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毛玉転生 ~ユニークモンスターには敵ばかり~ Reboot  作者: すてるすねこ
第4章 大陸動乱編&魔境争乱編
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20 再び、海を渡って

 最初に海を渡った時は、鳥の背に乗って数日掛かった。

 そういえば、シルバーは元気にしてるのかな?

 ちょっと気になる。

 だけど確かめようもないし、知ったところでどうするって話でもないね。


 で、いまはその空を自力で飛んでる。

 黒甲冑姿で。

 斜め後ろには、十三号もしっかりついてきてる。

 けっこうな速度が出てるのに、大したものだね。

 しかも十三号はドレスの上にローブっていう、動き難そうな格好だ。

 大きな荷物も背負ってる。

 ついでに、肩には小毛玉もひとつ乗ってる。


 荷物はボクが持った方が効率的かとも思ったんだけどねえ。

 でも、メイドとしての矜持が許さないらしい。

 強くお願いされたので、任せることにした。


 そんな状態なのに、十三号の飛行はまったく乱れない。

 無表情で、ややジト目で、真っ直ぐに進行方向を見つめてる。

 時折、魔術で進路の確認もしてくれる。


『ご主人様、やや東へズレている。進路の修正をすべき。そう申し上げます』

『分かった』


 短く文字を描いて、進路を修正。

 今更だけど、メイドさんたちは本当に高性能だね。

 飛行能力に関しても、重力魔術の応用で、ボクとは手法が違うみたいだ。


 遠征の準備も、メイドさん頼みの部分が大きかった。

 ボクだけじゃ保存食の準備も難しかったし。

 組み立て式のボートっていうのも凄い。

 魔術で木材を組みなおす物で、これを展開すれば海上での休憩も取れる。


 まあボートっていうか、大型のイカダだけどね。

 それでも風を防ぐ衝立も付いてて、天幕を張れば雨も凌げる。

 重い甲冑で乗っても、そこそこに安定した足場になる。

 腰を落ち着けての食事も可能。

 急いで作ったとは思えない出来栄えだ。


『どうぞ』


 昼過ぎに、一旦休憩。

 十三号が食事とお茶の用意をしてくれた。

 まだ一日目だから、お弁当がある。

 ツナっぽい何か、トマトっぽい何か、ベーコンっぽい何か、そんなのを組み合わせて作ったサンドイッチだ。


 こうして一息つくと、遠出してるって実感が沸いてくるね。

 やっぱ帰ろうかな、なんてことも頭に浮かんじゃう。

 部屋でだらだら過ごしたくなる。

 やかましい鳥コンビは、いまごろ将棋の練習でもしてるのかね。


 そういえば、ボクって元々は大陸で召喚されたんだよね。

 だからいまも、帰るって言っても間違いじゃないのか。

 今更、使い魔に収まるつもりもないけどねえ。

 とりあえず縦ロール幼女の無事が確保できればいいや。

 まだ生きてはいる、はず。

 称号の『使い魔候補』も消えてないから、たぶん。


『今後の予定を確認したい。そう提案します』


 お茶を啜りながら、十三号が念話を送ってきた。

 ちなみに、食事をするために、ボクは黒甲冑の胸部分だけを開いてる。

 鎮座する黒甲冑と、その内部から姿を見せている毛玉。

 対峙するのは、幼女令嬢。でも実態はメイドさん。

 しかも大海原に浮かぶイカダの上だ。

 傍目には、摩訶不思議な情景だよね。


『これまでの速度ならば、休息を挟んでも明日の内には到着できる。帝国軍から得た地図が正しければ。そう推測します』

『大陸に到着して、すぐに、公国が見つかる?』

『その点は不明。けれど大きな街であれば発見は容易。そう判断します』


 地図はある。一応は、海図も。

 だけど旅なんて初めてだから、正確な道筋を辿れるかも不確かだね。

 まずは大陸に着ければよしとするべきか。

 あとは、適当に探せば見つかるんじゃないかな?

 それなりに大きな国の首都みたいだし、いざとなれば人を捕まえて聞き出せばいい。


『ともかくも、進む。でも休憩は、しっかりと。それでいい?』

『はい。順調に進軍中。そう判断します』


 進軍って……いや、間違ってないのかな?

