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桜前線此処にあり  作者: 祀木 楓
第2章 新生活 ―非現実的な日常―
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疑惑



 土方さんの部屋の前に着くと、まずは呼吸を落ち着かせる。



「土方さん……桜です」


「入れ」


「……失礼します」



 入室の許可を得て部屋に入ると、土方さんは机に向かい書き物をしていた。



「そこに座って少し待ってろ」



 言われた通りに座布団に座ると、土方さんの書き物が一段落着くのをおとなしく待つ。



 髪……綺麗。



 こうして見ると、土方さんは本当に綺麗な顔立ちをしている。



 まつ毛長いなぁ。



 幕末で1、2を争う美男子と有名な土方さんに、私はついつい見とれてしまう。



「よし、こんなもんだな」



 土方さんは書いていた帳簿をパタンと閉じると、私の目の前に座り直した。



「さて……。お前が此処に呼ばれた理由はわかるか?」


「いえ……わかりません」



 今朝、迷惑掛けた事を怒っているのだろうか?


 それとも、総司さんの事を山崎さんから聞いたのだろうか?


 必死で考えても、皆目検討もつかない。



「そうか……」


「すみません」


「いや、謝らなくて良い……呼んだ理由は、今朝の事だ」



 土方さんは、私が独りで勝手に屯所から出ていった事を怒っているのだろうと思った。



 鉄の掟



 局中法度



 それは、芹沢一派を一掃した。



 今朝の一件を脱走と勘違いされて……私は切腹を言い渡されてしまうのだろうか?



 ……などと、馬鹿げた事を真剣に考え身震いする。



「俺と会う前……お前は誰と何処に居た?」



 土方さんは静かに尋ねた。


 その質問に私の心臓はドクンと跳ねる。



 言えない……



 いや、言えるわけがない。


 私の右手に光る指輪を反射的に片方の手で隠した。



 その瞬間



 私は、土方さんに手首を掴まれる。



「答えられないならば……質問を変える」



 その声は、今まで聞いたことのない程……低く冷たい声だった。



「これはどうした? 今までは無かったと思うが?」



 私を掴む手に更に力が加わる。



「……痛っ」



 私は苦痛に顔を歪ませるが、土方さんは力を抜いてはくれない。



「答えられないのか?」



 土方さんは鋭い眼差しで私を見据える。



「…………」



 私はどう答えて良いかわからず、ただただ俯くしかなかった。



「お前……斬られたいのか?」



 不意に耳元で囁かれ、冷や汗が吹き出る。



「お前は……俺達を欺いていたのか?」


「ち……違」



 必死に否定しようと思うが、恐怖で上手く声にならない。


 気付くと、目からは涙が溢れていた。



「……チッ、面倒臭ぇ」



 土方さんは舌打ちをすると、掴んでいた手をパッと離す。



「……悪かった」



 そう小さく謝ると、話し続けた。



「今朝、隊士たちがある人物を追っていた。まぁ、結局は取り逃がしたそうだが……」



 その言葉に私の鼓動が速まる。



「奴が逃げる際、お前に良く似た女を連れて行ったそうだ」


「………」


「お前……何か心当たりは無いか?」



 土方さんの突き刺すような視線に胸が苦しくなる。




 打ち明けるべきか……



 打ち明けぬべきか……



 この沈黙が痛い。







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