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毛玉転生 ~ユニークモンスターには敵ばかり~ Reboot  作者: すてるすねこ
第4章 大陸動乱編&魔境争乱編
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10 小毛玉と、モンスター娘と


 屋敷へと帰還。


『ご主人様の訓練場所も、早急に検討するべきでしょう』


 早速、メイドさんに怒られた。

 捕まって撫でくり回されてる。

 やっぱり森をボロボロにしちゃったのはマズかったみたい。


『土木魔術で、再生する。可能な限り、早目に』

『そうしていただけると助かります。城壁上で見張っていた方々も、驚いておられましたから』


 石壁作りとかは得意なんだけどね。

 まだ栽培の促進とかは、あんまり慣れてない。

 魔力を注ぐだけで成長してくれるのは楽なんだけど、植物によっては微妙な加減が必要だからねえ。

 そこらへんはアルラウネが上手いんだよね。

 今度、みっちり教えてもらおう。


『それと、相談がある』


 一号さんの胸元から脱出して、椅子へ降りる。

 部屋には、他に十三号もいた。

 今日はドレスでなくメイド服で、眼帯も外してる。

 バロール妹の演技をする時じゃないからね。

 屋敷の内装を整える作業をしてたけど、ちょうど一段落したみたいだ。

 ついでに、話を聞いてもらおう。


『メイドさんを、増やせない?』

『新たな奉仕人形を作る、ということでしょうか?』

『そう。可能なら、偵察任務で、長く活動できる型を。ボクの魔力量が、随分と上がったから。ひとまずは二~三名で』


 メイドさんズは頼りになるけど、その持久力の無さは弱点だよね。

 いまはまだ大きな問題になってない。

 だけどボクから離れられないっていうのは、これからもっと不便が出てくると思う。


 補給の問題って、戦争でも大切だって聞くからね。

 糧食がなくなって飢える軍隊とか、ファンタジーだと定番だし。

 きまって敗北する側。

 そっちには回りたくない。

 食事を制する者は世界を征す、とかそんな言葉もあったようななかったような。


『ボクの、余った魔力を、長い間保存する。可能なら、拠点みんなの分も。そういう仕組み、魔法装置を作りたい』

『それは……大掛かりな物となります。研究も必要です』

『うん。だから、将来。長い目で見て』


 進化して、かなり魔力量も増えたからね。

 なにせ小毛玉六体と合わせて、『万魔撃』七発同時発射とかやっても、そんなに消耗しなかった。

 ガトリングガンみたいに魔力ビームの連発もできそう。

 我ながら恐ろしい。

 この毛玉は、いったい何処に向かっているのやら。


 ともかくも、この有り余る魔力を有効活用したい。

 いつかこの拠点がもっと大きくなって、大勢が住むようになれば、ボク以外からも魔力を集めてもいいだろうし。

 敷地内で魔力を使う場合は、一定量を税金みたいに吸収するとか?

 そんな仕組みが作れたら、とっても楽になるんじゃない?


『……ありがたく存じます』


 いきなり一号さんが深々と頭を下げた。

 一拍置いて、十三号も同じように礼をする。

 え? なに?

 なんか変なこと言っちゃった?


『我々、奉仕人形は道具であり、感情を持ちません。在り続けても、滅びても、人間のように喜びも悲しみも覚えません。ですが……感謝したいのです』


 ん~……? まあ、よく分からないけど、いいか。

 椅子の上に転がったまま、頷くみたいに目を伏せておく。

 感謝されて困るものでもないからね。

 偉そうな態度を取っておけば、適当に流してくれるでしょ。


『では、その魔法装置の研究も含めて、早急に作業を進めます』

『うん。お願い』


 一号さんと十三号は、また一礼して部屋を出ていこうとする。

 でも、ちょっと待った。

 その前に―――、


『……なにか、ございましたか?』


 二人揃って、無表情で恍けようとする。でもダメです。見逃しません。

 ポケットに入れた小毛玉を返しなさい。

 っていうか、どうして持っていこうとしてるかなあ。







 お城の北側に出て、魔術を発動。

 有り余る魔力を活かして、次々と組み上げていく。

 ズゴーン!、ガシャーン!、ドゴーン!、と。


 何をって?

 もちろん、新たな城壁を建築していくのですよ。

 いまあるお城を守る、第二城壁ってことだね。


 しばらくは必要無いだろうし、機能もしないと思う。

 形は整えられるとしても、けっこうな規模になるから、そこに配置できるだけの戦力も無いからね。

 防衛隊のラミアも、いまの周辺警備で手一杯だし。


 だけどまあ、威圧の意味もある。

 立派な城壁を造っておけば、おいそれと攻めてくる相手もいなくなるでしょ。

 それに、けっこう楽しい。

 壁って言っても、あれこれと工夫も考えられるからね。

 階段や通路の設置をどうするか?

 どうすれば、ここを守る部隊が動き易くなるか?

