16 修行パート
自慢の黒毛がボロボロになるほど焼かれている。
もう目蓋を開けているのも辛い。
自身の内で、生命が消えるのをハッキリと感じ取れた。
それでも、歯を喰いしばって起き上がる。
《行為経験値が一定に達しました。『不屈』スキルが上昇しました》
辛うじて、塵ほどの生命力を残して、懸命の抵抗をする。
けれど容赦無く降り注ぐ。
『万魔撃』が。
魔力の暴威を受けて、黒い塊は欠片も残さず消滅した。
《行為経験値が一定に達しました。『万魔撃』スキルが上昇しました》
《行為経験値が一定に達しました。『魔力大強化』スキルが上昇しました》
ふむぅん。段々と慣れてきたね。
小毛玉同士の実戦訓練はなかなかに良い具合だ。
最初の内は、ダイレクトに痛みが伝わってきて大変だった。
だけど段々と痛覚だけ遮断できるようになってきてる。
『激痛耐性』も上がってるよ。
小毛玉がやられるたびに新しいのを出す必要があるから、それもまた辛い。
だけどギリギリまで自分を追い詰める特訓もできる。
そしてその特訓成果も、ボク自身にフィードバックされる。
『不屈』やら、『懲罰』に対する『極道』やらも鍛えられるのは有り難い。
生命力関連も鍛えられる。
もっともっとタフな毛玉になるよ。
《行為経験値が一定に達しました。『頑健』スキルが上昇しました》
《条件が満たされました。『不壊』スキルが解放されます》
《行為経験値が一定に達しました。『大治の魔眼』スキルが上昇しました》
《条件が満たされました。『再生の魔眼』スキルが解放されます》
人間を追い出してから数日―――、
余裕のある時間を持てたボクは、こうしてずっと特訓をしてる。
次の戦争のため、次の次の戦争のため、って訳でもないんだけど。
この島を制圧する。
そう決めちゃったからねえ。
のんびりと過ごすためにも、もうちょっと奮闘する必要がある。
脅威は早い内に取り除いておきたいし。
《行為経験値が一定に達しました。『回避』スキルが上昇しました》
《条件が満たされました。『超速』スキルが解放されます》
死ぬほどの特訓と言っても、自分自身と戦ってるばかりだから、さすがにレベルアップは遅い。
数日掛けてレベル2になったくらいだね。
だけど、レベルアップよりも、自分の能力を使いこなした方が強くなれそう。
バアル・ゼム。
この身体の潜在能力は、まだまだ測り知れない。
なんだって出来る気がする。
あんまり傲慢になるのは、ボクの好みじゃないんだけどね。
力をつけておくのは悪いことじゃないでしょ。
何故か、カルマはぐんぐん下がってるけどね。
うん。もう諦めたよ。
《行為経験値が一定に達しました。『恒心』スキルが上昇しました》
《条件が満たされました。『明鏡止水』スキルが解放されます》
お? なにやらカッコイイ名前のスキルが出た。
たしかこれ、前段階では『瞑想』とか『沈思速考』とかだったよね。
心が穏やかになるスキルの上位版?
よく分からないけど、奥義っぽい名前だね。
ふむぅん……。
平常心を心掛けつつ、また小毛玉同士の戦闘を再開。
まずは互いに毛針を飛ばして牽制―――、
あれ? なんか変だね?
毛針の威力が弱い。
いや、威力というか、速度がやけに落ちて……ああ、違うね。
ゆっくりに見えてる。
あれ? これって凄いスキルじゃない?
意識を集中させると、ほとんどスローモーションみたいに見える。
ふはははー、そんな毛針なんぞ当たるものか!
そっちの毛針こそ、蠅が止まるぜ!
小毛玉同士が、毛針の弾幕を縫うように素早く回避していく。
『超速』で空中での速度も上がってるから、さらに動きが洗練されてる。
毛針だけじゃない。
集中してれば魔力の流れも感じ取れるから、術式発動の直前に対処できる。
なにこの恐ろしい小毛玉。
さっきから、どっちの攻撃も当たらないんですが。
こうなったら仕方ない。
二対一とか、三対一で戦わせよう。
攻撃、防御、連携、窮地への対応など、色んな能力が鍛えられるね。
さすがに、小毛玉ごとに完全な意識の切り分けは無理だけどね。
結局、イメージトレーニングの枠を出ないのかも知れない。
だけどまあ、良い結果は出てきてるよ。
《行為経験値が一定に達しました。『全属性耐性』スキルが上昇しました》
《条件が満たされました。『全属性大耐性』スキルが解放されます》
《行為経験値が一定に達しました。『不屈』スキルが上昇しました》
《条件が満たされました。『不死』スキルが解放されます》
《外来襲撃まで残りおよそ180日です。万全の備えをしてください》
なにやら聞き逃せないアナウンスが頭に響いた。
”外来襲撃”とやらまで、残り約半年か。
何か起こるのかな?
小さな島に閉じこもってるつもりのボクには、あんまり関係なさそう。
でも世界的には大事件になるのかもね。
それで、えっと、『不死』ってなにかな?