 ボクだけで軍隊を退けた実績はあるワケだし。

 そんな物騒な行動をしてるつもりはないんだけどねえ。







 夜まで飛行して、一晩をイカダの上で過ごした。

 波に揺られながら寝るのは久しぶりだったけど、そこそこ落ち着けたね。

 寒さも、以前に苦労したほどじゃない。

 衝立もあったし、用意してもらったマントもあった。

 進化を繰り返して、ボク自身も逞しくなってる。


 そうして朝早く、十三号に魔力供給をしてから出発。

 まだ日が昇って間もない時間だったけど、大陸が見えてきた。

 朝陽に照らされて輝く大きな陸地。

 ちょっぴり胸が熱くなる。

 これで一安心。でも、残念ながら街らしきものは見当たらない。


『進路のズレが、想像以上?』

『はい。わたしの力不足。申し訳ない。そう謝罪します』

『謝る必要は、ない』


 手短な遣り取りをしつつ、空から陸地を観察。

 内陸に向かって進むと、ほどなくして街道みたいなものも発見できた。

 たぶん、道に沿って進めば街に着くよね。

 そうすれば情報収集もできる。

 そう喜んだところで、十三号がまた別の発見もしてくれた。


『ご主人様、あちらを』


 街道の脇、森の影に隠れるような形で、人間の集団があった。

 大きな馬車もある。いくつか天幕も張られてる。

 野営してる、って感じだね。

 旅人、とは違う?


 武装してる人もいる。何人かが立って周囲を警戒してるね。

 ん~……偉い人と、それを護衛する集団ってところかな?

 見張りは揃いの甲冑も着てるし、もしかしたら公国の関係者かも。


『接触、してみる』

『お待ちを。ならば、わたしが前に立つのが良策。そう判断します』


 言われてみれば、そうかな?

 未だにボクの言語能力はたどたどしいからね。

 ここは十三号に頼ろう。

 それでも、釘を刺しておくのは忘れちゃいけない。


『暴力は、避ける。その方向で』


 ただし『威圧』はする。最低限まで絞るけどね。

 ボクたちが集団の前に降り立つと、それだけで兵士たちがざわついた。

 まあ空から黒甲冑と幼女が降ってきたんだからね。

 驚き戸惑うのは分かる。


「な、なんだ!? 何者だ!?」

「あ、怪しい奴め! それ以上、ち、近づくな!」


 いきなり見張りの兵士が剣を抜く。

 むう。こっちは暴力を避けるつもりだったのに、ちょっと血の気が多くない?

 『威圧』が効きすぎたかな?

 少しは脅した方が話が早いかと思ったんだけど、マズかった?


「お待ちを。当方に争う意志はありません」


 十三号が前に出て一礼する。

 兵士たちの気配が緩んだ。

 貴族みたいな衣装なのに、大荷物を背負ってるから、見た目はちょっと不思議な幼女になっちゃってるんだよね。

 それでも禍々しい黒甲冑よりは安心されるでしょ。


 あ、でも鼻の下を伸ばした人もいる。そっちは要注意だ。

 いつでも小毛玉を出撃させられるように待機させておこう。


「わたくしはシェリー・バロール。ここにいる兄とともに、リュンフリート公国首都を目指しております」

「首都へ……? い、いまから向かおうと言うのか?」

「はい。よろしければ、道を教えていただけますか?」


 兵士たちは顔を向け合って、なにやら小声で話し始める。

 なんだろ? 道くらい、すぐに教えてくれてもいいんじゃない?

 知らないってこともなさそうだけど?


「お嬢さん、悪いことは言わん。いま首都へ行くのは……」

「何だ!? おまえたち、いったい何を騒いでる!?」


 兵士の言葉が遮られた。

 投げられたのは子供の声だ。

 自然、ボクの視線もそちらへと向けられる。


「まさか魔獣が出たのか!? ならば、ボサッとするな! さっさと片付けてこい! 私になにかあったらどうするつもり―――」


 天幕の中から出てきた男の子が、ぎゃあぎゃあと喚きたてる。

 うるさい。

 でも、それだけじゃない。

 その顔に、ボクは見覚えがあった。


 悪戯っ子だ。悪ガキだ。

 まだちっぽけな白毛玉だったボクを、吹き飛ばしてくれた奴だ。

 まさか、こんなところで再会するなんて―――。


 どうしてくれようか?



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