 防衛用兵器を配置したり、意地の悪い罠を仕掛けたり―――。

 目指せ難攻不落!、って感じで。

 実際に使われる場面になったら、それはまた大変なんだろうけどね。


 小毛玉もいるから、効率は三倍になってる。

 七倍じゃないよ。

 いま手元にいるのは二体だけで、他は拠点のあちこちを見回ってる。


 まず一体目は、アルラウネの観察。

 っていうか、クイーンと一緒に日向ぼっこをしてる。

 幼ラウネも揃って、草むらでぽかぽかと。

 さっきまで芋虫や歩く根っ子の相手もしてたんだけどね。

 アルラウネは気まぐれだから。


 でも、うたた寝してても働いてるとも言えるのが不思議なところ。

 みんながゴロゴロしてる間に、周りの植物がにょきにょき育ってる。

 寝る子は育つ?

 そんなはずもないんだけど、アルラウネの特殊能力みたいなものだね。

 そうして育った草花からは、蜜や油が採れる。

 豊かな食生活のためにも、アルラウネのお昼寝は欠かせないってことだ。


 で、二体目。ラミアたちに同行。

 クイーンを中心に、ラミアたちは幾つかの部隊を作ってる。

 拠点の防衛隊だね。

 それぞれに武器も持って、部隊ごとに訓練も行ってる。

 真面目だね。

 血気盛んって言うよりは、なにかを怖がってるみたいにも見える。


 たぶん、ラミアが一番危険な目に遭ってきたからじゃないかな。

 いざっていう時にも抗えるように、懸命に力を求めてるような。

 そんな鬼気迫る様子も窺える。

 まあ、その分だけ防衛隊としては頼りになるよね。


 いまはちょうど、イノシシの魔獣を見つけて仕留めたところ。

 さすがにもう、ここらをうろついてる魔獣は怖くないね。

 部隊のみんなで喜び合って、イノシシを抱えて拠点へ帰る。

 少々血生臭いけど、充実した日々を送ってるみたいだ。


 ただ、ひとつ気になる部分もある。

 さっきから、やたらクイーンが妙なポーズを取ってる。

 胸元を強調するみたいに腕を組んだり。

 細い腰を見せつけるみたいにくねらせたり。

 むにゅん、キュ、もにゅ、って感じだ。

 空気を桃色に染めそうな気配が溢れてる。

 青少年の教育には大変よろしくないような……、


 まあ、放っておいてもいいか。

 別のラミア部隊の様子も見ておこう。


 それと、スキュラの方にも小毛玉は向かわせてある。

 まだ知り合って日が浅いから、彼女たちの生活はよく分かってない。

 ひとまずは落ち着いてるのかな?

 湖の岸辺では、黒狼と幼スキュラたちが追いかけっこをしてる。

 うん。微笑ましいね。

 子供と動物って、見てるだけで心が和むよ。


 と、油断してたら幼スキュラに捕まった。

 小毛玉の欠点があるとしたら、全方位視界じゃないことだね。

 だから、背後からこっそり近づかれると気づけない。

 小毛玉を捕まえた幼スキュラは、両手で抱えたままじっと見つめてくる。

 こてりと首を傾げて……わぁっ!?


 いきなり齧りつこうとしてきた。

 慌てて逃げたよ。

 そういえば子供って、こういう突飛も無い行動に出るよね。


 あ、黒狼が駆け寄ってきた。

 齧りつきっ子に向けて、なにやら諭すみたいに吠える。

 言葉が通じてる? 幼スキュラの方も、反省するみたいに頭を下げた。

 むむう。やっぱり謎だ。

 これはしばらく観察しないといけないね。


 で、残り一体の小毛玉は、メイドさんのところにいる。

 正確には、一号さんの頭上に乗っかってる。

 毛針を刺したりとかせずに、ただ乗ってるだけ。

 なのに、落ちない。

 それだけ一号さんの所作が慎ましやかってことだね。

 ほとんど動いてないとも言える。


 基本的に、他のメイドさんズに指示を出すのが一号さんの役目だから。

 だけど決まった時間になると、屋敷から出て各所の見回りにも向かう。

 メイドさんたちだけじゃなく、アルラウネやラミアの所にも。

 時折、頭の上に視線を注がれたりしながら。


 一巡りしたけど、これといった事件は無いね。

 拠点内は平穏そのもの。

 たまに、建物やら武器やらを作ってる派手な音が響いてくるくらい。


 ん? なんだろ?

 メイドさんが歩みを止めた。


『ご主人様、少々よろしいでしょうか?』


 小毛玉を介して、念話が送られてくる。

 こっちも小毛玉で文字を描いて応じる。


『なにかな?』

『街からの報告です。新たな事実が判明しました』


 ほほう。潜入メイドさんがなにか掴んだのかな?

 そろそろ、お昼御飯の時間でもある。

 食事をしながら、話を聞かせてもらうとしよう。



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