死なないの?
まさか、ねえ?
いくらなんでも、そんな非常識は有り得ないでしょ?
あ、だけど不死鳥とかいる世界なんだよね。
アレの不死身っぷりは、スキル頼みというより、種族の能力みたいな気もするけど……どうなんだろ?
『不屈』だって、運が良ければ食いしばり効果が発揮されるくらいだった。
その際に魔力がごっそり減ったりして、疲労も大きい。
サンダーバード戦の時に、一回助けられたね。
でも、あんまりアテになる能力とは言えなかった。
『不死』は、たぶん、確実に生き残れる程度の効果じゃない?
もちろん消耗と疲労は有りで。
殺しても死なないけど、殺し尽くしても死なない訳じゃない、みたいな。
だけど保険にはなりそうだね。
そろそろ日も暮れるし、丁度いい頃合いかも。
ってことで、小毛玉Zよ、最後に実験台になってもらおう。
多くの同胞の死が無駄ではなかったと証明するのだ。
さて、特訓を終えて屋敷に戻った。
メイドさんが用意してくれた食事を取りながら、赤鳥を呼び出す。
食事時に話したい相手でもないんだけどね。
相変わらず、やかましいし。
でも、前々から尋ねておきたいことがあったんだよね。
「質問って何ニャ? 答えてやってもいいけど、その代わりに待遇の改善を要求するニャ。具体的には、こんな籠じゃなくて、屋敷の一室と、あと美味しい食事と、自由時間の長さをもっと……」
「ご主人様、食事に焼き鳥を追加いたしましょうか?」
「ニャっ!? やめるニャ! あたしは死ななくても、あたしが死ぬニャ!」
そういえば、この不死鳥も死ぬらしいね。
聞いた話だと、人格が消えるらしい。
記憶は、知識として残されるんだとか。
ボクの『不死』に関しても、そういうペナルティがあるのかも知れない。
やっぱり、あくまで保険として考えた方がいいね。
もちろん最初から死ぬつもりなんて無いんだけど。
『それよりも、雷鳥のこと、聞きたい』
「危ない奴だニャ」
赤鳥は即答。
うん。それは知ってる。
それと、生まれ変わる前のキミも、相当に危ない奴だったからね。
人のことは言えないよ。鳥だけど。
『戦って、従えたいと、思ってる』
赤鳥が口を開いたまま固まる。
鳥でも唖然とした顔って出来るんだね。
まあ、ボクだって無茶なこと言ってる自覚はある。
サンダーバードには一回負けてるし。
いまだって、まともに戦ったらどうなるか分からないし。
でも、放ってもおけない。
また暴れられる前に、古い王様には退陣してもらうよ。
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魔眼 バアル・ゼム LV:2 名前:κτμ
戦闘力:63200
社会生活力:-4440
カルマ:-13350
特性:
魔眼皇種 :『神魔針』『絶対吸収』『変異』『空中機動』
万能魔導 :『支配・絶』『懲罰』『魔力大強化』『魔力集束』
『万魔撃』『破魔耐性』『加護』『無属性魔術』『錬金術』
『上級土木系魔術』『生命干渉』『障壁魔術』『深闇術』
『魔術開発』『精密魔導』『全属性大耐性』『重力魔術』
『連続魔』『炎熱無効』『時空干渉』
英傑絶佳・従:『成長加速』
手芸の才・極:『精巧』『栽培』『裁縫』『細工』『建築』
不動の心 :『極道』『不死』『精神無効』『明鏡止水』
活命の才・弐:『生命力大強化』『不壊』『自己再生』『自動回復』『悪食』
『激痛耐性』『死毒耐性』『上位物理無効』『闇大耐性』
『立体機動』『打撃大耐性』『衝撃大耐性』
知謀の才・弐:『鑑定』『精密記憶』『高速演算』『罠師』『多重思考』
闘争の才・弐:『破戒撃』『超速』『剛力撃』『疾風撃』『天撃』『獄門』
魂源の才 :『成長大加速』『支配無効』『状態異常大耐性』
共感の才・壱:『精霊感知』『五感制御』『精霊の加護』『自動感知』
覇者の才・弐:『一騎当千』『威圧』『不変』『法則無視』『即死無効』
隠者の才・壱:『隠密』『無音』
魔眼覇皇 :『再生の魔眼』『死獄の魔眼』『災禍の魔眼』『衝破の魔眼』
『闇裂の魔眼』『凍晶の魔眼』『轟雷の魔眼』『重圧の魔眼』
『静止の魔眼』『破滅の魔眼』『波動』
閲覧許可 :『魔術知識』『鑑定知識』『共通言語』
称号:
『使い魔候補』『仲間殺し』『極悪』『魔獣の殲滅者』『蛮勇』『罪人殺し』
『悪業を極めし者』『根源種』『善意』『エルフの友』『熟練戦士』
『エルフの恩人』『魔術開拓者』『植物の友』『職人見習い』『魔獣の友』
『人殺し』『君主』『不死鳥殺し』
カスタマイズポイント:20
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