07 ただの魔眼では収まりません
進化可能になった。
だからすぐに進化するよー、っていうのは危険もある。
その最中は、完全に意識を失っちゃうからね。
今更、拠点の魔獣やメイドさんたちに襲われる心配はしてない。
気掛かりなのは、北で街を作ってる人間が動いてくることだね。
いや、気掛かりだった、って言うべきか。
しばらくは動かないと思う。
『街の兵士や冒険者に目立った動きはありません』
冒険者ギルドの全滅を伝えて、十日以上が経った。
一方的に”事実の一部”だけを告げて、メイドさんたちは早々に立ち去った形だ。
ほとんど喧嘩を売ってるようなもの。
細目職員の企みは、ギルド側も把握してなかったみたいだし。
向こうからすれば、信じて送り出した仲間を、訳も分からず一方的に殺されたと受け止められるよね。
例えば、ボクがメイドさんたちを街へ派遣したとする。
数日後、全滅の報告が届いた。
しかも、そっちが悪い、としか説明がない。
うん。これはもう全面戦争になってもおかしくない。
それくらい危ない選択だって、ボクも覚悟してたんだけどね。
でも思いのほか、相手の反応は静かなものだ。
街にいる密偵メイドさんによれば、ギルドも帝国軍も、当初は混乱してた。
だけどいまは、街の防衛を固めてるだけ。
周辺の魔獣に警戒してる、普段の態勢と変わらず、ってことだね。
だけど、こっちに話し合いの使者とかは送ってこない。
それが答えなのかも知れないね。
もうオマエラとは縁切り、断行だ、それでもどうしてもって謝るなら今の内なら話を聞いてやってもいいぞ、ってところかな?
まあ、ボクがそのつもりなんだけど。
人間との取引はおいしい部分も多い。魅力的だ。
だけど危険を目の前の置いておくのは避けたい。
結局、冷戦状態だね。
ともかくも、そういった状況から考えて、しばらく人間側からの侵攻は起こらないと考えられる。
そもそも、湖までの探索だって苦労してるような戦力らしいから。
仕掛けてくるとすれば、もう少し後だろうね。
大陸の方に連絡が行って、援軍が現れでもしたら、また情勢は変わる。
でも援軍がすぐに来られるのなら、もっと島の探索も進んでるはず。
つまりは、ボクにはまだ時間的猶予がある、と。
うん。推測できるのは、こんなところだね。
メイドさんやクイーンズにも相談したから、まず間違っていないはず。
先日のギルドとの一件では、ボクも反省したよ。
密偵さん一人を悪役にして事は治まると思ってた。
でも、相手側の視点も考えなきゃいけなかったんだよね。
それで、なにもかもが計画通りに進むはずもないけれど―――、
今回の、進化に関しては、躊躇してる時じゃない。
これまでの感覚からすると、意識を失うのは一日か二日の間になると思う。
長くても数日でしょ。
それくらいなら、城のみんなに任せておけば、きっと安全でいられる。
何が起こっても、まず間違いなく対処できる。
あ、でも、いきなりサンダーバードとか襲ってきたらどうしよう?
まさか、またメイドさんが挑発したりしないよね?
急に不安になってきた。
いや、大丈夫。あの時はボクの指示がマズかったのもあるし。
こうして考えてばかりでも仕方ない。
ってことで、部屋に篭もるよ。
『誰も近づけなければよろしいのですね?』
『そう。ボクから出てくる。それまで、進入禁止』
『承知致しました。他の者にも、そのように伝えます』
一号さんと、念の為にアルラウネとラミアのクイーンズにも伝えておく。
そうしてボクは部屋の扉を閉じた。
ベッドに転がる。ひとつ、息を吐く。
さて、進化を始めるんだけど、その前に準備もある。
ポイントも使っちゃうべきでしょ。
方針としては、やっぱり才能を伸ばしたい。
最初の候補に挙がったのは『魔眼覇王』と『万能魔導』だけど、いま以上の進化は難しいみたいだった。
アナウンスによると、ポイントじゃなくて条件不足らしい。
他にもあれこれと検討してみて、結果、『魔眼種』にポイントを注ぎ込むことにした。
これ、才能というより種族適性って言った方が正しいと思うんだけどね。
それを強化できるのは少し疑問と不安もある。
でも、やっちゃった。
残っていた300ポイントを注いで、『上位魔眼種』に。
ステータス上の表記で変わったのはそれだけ。
他のスキルに、これといった変化はない。
いや、ひとつあるね。
戦闘力が上がってる。一万の大台を越える手前で止まってたのに……、
10050、10200、10500……、
馬鹿な、まだ上がっているだと……!
驚いたけど、これは喜ぶべきだよね。
なんとなく身体の奥から力が溢れてくる感じがする。
魔力もそうだし、生命力的なものが沸き上がってくるような。
うん。良い選択だったんじゃないかな。
戦闘力は、12500で止まった。
まだまだ初期のベジ○タにも敵わないけど、けっこう凄いんじゃない?
