動き出した歯車
普段と変わらない下校途中。
人ごみの中を進んでいく。
その中に、自分と同じ制服を着ている女性を見つける。
「水神≪みかみ≫か」
彼女は、そのまま裏路地に入っていく。自分も、その後ろを追いかける。
彼女に、追いついたとき彼女は二人の男に囲まれていた。
「嬢ちゃん、俺たちについてきてくれないか。」
どうやらナンパされているようだ。しかし、水神は意外な言葉を返した。
「貴様ら、冗談はよせ。」
「何を言って」
しかし、それは彼の顔を狙った水によって阻まれる。
そこへ、宮部≪みやべ≫がケータイを片手に割り込む。
「そこのお二人さん。ナンパはいけませよ。立派なはん!」
しかし、最後までしゃべることができなかった。そう、彼の顔をめがけて伸びる土の柱によって。
「なあ。」
とっさに避けようとしたため、ぬれた地面ですっべてしまった。
「ばか、早く逃げろ。こいつらは痴漢じゃない。」
「少し力を使う必要が出てきた。結界を張ってくれ。」
「承知。」
それに答えた男は、四方に札を投げた。そして、印を結ぶ。
「は。」
気合の入った声とともに、世界の色が変わる
「なんだよ。何なんだよこいつら。」
「宮部には、手を出すな。」
水神が言い放つ。
「おいおい、俺らには危害加えておいてそれはないだろ。それと、今一番危ないのはお前だぞ。」
刹那、彼女の周りの地面より数本の棘が襲い掛かり阻まれる。彼女の纏った水によって。
「本当に現実なのか。」
腰を抜かしたまま座っている宮部に一人の男が自動拳銃の初弾を装填しながら近づいてくる。そして銃を突きつけて言う。
「二人とも動くな。」
水神の動きが止まる。
「ナイス。・・・二人ともそこに立て。」
一箇所を指定し二人がそこに来る。
「封術用だ。これを使え」
「オーケー。」
二人に札を貼るため一人が近づいてくる。そして貼ろうとするが、果たすことはできなかった。
空から来た、何者かによって。
「ぐぶぅ。」
何が起こったのか理解できた者はいなかった。ただ言える事は、さっきまで札を貼ろうとしていた者が気を失って倒れている。ただそれだけ。
「何もんだ、貴様」
同時に5発の銃弾が打ち込まれた、男を殺すため。
「なに?」
「おまえごときに、この俺を倒すことなどできないよ。」
それは、明らかに奇怪な光景。銃弾が男の前で静止している。
「貴様、魔術師か。」
「おまえのものだ返そう。」
そう言い放つと、銃を構えていた男が地面に崩れ落ちる。静止していた銃弾で四肢の関節を打ち抜かれたようだ。
魔術師は男に歩み寄る。
「おまえたちのクライアントは誰だ」
「そんな事、言えるう、うう、うああああああああーーーー」
「しまった、口封じか!」
二人の男は、体が蛍光色に光、光の粒子となって少しずつ消えていく。それはまるで蛍が飛んでいるかのように。
「我が、力によりて時の理よる隔絶させたまえ」
何かの呪文なのか、手あわせると同時に魔法陣が彼の下に現れる。しかし、彼は何かにはじかれた。
「くぅ・・・護術か」
そういっている間に二人の男は完全に消えてしまっていた。
「君たち、大丈夫?」
「は、はい。」
「そうか。じゃあ。」
そう言って魔術師は闇に消えていった。