりすぎるんだよねえ。

 ともかくも、最初に大型を攻撃しないでよかったよ。

 小型亀はまだ残ってるし、実験台になってもらおう。

 傷を負った小毛玉は、『自己再生』で回復。


 そうしている内に、亀たちの注意はこっちに向けられてた。

 首をもたげて、大きく口を開く。

 む? ブレスかな?

 そんな予想通り、亀が吐いてきたのは水流ブレスだ。

 なかなかに鋭い。

 でも同じような攻撃は、魚竜との戦いで経験してる。

 問題なく避けられるね。

 同時に魔術で水の弾丸も撃ってくるけど、そっちも回避可能。障壁でも防げるので、不意でも打たれない限りは脅威じゃない。


 相手の攻撃力は大したことなさそうだね。

 反撃に移ろう。

 小毛玉ふたつで、『徹甲針』や『爆裂針』を中心に攻撃。

 毛針のシャワーだ。

 甲羅は硬いけど、『徹甲針』なら充分に貫ける。


 亀の悲鳴を聞きながら、ボク自身も地上へ降りる。

 小毛玉ばかり目立つのも、後で説明する時に困るかも知れないからね。

 今回は、黒甲冑もまともに戦うよ。

 持ってきたのは槍。

 斬るのも可能な、ハルバードだね。

 亀との距離を詰めて、そのハルバードを力任せに振り回す。


 毛玉スタイルだと、武器なんて使う必要もなかった。

 だけどこの武器はメイドさん謹製、斬れ味も耐久性も抜群だ。

 亀の頭を真っ二つに両断する。

 また別の亀を甲羅ごと斬り裂いて、一撃でトドメを刺す。


 あっという間に、城門前の亀集団は片付いた。

 背後から、どよめきの声が上がる。

 十三号も説明してくれてるはずだけど、大勢に囲まれて面倒くさい事態になってるみたいだ。

 とりあえず、一言だけ告げておこう。


『城の守りは、任せる。シェリー』

『任される。どうぞ、ご存分に。そう申し上げます』


 十三号が背負った大荷物の中には、剣も何本か入ってる。

 小毛玉もひとつ置いておけば、まず心配は要らないでしょ。


 ってことで、他の亀も倒していこう。

 まだ街の各所に、数匹ずつで固まってる小型亀がいる。

 その集団が、全部で十個くらいだね。

 合計で小型亀は五十匹くらいか。


 ちょっと面倒だけど、そのくらいの数なら魔眼に頼らなくても倒せる。

 一旦、上空に飛んで敵の配置を把握。

 城の近くにも数匹いるね。


 そちらへ向かうと、今度は相手もすぐに反応した。

 だけどボクも準備は整ってるよ。

 両肩の装甲を開いて、『万魔撃・模式』を撃ち込む。

 さっきと同じだ。亀の周囲に半透明の障壁が張られる。

 だけど魔力ビームは障壁を貫いて、肉片を飛び散らせた。


 やっぱり、『万魔撃』なら通じるみたいだね。

 他の魔眼はどうだろ?

 試しに『重圧の魔眼』を発動―――あ、マズイ。反射された。

 小毛玉が落下しかけたけど、すぐに復帰する。出力は絞っておいたからね。


 しかし本当に魔眼は、というか魔術は反射されるみたいだ。

 まあいい。だったら当初の予定通り、物理的に攻めるだけ。

 小毛玉からの毛針で牽制しつつ、ボクが飛び込む。

 そして、斬る。


 細かいことを考える必要もないね。

 ボクの黒甲冑を操る技術も上がってる。武器も上質な物だ。

 単純に、圧倒できるだけの戦闘力がある。


 次々と小型亀の集団を潰していく。

 みっつ、よっつ、と。

 五つ目の集団へ向かおうとしたところで、城の方で動きがあるのが見えた。

 同時に、十三号からの念話も届く。


『ご主人様。兵士の一部が出撃を画策。反撃の機会と捉えた模様。そう状況報告します』


 十三号と、あとなんかハゲ頭の魔術師が声を上げて制止しようとしてる。

 ん? あのハゲ魔術師さん、見覚えがあるような?

 ここに知り合いなんているはずないけど……ともあれ、妙な状況だね。


 ボクが見てる間にも、兵士の一団は制止を振り切って出撃した。

 勇ましい声を上げながら、街路を突き進んでいく。

 まあ、敵の数を減らしてくれるならいいけど……。


 …………。

 …………うわ、弱い。

 手近な亀に突っ掛かっていったけど、ほとんど相手にもされてないよ。

 さすがに敵の特性は理解してるらしく、魔術での攻撃は控えてる。

 だけど剣や槍で突き掛かっても、満足な傷さえ負わせられない。

 甲羅どころか、肉の部分でも剣を弾かれてる。


 小型亀って言っても、家くらいの大きさがあるからねえ。

 普通の人間からすれば、そりゃあ化け物でしょ。

 しかし仮にも国を守る兵士なんだから、戦闘訓練とかしてるんだよね?

 なのに、無謀な突撃を繰り返すだけ?

 なに考えてるんだろ。


 あ、また一人、亀に喰われた。

 はあ、仕方ない。見捨てるのも後味悪いからね。

 兵士を潰した亀に、上空から毛針を叩き込む。

 ボク自身も急降下。ハルバードを突き入れて、そのまま掻っ捌く。

 残りの亀も片付ける。

 兵士たちが歓声を上げた。


 え? なにこの人たち?

 たったいま、自分たちは蹴散らされてたよね?

 なのに、どうして勝ち誇ってるの?

 しかもまだ負傷した兵士も何人か倒れてる。

 仕方ないので、小毛玉で『再生の魔眼』を発動。

 治療してあげつつ、隊長らしき男に歩み寄って告げる。


『邪魔。下がれ』

「なっ!? なんだと、貴様! いまこそ我らの力を見せようと……」


 なんだろう。本当に謎だ。

 この状況で怒り出すってどういうこと?

 ボクが間違ってるのかな?


 もういいや。面倒くさい。『威圧』をオン。

 途端に兵士たちがバタバタと倒れていく。

 死ぬよりはマシでしょ。あ、でも隊長だけはガタガタ震えながら耐えてるね。

 んん~……とりあえず、腹パンで。

 と、やりすぎた? 派手に吹っ飛んだよ。

 生きてる? 倒れたままだけど、指先だけちょっと動いてるね。


 よし。このまま放っておこう。

 それよりも次の敵を―――、


『ご主人様、巨大魔獣が活動開始。念の為に警戒が必要。そう進言します』


 と、空に浮かんだところで、十三号からの忠告が届く。

 港の方へ目を向けると、確かに巨大亀が動き始めていた。

 というか、もう攻撃態勢に入ってる。

 大きく口を開いていて―――、


 まるで巨木でも投げつけられたみたいに、野太い水流が眼前へと迫ってきた。



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