この勢いのまま、一気に進化もしちゃおう。
沸き上がる力をパワーに変えて!、って感じで。
それじゃあ目を閉じるよ。
システムさん、存分に強力な進化をしちゃってください。
《申請を受諾。進化を開始します》
メッセージとともに、意識が暗闇へと引き込まれていく。
でも同時に、沸き上がってくる力は感じ続けていた。
ふつふつと。
何処までも昇り詰めていくような感覚もあった。
《魔眼、バアル・ゼムへの進化が完了しました》
《各種能力値ボーナスを取得しました》
《カスタマイズポイントを取得しました》
《進化により、『八万針』が『神魔針』へと強化されました》
《進化により、『支配』が『支配・絶』へと強化されました》
《進化により、『完全吸収』が『絶対吸収』へと強化されました》
《進化により、『下位物理無効』が『上位物理無効』へと強化されました》
《進化により、『変身』が『変異』へと強化されました》
《進化により、『時空干渉』スキルが覚醒しました》
《進化により、『波動』スキルが覚醒しました》
《条件が満たされました。『上位魔眼種』が『魔眼皇種』へと強化されます》
《条件が満たされました。『魔眼覇王』は『魔眼覇皇』へと強化されます》
《特殊条件が満たされました。『死獄の魔眼』スキルが解放されます》
《条件が満たされました。称号『悪業を極めし者』を獲得しました》
《『悪業を積み重ねる者』は『悪業を極めし者』へと書き換えられます》
《称号『悪業を極めし者』により、『法則無視』スキルが覚醒しました》
目を覚ます。随分と深い眠りについていた気がする。
だけど眠気なんて吹き飛んだ。
物騒極まりないアナウンスが連続で頭に響いてきたし。
それに、一目でハッキリと分かる進化もあった。
いや、ボク自身は相変わらずの黒毛玉で、変化してないとも言えるんだけど。
なんていうか……うん、酷い。
これはまったくの予想外だ。
変化はしてないのに、原形を留めてない。
ともかくも落ち着こう。
落ち着いて、深呼吸。すーはーすーはー。
…………。
…………よし。
まずは、ステータスを見て、ひとつずつ確認を―――、
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魔眼 バアル・ゼム LV:1 名前:κτμ
戦闘力:58800
社会生活力:-4420
カルマ:-12850
ふおぁっ!?
なんじゃこりゃあぁっ!?
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魔眼 バアル・ゼム LV:1 名前:κτμ
戦闘力:58800
社会生活力:-4420
カルマ:-12850
特性:
魔眼皇種 :『神魔針』『絶対吸収』『変異』『空中機動』
万能魔導 :『支配・絶』『懲罰』『魔力大強化』『魔力集束』
『万魔撃』『破魔耐性』『加護』『無属性魔術』『錬金術』
『上級土木系魔術』『生命干渉』『障壁魔術』『深闇術』
『魔術開発』『精密魔導』『全属性耐性』『重力魔術』
『連続魔』『炎熱無効』『時空干渉』
英傑絶佳・従:『成長加速』
手芸の才・極:『精巧』『栽培』『裁縫』『細工』『建築』
不動の心 :『極道』『不屈』『精神無効』『恒心』
活命の才・弐:『生命力大強化』『頑健』『自己再生』『自動回復』『悪食』
『激痛耐性』『死毒耐性』『上位物理無効』『闇大耐性』
『立体機動』『打撃大耐性』『衝撃大耐性』
知謀の才・弐:『鑑定』『精密記憶』『高速演算』『罠師』『多重思考』
闘争の才・弐:『破戒撃』『回避』『剛力撃』『疾風撃』『天撃』『獄門』
魂源の才 :『成長大加速』『支配無効』『状態異常大耐性』
共感の才・壱:『精霊感知』『五感制御』『精霊の加護』『自動感知』
覇者の才・弐:『一騎当千』『威圧』『不変』『法則無視』『即死無効』
隠者の才・壱:『隠密』『無音』
魔眼覇皇 :『大治の魔眼』『死獄の魔眼』『災禍の魔眼』『衝破の魔眼』
『闇裂の魔眼』『凍晶の魔眼』『轟雷の魔眼』『重圧の魔眼』
『静止の魔眼』『破滅の魔眼』『波動』
閲覧許可 :『魔術知識』『鑑定知識』『共通言語』
称号:
『使い魔候補』『仲間殺し』『極悪』『魔獣の殲滅者』『蛮勇』『罪人殺し』
『悪業を極めし者』『根源種』『善意』『エルフの友』『熟練戦士』
『エルフの恩人』『魔術開拓者』『植物の友』『職人見習い』『魔獣の友』
『人殺し』『君主』『不死鳥殺し』
カスタマイズポイント:10
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